お電話でのお問合せはこちら
TEL:03-3443-4011

かんとこうブログ

2023.10.30

AkzoNobelの利益改革計画

先週世界のTOP3の2023年第3四半期(7‐9月)決算の概要をご紹介しましたが、その中でAkzoNobelの利益改革計画が目を引いたと書きました。2027年までの4年間で日本円にして約400億円をひねり出すという計画なので興味を惹かれました。今日はその概要についてご紹介します。

全体の概要は下図のように書かれています。英文を訳してつけておきましたが、私はこうしたことの専門家ではないので、不適切な訳語があればご容赦ください。

3つの基本方針は「複雑性の低減」「資産活用の改善」「基幹部分の近代化」と書かれています。最後の「基幹部分の近代化」において、基幹部分の原文は「Anchor sites」です。Anchorは錨のことですが、最強部分、頼みの綱という意味もあります。動詞ではしっかりと支えるという意味も書かれていましたので、意訳して基幹部分としました。企業活動を支える基となる部分に残る旧習を近代化するという意味と解釈しました。

目標改善金額は2.5億€、日本円で400億円です。Sherwin WilliamsがValsperを買収した際に、統合によるさまざまな業務統合を行い2年間で300億円の利益改善を行うとしていましたので、それを上回る利益改善計画となります。

いずれにせよこれだけでは何をするのかわかりませんが、より具体的なことは下図に示されていました。

事業内容と地域で事業を3つに区分して具体的な施策が示されています。欧州地区の建築塗料においては、配合の統一、原料と製品の合理化、基幹部分の自動化と効率化、資産活用の改善、最終段階の差別化を行うとしています。言うまでもなく建築塗料は世界各地で生産、販売されていますが、好ましくは地産地消であり、製品イメージは一定の範囲に収まる必要はあるものの、使用する原材料や配合、製品規格などは地域によって異なっているものを思われます。またM&Aなどによって吸収した会社がそれまで保持していた製品の扱いなどなかなか整理しきれない部分があるはずです。ここでの施策を見ると、そうしたものをできるだけ統合して簡素化したいという意向が読み取れます。

しかしながら、言うは易く行うは難しで、建築塗料のような比較的単価の低いものの場合、原材料は現地調達が基本であり、輸入品の使用はコスト高になります。同じ配合表で塗料を生産するのが理想ではありますが、そのためには配合される原料が世界のどこでも国産品として入手できなければなりません。もちろん、製品としては必ずしもすべて同じ原料で生産しなければ製品として満足するものができないわけではないので、どのように使用する原料の品質規定を定めるかということになるのでしょうが、実際にどうやって配合の統一を行うのかは大変興味があります。

業用塗料では、ビジネスに特化したサプライチェーンの配備、資産の生産性向上、基幹部分の自動化と効率化、選択的強化、配送モデルの再構築を行うとしています。サプライチェーンについては具体策はともかくやろうとすることは何となくイメージできます。資産の生産性向上も方向性は理解できます。基幹部分(Anchor Sites)については自動化と効率化と言っていますので、受注から配送までの業務システムをERPで処理することかと想像しています。自動化と効率化ですから生産のことと解釈するのは可能です・・・ この説明だけではわかりません。

最後の南米とアジアについては、歴史的に高い成熟度であると書かれていました。これはどういう意味でしょうか?私は事業が展開された時期が欧米よりも遅いため、比較的効率性や統一性が高い事業展開が行われていると言いたいのではないかと考えました。であれば、先行する欧米の施策のうち最善策を横展開するだけで十分と考えているのではないかと想像しています。

もう少し具体的な説明があるとわかりやすいのですが、想像を交えて内容についてご紹介しました。それぞれの展開スケジュールと目論見を下図に示します。

この図では、事業ごと、年度ごとの目標額などが示されていますが、注目はこの改革に対する投資額です。すでに承認済の投資で最大1.5億€もあります。つまりお金をかけて施策を展開するという決意が示されています。

右下の進展のマトリックスを見ると、これまで塗料製造業では、宿命ともいうべきさまざまな問題点に取り組む姿勢がうかがえます。どこの会社でも生産計画は立てるものの、需要家からの情報も含め、計画通りの生産など到底望めないのが現状ではないかと思います。なので、これらの計画の具体的内容をすこしでも公開してくれたら塗料メーカーにとって大いに参考になるのではと思います。

コメント

コメントフォーム

To top