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かんとこうブログ

2024.06.04

百花繚乱・・箱根湿生園のガクアジサイ

毎年、この季節になるとアジサイの話を書いているのですが、ことしは箱根湿生園のガクアジサイをご紹介したいと思います。箱根の仙石原にある湿生園は多くの皇族が訪問されている由緒正しい植物園で四季を通じてさまざまな植物を楽しめますが、今の時期は多くの種類のガクアジサイが展示されていました。花の美しさもさることながら、名前のユニークさにも魅かれて写真をらくさん撮ってきましたのでご紹介していきたいと思います。

とは言え、それぞれの品種についての技術的な解説は私の能力を超えていますので、あくまで独断的な感想と印象を述べるだけですので、悪しからずご了承ください。

最初は四人のお姫様からです。

「桜姫」は淡い赤の可憐さ、「藍姫」はあでやかな深い藍色、「黄金篤姫」は特徴的な葉の色、「酔湖姫」は淡い青のはかなさが特徴的でした。続いて四国つながりです。

この中で「土佐の緑風」と「祖谷の風車」は中心部がとても細かい構造になっていることが印象的でした。「土佐の美鈴」はその可憐さ、「四国ブルー」は透明感のある青がそれぞれ印象に残りました。

次は「月」と「剣」です。

月と聞くと満月を思い浮かべますが「横浪の月」「瀬戸の月」を見てどのような月を感じるでしょうか?「瀬戸の月」は穏やかな瀬戸内海の夜の浮かぶ満月を連想させてくれます。「紅剣」は,他よりも離れているガクのようすが剣を連想させなくもありません。また「剣の舞」には動きが感じられました。

続いて星や光などの名前がついたアジサイです。

この四種類の中で最も印象的だったのは朝日です。花は小ぶりでほぼ緑で鮮やかさの欠片もないのですが、それでいて花であることを主張しており、凛とした雰囲気を感じました。

続いてご紹介する四種類は名前に共通性がありません。

「白甘茶」「桃色山」「エゾ星野」はいずれもガクが白基調ですが、中心部の色の構成が異なっており、それによって印象が変わって見えます。青の多い「白甘茶」、緑が強い「桃色山」、青が遠慮がちに主張している「エゾ星野」といったところでしょうか?この「エゾ」とは「エゾアジサイ」という一群のアジサイの種類に由来するものと思われます。右端の「玉美」はガクの青さが美しく印象的です。

最後に展示されている中で最も魅了された2品種をご紹介したいと思います。

「紅」は文字どおり赤がとても印象的で目を惹かれます。また「アジアンビューティ」はその名の通り外国人を思わせる派手な色合いが際立っていました。最後に登場させて出し惜しみしていたわけではありませんが、とても印象に残りました。

この「紅」と「アジアンビューティ」だけ2枚ずつ写真を載せたのは理由があります。写真を見比べていただくとわかりますが、この品種では株によって色が少し異なっているのです。ということで、ここからは毎回書いているアジサイの花の色についての話になります。

アジサイの花の色素はアントシアニンです。アントシアニンはアジサイに限らず赤~紫~青の広い範囲の色素として多くの花に見られます。このアントシアニンはアントシアニジンという物質が糖や糖鎖と結びついた配糖体の総称であり、アントシアニジンには多くの類縁体があります。(下図:Wikipediaより引用)

アジサイのアントシアニンについては下図のような説明がありました。農研機構の花き(かき)研究所のサイト(下記URL)から引用させてもらっています。

https://www.naro.go.jp/laboratory/nivfs/kiso/color_mechanism/contents/blue.html

   

要約すると①アジサイのアントシアニジンはデルフィニジン(上図赤枠)である ②アジサイの青と赤の違いはアルミの量と共存する有機化合物の種類の違いである ③青い方がアルミを多く含んでいる(下へ続く)

    

  

青い花にはキナ酸の3-エステル化合物が、赤い花にはキナ酸の5-エステル化合物がそれぞれ共存物資として存在している(下図:キナ酸は1,3,4,5-テトラヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸であり、その3の位置のOHが他の有機酸とエステル結合を形成しているものが3-エステル化合物、5の位置のOHが他の有機酸とエステル結合を形成しているのが5-エステル化合物です)。

   

   

最後は少し難しい話になりましたが、わずかの違いで花の色が変化することがお分かりいただければ幸いです。明月院の時にも触れましたが、毎年決まって同じ色の花を咲かせるためには土壌のpH管理だけでなく、さまざまに気を配らなければならないということもお解りいただけたかと思います。

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