かんとこうブログ
2023.11.15
増収大増益・・日本ペイントHDの第三四半期決算
11月14日日本ペイントホールディングスの2023年度第四半期決算(7~9月)が発表になりました。一言でまとめるとすれば、増収大増益となります。これは当期の日本をはじめ世界の塗料会社にほぼ共通する傾向ですが、同社の場合も世界の活動地域すべからくこの傾向でした。それでは決算概要をご紹介していきます。ご紹介する内容は同社の発表資料(下記URL)から引用しています。
https://www.nipponpaint-holdings.com/ir/assets/files/name/20231114ir02_j.pdf
大くくりのまとめとしては以下になります。増収増益であること、建築に加え昨年からの反動増があった自動車でも増収などが挙げられています。
日本ペイントホールディングスはいつも短信べ―スとともに、買収などの要因を除いた実質ベースの数字を発表しています。さらに、年度の累積値だでけでなく当該四半期の数値も提供してくれるので、より広い観点から経営状況を俯瞰することができます。短信ベースと実質ベース、そして第三四半期と今年度の第一から第三四半期までの累積値の一覧表をご覧ください。
全般に好調ではありますが、細かく見ると、需要分野別では工業用塗料が、地域別ではアメリカがやや苦戦していることがわかります。上図左下のグラフの注目は塗料周辺事業の売上金額です。これはDULUXグループによるものですが、すでに自動車用や工業用を超える金額となっており、今後の動向が注目されます。
各地域別の売上および営業利益の第三四半期までの累積値の前年比増減%を下図に示します。
第三四半期のみを見れば、全地域とも増収二桁増益であり、日本は三桁増益、Betek Boyaは三桁増収三桁増益となっています。主要需要分野別第一~第三四半期の累積値の売上の状況を下図に示します。
汎用(建築)と自動車用は世界各地すべてで増収、工業用は各地すべてで減収となりました。
毎回引用させてもらっている需要分野別地域別の市況ですが、今回は下のようになっています。
第三四半期実績、第四四半期予測、通年予測とありますが、ほぼ同じ傾向です。通年の予測としては、日本の自動車用は堅調維持、回復が遅れていた中国の自動車用も回復するものの欧州、中国のプロジェクトは軟調、欧米の建築もやや軟調となっています。
ここまでが日本ペイントホールディングス第三四半期決算の概要です。以下は個人的な興味で調べたことをご紹介します。最初は、日本における汎用(建築+防食)、自動車、工業用の四半期毎の売上推移です。
この3部門はほぼ同規模の売上があり時に順番が変わることがあります。概ね汎用がトップですが、コロナ前には時々自動車が上回ることがありました。グラフを眺めると、自動車の売上はまだコロナ前には戻っていないことがわかります。また汎用も工業用も同様にコロナ前に戻れたかどうかというレベルです。原料価格高騰によって単価が随分と上がっていますので、このような売上の推移であれば、販売数量はコロナ前から減少していると推定されます。ただし、これは日本ペイントホールディングスに限らず、ほぼすべての日本の塗料メーカーに当てはまるのではないかとも思います。
最後に、日本ペイントホールディングスの決算結果を世界のTOP3と比較して終わりたいと思います。ここまでのところまだ日本ペイントホールディングスの売上は、少しTOP3には届かないようですが、短信ベースで比較した場合、売上も営業利益も前年比からの増加%は最も大きな数字となっています。今後のM&A如何によっては、来年度にTOP3の一角を崩すことがあるかもしれないなどと想像してしまいます。