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かんとこうブログ

2024.02.07

クリーンレーザー・・理想の塗装前処理手段となるのか?

先週テレビでクリーンレーザーなる新技術が紹介されており、その際の用途が、塗装や接着の金属面前処理と言われて驚きました。レーザーを使って、塗装する金属面を処理するもので、錆や旧塗膜を簡単に除去し、しかも昇華させるので、廃棄物が出ないという謳い文句でした。従来のブラスト処理などに比べると、レーザー光を照射するだけなので簡便でクリーンな手段であることから少し調べてみました。今日はクリーンレーザーについてご紹介します。

クリーンレーザーの説明の前にレーザー光についての説明を書きたいと思います。レーザー光がもはや一般の生活にも溶け込んでおり、直進性強く、まっすぐな光というイメージは多くの人に共有されていると思います。

レーザー光と自然光の違いは主に以下の4点です。(説明資料は下記URLから引用させてもらっています)

www.klv.co.jp/corner/lazer.html 

とにかくまっすぐ進み広がらないというだけでなく、単色光(1色の光)であること、コヒーレンスが良い(位相(山と谷の位置)がそろっている)、収束性が良い(1点にしぼり易い)の3点も欠かせない重要な性質です。

そもそもレーザーという名前は、このレーザー光の発生の仕方に由来しています。誘導放出(Stimulated Emission)による光増幅(Light Smplification)放射(Radiation)の英語名の頭文字をとったものです。

誘導放出とは、原子が光などを受けて電子が励起すると、もとに戻る際に光を放出します。(上左図)ところが、何らかの理由で励起状態の原子が多くなる(反転分布状態)と、励起した原子が、励起している原子に衝突するようになり、衝突された原子から衝突した原子から放出される光と、エネルギー、位相、進行方向が全く同じ光が放出されます。これを誘導放出と言います。レーザー光とは、こうした誘導放出された光を増幅して取り出したものがレーザー光なのです。冒頭述べたように、このレーザー光は、いろいろな性質がそろっているため、大変いろいろな用途に利用しやすい光となっています。

今の説明をさらに詳しく書いたのが下図になります。面倒な方は飛ばしてもらっても構いません。

さて、このレーザー光ですが、実はさまざまな種類があります。(下表)利用の形態も目的のさまざまですが、ここでは金属加工が対象となりますので、固体レーザー、代表格はYAGレーザー、だということのみ説明しておきます。

さていよいよクリーンレーザーの説明です。このクリーンレーザーはドイツ生まれですでに20年の歴史があり、日本ではクリーンレーザー・ジャパンという会社が販売権を持っているようです。この会社のサイトには以下の説明が載っていました。

説明では「エネルギー密度の高いレーザー光を吸収した汚れ・コーテ ィング等の対象は気化(昇華)されます。 レーザーはクリーニングに適切なスポットサイズ、及び、短パルスにて照射される為、母材への熱影響は最小限に抑えられます。 」となっています。要約すると、「素材が熱くならないように適切な密度で光が照射され、照射された箇所の塗膜や錆は気化(昇華)し、吸引機に吸い込まれて除去される」と説明しています。金属や金属酸化物が昇華する温度というのは大変高く、しかも上の図ではレーザービームがあたったところはプラズマ状態になっているとあります。凄まじいエネルギーの集中が行われていることがわかります。ただ、金属の気化(昇華)となると作業者が吸い込まないような安全策に配慮する必要があると思われます。このクリーンレーザーの優れている点としてこのサイトでは、以下の点を上げていました。

非常にメリットの多い処理方法であることがわかります。ただ、それ以上の技術的内容は全く情報がありませんでした。どんなレーザーなのか、どうやって加工材が熱くならないように制御しているのか、興味があるのですが、全くわかりませんでしたので、本家のドイツのサイト(下記URL)を調べてみることにしました。しかし残念ながら、ここでもそうした技術的な情報はありませんでした。それでも多少参考になることもありましたので、以下にご紹介します。

https://www.cleanlaser.de/en/applications/application-fields/ 

    

    

「何ができて、何ができないか?」では中段に「厚さが0.5mmを超える層の除去は、特に数平方メートルの広い領域との組み合わせでは不経済です」と書かれていました。厚い錆や塗膜については、面積がそこそこになるとあまり効率が良くない」と書いてありました。これも注意しなければならない点かと思います。「どのようなメカニズムですか?」(上右図)については、要するにレーザービームの出力密度を正確かつ簡単に調整することがポイントだとしています。

   

技術情報に比べて用途例は非常に豊富で具体的でした。さすが実績20年、1800件以上というだけのことはあります。

   

   

特に自動車関係の実績は詳細を極めており、豊富な経験に裏打ちされたものであることが感じられます。塗装前の処理としても実績が多くあるものと思われます。このほか、ゴム製品、タイヤ、医療用機器、歴史的建造物の保存保守、放射性物質の除染、金型洗浄、印字など多様な使い道が書かれていました。

   

実際にブラストが多用されている防食関係の塗装への適用については、錆または旧塗膜の厚さがどこまで許容できるか、作業効率とコスト、気化物回収における安全性などがクリヤーになれば適用が増えるのではないかと思いました。

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