かんとこうブログ
2023.06.27
現時点のコロナ感染の実態はどんなレベルなのか?
先日久しぶりに尾身茂氏のお顔をニュースで拝見しました。新型コロナウイルス感染症に関して「すでに第9波の入口に来ている」とのコメントをされていました。5月7日に第5類に移行して以来、新規感染者数の発表がなくなり、かわりに定点観測値が発表されるようになりました。この定点観測値による感染状況の把握は、インフルエンザと同じ方法で、指定された医療機関あたり1週間で何人の感染者がでているかという数値を調べて感染状況を判断するというやり方で、インフルエンザの場合には医療機関あたり1週間あたり1.0を超えると「流行期入りの目安」とされているそうです。
今日は現時点の新型コロナウイルスの感染状況がどの程度のレベルなのかについて調べた結果をご紹介します。
最初に何はともあれ厚生労働省のサイト(下記URL)を調べました。掲載されている最新の資料が6月16日発表で6月11日までのデータが最新でした。すでに2週間も前のデータですが、まずは5月8日以降の定点観測値(1週間あたりの新規感染者数)の推移を示します。
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001108938.pdf
この表で最も重要な情報は、とにかくすべての都道府県、すべての週で1.0を上回っていることであり、インフルエンザであれば流行期に入ったと判断されるべきレベルを超えているということです。また全体的に沖縄を除く西日本は、東日本に比べ定点観測値が低いこともわかります。
薄い黄色が全国平均を上回っていること、鮮やかな黄色は、すべての週で全国平均を上回っていることを示しています。薄い赤色は沖縄県で、数値がけた違いに多いことため別な色にしました。すべての週で全国平均を上回った8道県と沖縄県について定点観測値をグラフにしてみました。
この図から見取っていただきたいのは、いかに沖縄県の新規感染者数が突出して多いかということです。ただし、この定点観測値だけでは、現在の状況が過去の感染拡大期と比べてどうかがわかりません。幸い、報告書には、過去のデータから抽出した定点観測値のデータも併記された図がありましたので、下図に示します。
ここでは.原図に上で紹介した5月8日以降すべての週で全国平均を上回った道県のレベルと沖縄県のレベルも記入してみました。沖縄県については、すでに過去の感染拡大期のレベルに到達していることが明らかです。一方で沖縄県以外の定点観測値が高い道県については、昨年10月の第7波と第8波の谷間の数値よりは低いレベルのようにも見えます。
ここでもうひとつ別なデータソースからのデータを紹介します。札幌医科大学のコロナ特設サイト(下記URL)からの情報です。
https://web.sapmed.ac.jp/canmol/coronavirus/japan_estimate.html
このサイトでは、以前のデータを用いて定点観測値から新規感染者数の実数を推定しています。厚生労働省とは逆のやり方で過去の感染拡大期との比較をしていることになります。こうして推定した都道府県別最近7日間の人口100万人あたりの新規感染者数の推定数を下図に示します。
沖縄が突出しているのは同じですが、細かいところは違うところもたくさんあります。ですが、ここでも大事なことは、すべての都道府県の新規感染者数が、人口100万人あたり300人を超え、感染拡大の目安であるステージ4を上回っていると推定されることです。もうすっかり「コロナは過去のもの」という気分が蔓延していますが、過去定められた基準では必ずしもそうではないということです。
札幌医科大学の推定方法により新規感染者数を過去の実数値と比較したのが下図です。代表的な都道府県(北海道、東京都、愛知県、大阪府、福岡県、沖縄県)の推移を示します。
現時点での感染状況の判断としては厚生労働省の場合と同じです。沖縄県はすでに第9波に突入しており、他の都道府県は、第9波の入り口に来ているということです。国民に現在の状況に対してワクチン接種などの協力を呼びかけるのであれば、こうしたわかりやすいデータを提供して正しく理解してもらうことが重要なのではないかと思います。