お電話でのお問合せはこちら
TEL:03-3443-4011

かんとこうブログ

2023.10.23

アフターコロナ労働事情・・・パートの有効求人倍率が大きく変化

最近人手不足であるという話をよく耳にします。運転手の2024年問題ははじめとして人手不足が社会問題化していますが、実際の求人状況においてはどのようになっているか気になった調べてみました。求人状況を調べるには、有効求人倍率が最も適当だと考えました。有効求人倍率とは、求人数を求職者数で割ったものでひとりあたりの求人数を示しています。人手不足が深刻であれば、有効求人倍率が上がっているのではないかと考えたからです。

実際の有効求人倍率の長中期的推移を下図に示します。厚生労働省の「一般職業紹介状況」から引用して作図しています。

ちょっと意外な気がしますが、コロナ禍前後の有効求人倍率は、長中期的にみれば決して悪い部類ではありません。もちろん、2020年の第1波では有効求人倍率が大きく落ち込んでいますが、最も落ち込んだ2020年でも1.0を超えています。リーマンショック以降有効求人倍率は増加傾向にあると言ってもよいのではないかと思います。こうした求人数の増加については、アベノミクスの成果であると喧伝されていましたが、有効求人倍率がこのような傾向にあるのは、背景に団塊世代の大量退職に代表される労働者数の減少、さらにそれを補った非正規雇用の増加による正規雇用者数の減少があるのではないかと考えています。

さて本題に戻してコロナ禍前後の状況についてもう少し詳しく見ていきたいと思います。下図は独立行政法人労働政策研究・研修機構のサイト(下記URL)から引用させてもらいました。

https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/covid-19/c07.html   

   

コロナ禍の前後で有効求人倍率は大きく変化しており、パートを含んだ有効求人倍率で言えば、コロナ禍前が1.5倍、最新が1.3倍と言った状況で、人手不足と言われる割には有効求人倍率がコロナ禍前に戻っていません。また、パートに至っては、コロナ前は1.8倍と全体の倍率を上回っていたにも拘わらず、コロナ後は1.3倍と求職者全体と差のないレベルまでしか戻っていません。つまり、「コロナ前はパートの求人数は正規雇用よりも多かったのに、コロナ後は差がなくなってしまった。」ということなのです。そしてこれは単なる経済の落ち込みにおける一般的な現象ではありません。

同じ独立行政法人労働政策研究・研修機構のサイトにリーマンショック前後の有効求人倍率の推移がありましたので引用させてもらいました。

リーマンショックについても全体としてはコロナ禍と同じような推移となっています。全体のレベルは違いますが、リーマン前1.0程度であった倍率が、リーマン後4年で0.8程度と時間を要して回復しています。ただし、パートについてみればリーマンショックの前後を問わず、正規雇用よりは0.4倍ほど高い倍率を保持しています。リーマンショックではパートの求人数が正規雇用よりも多い傾向は変化しなかったということです。

となると、コロナ禍前後でパートの求人倍率が相対的に減少していることについて特別な理由があるはずです。この答えのヒントになるのが次の図です。これも厚労省の資料で、2020年、2021年における職種別の雇用者数の増減を示しています。

説明文中にあるように、コロナ禍では宿泊・飲食業、卸・小売業、生活関連サービス業などの雇用が減少しました。そしてこうした業種では、パート雇用者の割合が高いのではと思われました。業種別の正規雇用者とパート雇用者の有効求人倍率の推移があればよいのですが、これは厚生労働省の「一般職業紹介状況」第20表から作図するしかありません。全業種について作図するのは無理なので関連が深そうなものを選んで作図してみました。以下のグラフの縦軸はすべて揃えてありますので、グラフの高さがその業種の雇用者数の指標となります。

まず「パート除く(正規雇用)」と「パート」の比率について、業種の特性がよくでています。「パートを除く」:「パート」の比率は、製造業でおおよそ3:1、卸・小売り業で0.9:1,宿泊・飲食業で0.7:1、医療・福祉で0.9:1となっており、製造業でこそ「パート」が「パートを除く」をうわまわりますが、あとは「パート」が「パートを除く」を上回っています。

また、コロナ前後の変化で見れば、卸小売り業の回復が著しく遅れていることがわかります。卸・小売り業のパート以外も求人倍率の回復は他業種よりも遅れていますが、パートに比べれは進んでいることもわかります。コロナ禍で最もおちこんだ求人が回復していないのは、この中では卸・小売り業であるということがわかりました。卸・小売り業の雇用の回復についてはあまり報道でも取り上げられていないように思いますが、上図からは雇用の減少は明らかであり、コロナ禍による休業や廃業の影響もあるものと思います。

今日は有効求人倍率という、日頃扱わないものを取り上げてみましたが、実際のところこれまで持っていたイメージが変わりました、またここでもコロナ禍の影響は残っていると認識しました。

コメント

コメントフォーム

To top