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かんとこうブログ

2023.02.03

JPCZについての新発見

昨日の報道ステーションで、先日本ブログでご紹介した新潟大学、三重大学、東京大学らの研究グループが、水産大学の練習船耕洋丸に乗り込み、冬の日本海でJPCZを追跡し洋上観測する様子が紹介されていました。10年に一度と言われる1月24日から25日にかけての寒波の中。荒れ狂う日本海の洋上で昼夜を問わず1時間毎に気球を上げ、風速、温度、湿度を計測し、同時に海水の温度を表面から海底までの約2000メートルにわたり測定すると言った過酷な測定を敢行した結果、新しい事実が見えてきたと報じられていました。今日はこの話をご紹介します。

1月25日の本ブログでお伝えしたのが以下の内容で、ちょうど1年前に同じ研究グループが今年と同様に日本海の洋上で行った観測の結果をまとめたものです。今年の観測もいわばこの結果をうけて継続されています。

ここで注目してもらいたいのは、雪雲(筋雲=積乱雲)のトップの高さです。冬の日本海で発生する雪雲の高さはおおよそ3kmと言われていますので、JPCZが発生する気象条件ではさらに雪雲の高さが高く、より発達していることがわかります。もう一つの注目点は風の向きがJPCZの中心部で急激に90度変化することがわかったことです。

これらは昨年の観測でわかったことでしたが、今年の観測でわかったことは以下のようになります。

1. 1月24日~25日にかけて発達した雪雲の高さは5kmに達した。

2. 海水温は14℃と高いだけでなく、表面から100mの深さまで14℃が維持されていた。

3. JPCZから1000kmも離れた極前線がJPCZの形成に影響を及ぼしている可能性を認めた。

1の雪雲の高さは、これまでの観測値を大きく上回るもので、通常の雪雲の2倍にもあたります。この発達した雪雲をもたらしのは、シベリアからの寒気と高い海水温です。海水温については昨年の観測でも14℃であったことが報告されていましたが、今年の観測では海水表面から100Mの深さまで14℃であったことが報告されています。このように深いところまで14℃という高い温度が維持されているため、強風にかき混ぜられることによって海水表面温度が低下することがありません。このため発生する上昇気流に対して水蒸気を供給し続けることができるのではと考えられています。そしてこのような高い海水温度の原因は地球温暖化です。

そしてニュースで最も大きく取り上げられていたのが3の極前線の影響です。この遠く離れた極前線がJPCZを強めている可能性があるというのです。極前線とは耳慣れない言葉ですが、寒帯前線とも呼ばれており、北西からの冷たい空気と南西からの暖かい空気がぶつかる場所になります。ここで何が起きるのか、テレ朝ニュースのサイトから引用します。説明は研究チームの一人新潟大学の本田教授です。

新潟大学・本田明治教授:「北の冷たい水と南の対馬暖流の暖かい水の境界で、シャープな勾配が維持されている。(風が)南では速く、北では遅いので、間の空気がなくなるわけですから、上から持ってくるしかない。それが下降流をもたらす」

極前線とJPCZ テレビ朝日 報道ステーションのテレビ画面から 2月2日

暖かい水と冷たい水がぶつかる極前線。暖かい海の上では、冷たい海よりも強い風が吹きます。その“すき間”となった場所に、上空から引っ張られる形で下降気流が発生。これが、JPCZの風をさらに強めているのではないかというのが研究チームの見立てです。(以上引用)

つまり遠く離れた極前線における下降気流がJPCZに吹き込む風をさらに強めJPCZの発達を助長しているのではないかということです。下図の明るく示した部分に極前線の存在が確認できます。

日本付近の雲の様子 テレビ朝日 報道ステーションのテレビ画面から 2月2日

荒れ狂う日本海で敢行された貴重な観測による発見はこのあと整理され学会発表されるそうです。その発表を待つまでもなく、JPCZ激甚化の主原因は地球温暖化が原因であることは間違いがありません。

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