かんとこうブログ
2022.09.26
ガラス張りのビルが発電所になる!
先日のニュースで、「ガラス張りのビルが発電所になる」という話が報じられていました。太陽光線のうち、可視光線の部分は全部透過するけれど、赤外線の部分のみを吸収し電力に変換できる物質(ナノ構造物)を開発し、ガラスに応用すればガラス張りのビルが発電所となり電力の地産地消が可能となるという話でした。興味を覚えたのでそれを調べてみました。実はこの新しい変換システムで使用されている金属ナノ粒子のプラズモン吸収については、すでに着色材料として知られており、金や銀ナノの粒子は教会のステンドグラスなどで実際に利用されています、今回は赤外光のお話しですがプラズモンと聞いて親近感をもったというわけです。
これを開発したのが京都大学化学研究所の坂本准教です。ネットでもいろいろ紹介されていますが、一番技術的に説明していた「Rikejo」のサイトから全面的に引用させていただきました。
これからは、赤外線をエネルギーに! 京大の坂本准教授が未来を変える! | 理系女子応援サービス Rikejo [リケジョ]
坂本准教授の説明をご覧ください。
赤字が重要部分と思われる箇所ですが、要すれば、「赤外線は、可視光線や紫外線に比べエネルギーが低いための太陽光発電には使われてこなかった。ただし、赤外線は量が多く、少量ずつでも取り出せればそれなりのエネルギーは確保できる。これまでも先行研究事例はあったがあまりにも変換効率が低く、赤外線ではエネルギーを持つ状態を維持することが難しかった。これをブレークスルーできる可能性が電荷移動であり、先生の研究では3.8%の変換効率を達成している。」ということになるでしょうか?
さらに先生の説明は続きます。
ここも要約させてもらうと「ナノサイズの粒子の表面だけで起きる局在表面プラズモン共鳴(LSPR)を利用することを考えた。赤外光エネルギーによって粒子中の電子が励起され、特定の指向性を持って集団振動する結果、エネルギーの高いホットキャリアが形成され、適切な受け皿があればそこにエネルギーを得た電子が注入される。これをナノサイズの硫化銅に電子の受け皿である硫化カドミウムを付着することで作成しようとしたが、なかなか思うようなものができなかった。ある日ふとアイデアが浮かんで、新しいプラズモン誘起キャリア移動機構の発見につながり、効率的にエネルギーを取り出せるようになった。」ということのようです。
以下に関係する図を示します。最初は開発した変換システムの各波長ごとの変換効率です。
坂本准教授らのチームが開発したエネルギー変換システムでは、1200nmの波長の光を使ったエネルギー変換効率が、以前の0.02%程度から3.8%にまで高まった
次の図は、エネルギー変換システムナノ粒子の電子顕微鏡写真です。
理屈は難しくて私の理解の範疇を超えていますが、この技術がとてつもないポテンシャルを持っており、再生可能エネルギーへの転換が世界平均よりもはるかに後れを取っている日本にとって朗報であることはわかりました。
引用させていただいた、Rikejo サイトに深謝します。