かんとこうブログ
2023.12.07
ライオンのNANOXについて
一昨日パナソニックのナノイーXについてご紹介しましたが、今日はライオンのNANOXについてご紹介したいと思います。白いものは白く、色物は色あせしないと謳っており、どうしたらそんなことが実現できるのか知りたいと思いました。塗料においても白いものはいつまでも白く、色物はいつまでもそのままの色を保つというのが永遠の目標になるわけで、なにかヒントになるようなものはないかと思ったからです。それでは、さっそく調べたことをご紹介したいと思います。内容はほぼ下記ライオンのサイトからの引用です
NANOX one| ニオイ・汚れ・衣類の色変化まで1本で全部断つ。|ライオン株式会社 (lion.co.jp)
NANOXという衣料用洗浄剤は以前から存在していたようですが、このごろテレビのコマーシャルでよく見るのはNANOX Oneというもので、いわば進化した最終形とも言うべき存在のようです。「高い洗浄力・消臭力」と「衣類の色を保つ機能」を両立した唯一の洗剤ということですので、興味を惹かれます。
そこにどんな技術があるのか?については、下図で示されています。洗浄力については「高機能界面活性剤」と「高機能酵素」が、消臭力については「新消臭成分」が、色変化防止には、「特殊ポリマー」などが浴槽内での衣類のまさつと再汚染を防止することが鍵となるようです。
とここまではよいのですが、ここから先のもう少し細かいところを知りたいと思っても隔靴掻痒の説明内容しかみつかりませんでした。洗浄力と消臭力については下図がさらに詳しい説明になりますが、情報内容は先ほどとほぼ同じです。要は成分的には「高機能界面活性剤」、「高性能な酵素」、「新消臭成分」以上の情報はありません。
色変化防止についても、ほぼ同様ですが、多少は追加情報がありました。黒いTシャツに関しては特殊ポリマーを採用することで衣類どうしの摩擦を防止していること、白いYシャツの黄ばみ防止は汚れの徹底的な除去と浴槽内の再汚染防止で対応していること、タオルの黒ずみについても再汚染防止で実現していることがわかりました。
そして洗剤成分が汚れの除去と布表面の保護を以下のようなメカニズムで行うと説明しています。すなわち洗剤成分は汚れに吸着して繊維から離脱させるだけでなく、繊維表面にも吸着し保護層を形成するため、摩擦によるダメージを軽減し、色変化を防ぐということのです。
こういう説明を聞くとますます「特殊ポリマー」「高性能界面活性剤」「高性能酵素」「新消臭成分」が何か知りたくなります。このNANOX Oneの成分表には以下のように成分が表示されていました。
界面活性剤は4種類が使用されています。が、この名称を見る限り目新しさはありません。一般名称は普通でも、構造や組成比などに特徴があるのかもしれません。また再汚染防止剤は、そのままの名称なので中身を想像することもできません。さらに特殊ポリマーに相当するものの機能名称がありません。酵素や抗菌剤、香料も同様で、化学的な情報はほぼないに等しい内容でした。これは企業秘密に属することですから仕方ない面もあります。
せっかく調べてきたので少しでも成分情報がないかと思い、特許を調べてきました。ライオンが出願している特許は膨大な数に上りますので、とても短時間では調べきれません。そこで、衣料用洗剤(洗浄剤)のうちここ10年間に出願されたものを選び、実際に特許権として成立しさらに年金を払っているものに限定して調べてみました。加えて色変化防止に関係がありそうなものだけもピックアップしました。その特許が解決しようとする課題と請求項の構成要素を中心に調べた結果を下表に示します。
正直言って、この一覧表を作成してみても「高機能界面活性剤」「高機能酵素」「新消臭成分」「特殊ポリマー」が何かは皆目見当がつきません。ただし、これだけの特許を権利化し維持しているということは、製品を作る上で非常に選択肢が多いであろうということは見当がつきます。言い換えると、これまでの材料の組み合わせや配合量を最適化するだけでも非常に優れたものができる可能性は充分にあると想像されます。これだけの特許が権利化されている背景には膨大な研究蓄積があり、この新製品もその膨大なデータ蓄積によって裏打ちされたものであろうと思われます。
NANOXの秘密には近づけませんでしたが、いつかこれらの高機能成分、新成分が世の公開されることもあろうかと思いますので、その日まで楽しみにして待つことにします。