かんとこうブログ
2024.06.26
ウナギと大豆イソフラボン
先日夕方の情報番組で、養殖ウナギに大豆イソフラボンを餌として与えると今までよりもずっと大きく育てることができるということを知りました。しかも単に成長が早いということではなく、養殖ウナギでは通常9割がオスになるのに対し、イソフラボンを与えることでメスの割合を9割以上にすることができ、メスの方が最終的には大きくなりかつ味も良いという話でした。とても興味深かったので、いろいろと調べてみましたので、この話題を掘り下げてご紹介したいと思います。
この話題については共立製薬の「畜産ナビ」(下記接続先)というサイトに詳しく載っていましたので、図や説明を引用させてもらいながら概要をご紹介したいと思います。(太字が引用部分です。また、ウナギは稚魚の段階では性が未分化であり、成長とともに性が分かれます。天然の場合はほぼ等分なのですが、養殖になるとなぜかオスが9割になるそうです。)
食味に優れた大型メスウナギ生産技術の確立|畜産ナビ (kyoritsuseiyaku.co.jp)
下図に示すように、オスとメスとでは成長速度に差があり、オスのウナギは稚魚から一般的な出荷サイズ(200~250g)に成長するまで、成長がメスに比べて早く養殖期間が短くてすむのですが、なぜかそれ以上には成長しにくく、成長しても皮が厚く身が硬くなってしまうそうです。これに対して、メスは当初オスよりも成長が遅いのですが、出荷サイズを超えても成長がとまらず、大きくなっても身が硬くならずにおいしいままという性質があります。
愛知県水産試験場と共立製薬は、大豆食品に含まれる「大豆イソフラボン」に着目し、メスウナギの生産に取り組み、大豆イソフラボンをシラスウナギに与えることで、9割以上の高効率で、養殖メスウナギを生産することに成功したというのです。
この技術のポイントは2点で、➀ 大豆イソフラボンの種類 ② 大豆イソフラボンを給与する期間 です。1点目の大豆イソフラボンの種類ですが、どんなものでも良い訳ではなく大豆イソフラボンに含まれる有効成分の量が重要であるとのこと。また2点目の 大豆イソフラボンを給与する期間については、魚体重0.5g(シラスウナギ)から開始し、魚体重25gに達するまで、かつ、2か月以上継続的に給与することで高い効果が得られるということです。(下図)
魚体重0.5gの早い時期から給与を開始した試験区ではメス生産率は98%であったのに対して、魚体重5gから給与を開始した試験区のメス生産率は55%でした。このことから、早い時期から大豆イソフラボンの給与を行うとメス生産率が高いことがわかったそうです。
この大豆イソフラボンの効果(メスが多くなること)については、大豆イソフラボンは、その化学構造が女性ホルモン(エストロゲン)に類似しているため、植物エストロゲンの一つといわれ、女性ホルモンに似た作用があると説明されています。この技術を用いて養殖したウナギは、従来の2倍の大きさに成長させても身が柔らかく、美味しいとのこと。また大豆由来の天然成分を給与しているため安心して食べることができると説明されています。
簡単に言えば、女性ホルモンに類似した構造の天然由来物を餌とともに与えるとメスの割合が著しく増え、おいしさを保ったまま今までより大きく育てることができるようになったということです。
この話のポイントは大豆イソフラボンと女性ホルモンの構造の類似性です。こういう話を聞くと俄然化学屋の血が騒ぐので、大豆イソフラボンについていろいろと調べてみました。その結果は明日ご紹介します。