かんとこうブログ

本掲載記事の内容について指摘がありました。指摘内容は、本記事の最後の部分の「国内で貸借対照表が公開されていないので」に対して、ちゃんと政府から公開されているので事実に反するということでした。公開先として以下が挙げられており、確かに令和3年度分が公開（下記URL)されていることを確認しましたので、まずは記述が誤りであったことをお詫びいたします。その上で上述の部分と関係部分含め削除させていただきました。（2024年2月17日）（https://www.mof.go.jp/policy/budget/report/public_finance_fact_sheet/fy2021/20230329houdouhappyou.html

YouTubeで元内閣官房参与の高橋洋一氏が、IMFのサイトに日本政府のバランスシートが掲載されていて、資産が債務を上回っていると発言していました。「Public sector balance sheet」に載っているという話でしたので、IMFのサイトで探してみました。残念ながらPublic sector balance sheetでは探しきれませんでしたが、2019年の年次報告書に掲載されているのを見つけました。今日はその掲載内容をご紹介したいと思います。

実はこの探しものは結構厄介でした。IMFのサイトは日本語版があるので日本語版で「Public sector balance sheet」といれるとヒットしませんでした。英語版に戻して「Public sector balance sheet」と検索すると沢山でてきますが、なかなか目的とする各国政府の貸借対照表に行きつきません。予備的にスマホで検索した時は、すんなりと各国政府の資産/負債の対比が掲載されている2019年の年次報告書にたどり着けたことを思い出し、年次報告書を探しましたが、日本語版で検索して出てくる年次報告書はスマホで見たものとは別物でした。いろいろ試してやっと英語版から目的の報告書（下記URL)にたどり着きました。因みにこの政府の資産/負債対比の図は、以降の年次報告書（2020～2023年）には掲載されていません。

https://www.imf.org/external/pubs/ft/ar/2019/eng/assets/pdf/imf-annual-report-2019-ja.pdf　　

この中で、公的債務について述べた部分に各国政府の資産/負債対比図が掲載されています。（下図）

この図では、資産が緑、負債がオレンジ色で表されており、数値は対GDP比％になります。データは2016年なので少し古いですが、大筋変わりないと思います。日本は赤線で囲った部分に示されており、それを拡大したのが右端欄外の図です。細かい数字はわかりませんが、総資産と総負債はともにGDP比300％付近にあり、白い横線で示された正味資産（＝総資産ー総負債）はほぼゼロ付近でややマイナスの値となっています。この正味資産の位置でみるとこの図にあるG7の6か国（イタリアは掲載なし）中で、カナダについで２番目に良い位置にあります。

一方白い三角でしめされた一般政府債務の位置を見るとGDP比200％を超えた位置にあり、これは掲載国中の最多債務比率となっています。つまり政府の債務もとても多いということは決して間違っていないのですが、資産/負債の対比として見ると結構資産と債務がほぼバランスしているということなのです。

この政府債務についてIMFでは以下のような説明がついています。（下図）

要約すると上図左側では、「債務が適度な水準で成長を促進する活動に効率的に使われるのであれば債務そのものが悪い訳ではない。ただし債務が多くなるとより生産的な用途に資源が回らない原因となることが多いことが問題である。債務と同様に資産も重要であるが、資産をより有効に活用することの重要性を理解していない政府が多い」と説明されています。

一方右側では、「債務は厳格に管理していても、自らが保有する資産については債務ほど明確に把握していないケースも多い。債務として年金債務を記録している国は少なく、物的資産、天然資産なども資産として記録されていない場合も多い。例をあげれば中国のインフラ資産であり、負債を大きくうわ回る資産額となって正味資産を大きく押し上げており、リスクに対するバッファーとなっている」と説明されています。すなわち、資産はリスクに対する緩衝材となりうると言っているわけです。

以上がIMFの報告書に書かれている内容です。