かんとこうブログ
2024.01.10
ヤクルト1000の睡眠の質を高める効果について
乳酸菌が健康生活に寄与することについては、昨年10月にもご紹介していますが、今回は睡眠の質を高める効果についてご紹介したいと思います。ご紹介しようと思ったきっかけは文藝春秋の二月号の記事「睡眠は最高のアンチエイジング」という記事を読んだことがきっかけですが、気が付くとテレビのコマーシャルでもよく紹介されていました。興味をもった点は、その効果を科学的に証明する論文が出ている点です。一体どんな論文の中身か気になりましたので調べてみました。以下、「ヤクルト1000」を紹介しているヤクルトのホームページ(下記URL)から引用してご紹介します。
https://www.yakult.co.jp/yakult1000/
まず、ヤクルト1000には3つの機能があると紹介されています。一つ目はストレスを和らげる機能、二つ目が注目の睡眠の質を高める機能、三つ目が腸内環境を改善する効果です。このうち一つ目のストレス緩和と二つ目の睡眠の質改善について、徳島大学との共同調査の結果が紹介されています。(論文としても発表されています。)
それではストレスを緩和する効果から見ていくことにします。ストレス緩和については、①コルチゾール濃度の抑制と②ストレス体感いう指標で調べています。①のコルチゾールというのはストレスを受けた時に分泌が増えるホルモン物質です。②のストレス体感というのは被験者がストレスを受けているかどうかという感覚を指します。
被験者は、進級に必要な学術試験を受験する4年次の医学部生男女で、学術試験の8週間前から被験者はヤクルト1000を、対照群は疑似飲料を1日1本(100ml)飲んでもらい調査したと書かれています。すなわち進級試験のストレスを緩和できたかどうかを調べる調査でした。
以下に二つの調査の結果を示します。いずれも黒線が疑似飲料を飲んだ学生、赤色がヤクルト1000を飲んだ学生です。
左図のコルチゾール濃度ではヤクルト1000を飲み続けた学生の方がコルチゾールの濃度が低く、より抑制されていることがわかります。また右図では引用期間を通じてヤクルト1000を飲んでいた学生の方がストレスを感じる程度が低い結果になっています。この二つの試験は、被験者の数が異なっており、論文の投稿先も異なっていますので、試験時期が異なる可能性もあります。(論文の発表年度は同じです)
次に気になる睡眠の質の改善効果です。睡眠の質を測る尺度として、①ノンレム睡眠ステージ3の睡眠時間、②第1周期のデルタパワー(周波数帯域4Hz未満の脳波デルタ波の量)、③OSA睡眠調査が用いられています。このうち①は熟睡時間の、②は熟睡度の指標と指標として、③は起床時の眠気を示すスコアとしています。それではこの3つの試験結果をご覧ください。試験方法は、先ほどのストレス緩和と同じで、学術試験前後の医学生を2群に分けてヤクルト1000と疑似飲料を飲んでもらい調査しています。
上段左図の熟眠時間の割合では、ヤクルト1000を飲んだ学生の方が熟眠時間の割合が多くなっており、学術試験が近づいてもさほど熟眠時間割合が低下しません。上段右図の熟眠度についても、第1周期のデルタパワー(周波数帯域4Hz未満の脳波デルタ波の量)が多く、熟眠度が高いことを示しています。さらに、注目すべき点として学術試験直前が最も熟眠度が高くなっています。また下段の起床時の眠気についても、眠気のスコアが対象群に比べて改善されており、すべての指標で睡眠の質が改善されたとされています。この論文の発表年度は、先ほどのストレス緩和の論文の1年後になっており、ストレス緩和とは異なる被験者の試験であると思われます。
以上睡眠の質についての改善効果も科学的に実証されているわけですが、そのメカニズムはわかっていません。そもそも睡眠そのものへの解明も十分ではない現在、メカニズムの解明は腰囲でないことは想像できますが、腸内環境を改善することが消化器官のみならず、体全体に波及効果をもたらすであろうとは納得できるような気がします。乳酸菌は偉大です。