かんとこうブログ
2024.04.26
”うまみ”の相乗効果はなぜ起きるのか?
朝の情報番組で、うまみの相乗効果について紹介していました。うまみ成分のうちの二つ以上を組み合わせるとうまみが何倍も強く感じられるということでしたが、面白いことにうまみ成分の組み合わせによってはこうした相乗効果が起きないことがあるということでした。興味を覚えたので調べてみました。すると意外に深い相乗効果の秘密がわかりました。
まずうまみ成分と呼ばれているものには次の3種類があります。グルタミン酸系、イノシン酸系、グアニル酸系で以下の構造をしています。(ウイキペディアより引用させてもらいました)
見てすぐかわるように、イノシン酸とグアニル酸は核酸系と呼ばれているように核酸に存在するDNAなどの遺伝子物質と同じヌクレオチド構造(核酸塩基+グルコース+リン酸)を持っています。対してグルタミン酸は、普通のアミノ酸です。
これらがどのような食品に多く存在しているかというのを図示してみました。ここからの情報については、その多くを小林食品さんの「和食のうまみ」というサイト(下記URL)から引用させてもらっています。
https://www.kobayashi-foods.co.jp/washoku-no-umami/inosine-glutamine
3つのグラフを横に並べたことに加え、グルタミン酸のグラフだけ縦軸が対数軸で見にくくなってしまいましたが、横並びにしたのは、各食品に含まれるそれぞれのうまみ成分の含有量のレベルを知ってもらいたいということでした。グルタミン酸では昆布とチーズが、イノシン酸では煮干しと鰹節が、グアニル酸では干し椎茸が、圧倒的に含有量の多い食品になります。
あと大事なことは、それぞれのうまみ成分がどんな食品に含まれているかですが、グルタミン酸は昆布や野菜、そしてチーズに多く含まれています。これに対しイノシン酸は肉や海産物、グアニル酸は海藻やキノコ類とそれぞれ含んでいる食品が異なっています。
さて前置きはこのくらいにして本題に入ります。うまみ成分の相乗効果ですが、一体どの位うまみが増すというのでしょうか?定量的に調べたデータがありました。
グルタミン酸とイノシン酸を1:1で混ぜあわせると、それぞれ単独使用の時に比べて7~8倍のうまみの強さになるというのです。1+1が2ではなく、7~8になるということですのですごいことです。
こうしたグルタミン酸とイノシン酸の組み合わせは下図のような具体例が知られています。
グルタミン酸とイノシン酸の組み合わせは豊富にあるようですが、これ以外にも左の文章に書かれているようにグルタミン酸とグアニル酸の組み合わせてもうまみの相乗効果が得られるとしています。一方で、イノシン酸とグアニル酸の組み合わせでは、相乗効果がでないと書かれています。そもそも相乗効果はどうして起きるのか、またどうして起きない場合があるのでしょうか? その答えは、相乗効果のメカニズムが解れば簡単に導きだせます。
グルタミン酸とイノシン酸の場合に起きることは以下のように説明されていました。
グルタミン酸はグルタミン酸受容体という場所に接合することでうまみの刺激をつたえるのですが、イノシン酸が存在していると、イノシン酸がグルタミン酸が接合している受容体の開口部先端に接合し、グルタミン酸の結合を固定化し、長時間うまみシグナルが脳に送り続けられることになると説明されています。これは学術論文で実証されていることであり単なる仮説ではありません。もうひとつのグルタミン酸とグアニル酸の場合も同様な現象が起こります。
説明としては、先にグルタミン酸が受容体に接合し、あとからグアニル酸がさらに接合することで受容体のうまみ認識機能が高められ、より強くうまみが脳に伝達されるようになるという仕組みです。先にグルタミン酸が受容体に取りつき、あとからイノシン酸、またはグアニル酸がさらにそこに取りつくことでうまみが脳に強く伝達されるようになるという点は同じです。
これがわかると、なぜイノシン酸とグアニル酸の組み合わせでは相乗効果が起きないのかもわかります。先に受容体にとりつくグルタミン酸が存在しないため、相乗効果を起こせないのです。
以上が相乗効果の秘密です。小林食品さんのサイトには、上記の相乗効果機構解明についての論文のURLもありましたので、少し覗いてみましたが、なんと「umami」という英単語が使われていました。研究者は日本人でもないのに、です。「うまみ」はもはや世界の共通語になっているようだと知り少し嬉しくなりました。