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かんとこうブログ

2024.04.10

2022年度塗料からのVOC排出実態推計のまとめに寄せて

3月に日塗工から掲題の冊子が発行されています。塗料にとって今後強まるであろうVOCに対する環境圧力を想定した時に大変参考になる冊子であり、是非とも本ブログで内容を紹介したいところではありますが、著作権の問題がありますので、内容の引用は避けなければなりません。そこで、この冊子に代えて環境省から発表されている「揮発性有機化合物(VOC)排出インベントリについて」という資料(下記URL)の中身をご紹介し、塗料から排出されるVOC問題を考えていただく一助にしてもらうことにしました。この資料は令和5年3月発行の1年前の資料ですが、現時点でこれが最新版であり、状況は変わっていないと思いますのでご了承ください。

https://www.env.go.jp/content/000068888.pdf

    

まず、多くの方にも見慣れていると思われる発生源品目別VOC排出量の集計結果の図です。周知のように、塗料はこの調査が始まって以来、発生源品目別ではトップを独走中です。

図の赤線から下の部分が塗料からのCO2排出量です。もちろん塗料からの排出量は年々減少しているのですが、他の発生源からの排出量も減少しているため、全体に占める割合はあまり変化していません。これが認識しておくべきポイントの一つ目です。

次は、発生させている業種別の内訳です。実際にどの業種から発生しているかの内訳ですが、塗料製造業は見当たりません。

最も割合が高い燃料小売業は主にガソリンスタンドでの給油中に揮発することで発生しています。塗装からの発生は、下から2番目の建築工事業、3番目の輸送用機械器具製造業(自動車製造業など)、7番目の金属製品製造業がそれに該当するものと思われます。塗料からの発生は客先での発生であるということが認識しておくべきポイントの2番目です。

発生するVOCの内訳についても詳細な資料があります。

少々わかりにくいかもしれませんが、発生するVOCの半分以上は炭化水素であり、ついでエステル類、ケトン類と続きます。塗料からのVOCにも炭化水素類は非常に多いと思われます。炭化水素は水に溶解しませんので、発生すると長い時間大気中に留まることになります。これが認識しておくべきことの3つめのポイントです。

さいごに、VOCの発生する形態が比較的似ている発生源品目との比較です。これは資料中に図がないので作図しました。左が塗料から発生するVOCの推移です。順調に減少しているように見えますが、ここのところ減少が緩やかになっており、さらに出荷数量が減少傾向であることを考えると余計に減少率は見た目以上に低くなっていると思われます。

右は塗料、印刷インキ、接着剤、粘着剤・剥離剤、ラミネート接着剤から発生するVOCの発生指数(2000年の発生量=100)です。赤が塗料から発生するVOCですが、接着剤を除くと発生割合が直近でも最も高くなっています。VOCが減ってはいるのだけれど、類似の化学製品と比べると減り方が少ない部類であるということです。これが認識しておくべきことの4番目です。

以上認識しておくべきことを再度列記すると、①塗料からのVOC発生は、発生源別では最多であり、年々減少してきているものの、全体に占める割合はあまり変わっていない ②塗料からVOCは、塗料製造時ではなく塗装時に発生する ③発生するVOCの主体は炭化水素である ④塗料に近い使用形態の化学製品と比較した場合に、塗料から発生するVOCの減り方が必ずしも捗々しくない となります。

塗料からのVOC発生を減らすことの難しさを承知の上で、あえて日頃見ることの少ないであろうデータをご紹介しました。以前はVOCそのものが問題視されていましたが、今後はVOCはCO2とリンクした課題として取り組まなければなりません。その意味で塗料が社会からどう見られているのかということがより重要になってくるのではと思います。

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