かんとこうブログ
2024.07.02
都道府県別最低賃金、平均収入、消費者物価指数
最低賃金の大幅引き上げを求める声をうけて、厚労省で審議会での議論が始まりました。最低賃金は、すべての人の影響を及ぼす可能性がある重要な指標ですが、大幅引き上げをすべきかどうかという観点から離れて、都道府県別に見た最低賃金、平均収入、消費者物価指数の水準について調べたことをご紹介したいと思います。
現在の最低賃金は全国平均で1004円/時間となっていますが、実は都道府県単位で見た場合にこの1004円/時間を超えているのは47都道府県中6都府県しかありません。(データは下記接続先から引用しています)
地域別最低賃金の全国一覧 |厚生労働省 (mhlw.go.jp)
1004円越えが6都府県しかないのに、平均が1004円であるのは、それが加重平均だからであり、最低賃金の金額が高いのは総じて大都市圏でありその都府県の人口が非常に多いためこのような現象がおきるのです。
上の図を見ても大都市圏を有する都道府県の最低賃金が周囲を比較して高いことは明らかです。しかもこの傾向は都道府県別の平均収入においてもほとんど同じです。(平均収入についてのデータは下記接続先から引用しています)
都道府県別に見る日本の平均年収(平均年収ランキング最新版) |転職ならdoda(デューダ)
上の図では400万円/年・人以上の県を色分けしています。最低賃金と少し違うところがあるとすれば、大都市の周辺であり、最低賃金が職場の所在地別データであるのに対し、平均収入は居住地別のデータであるためと推測しています。いずれにせよ、平均収入も大都市圏が高いという事実は明らかです。
この大都市圏とその他地域の違いは男女の収入比率や労働者中の男性比率にも明確な差として現れています。
下図は先ほどと同じデータソースから計算した都道府県別の男女の収入比率や働者中の男性比率です。縦棒が男性収入に対する女性収入の%、折れ線が労働者に占める男性の割合です。
男性の収入に対する女性の収入%については、最低賃金や平均収入に比べると大都市圏とその他地域で大きな違いはなく、むしろランダムに高い県(80%超え)が存在しており、青森県、鳥取県、島根県、沖縄県がそれに該当します。
一方、労働者に占める男性の割合は大都市圏で低く、その他地域で高い傾向にあります。労働者中の男女が同数であれば男性比率は50%となりますが、総じて大都市圏以外では60%程度のところが多くなっています。男性比率が60%というのは、労働者が100人いたら男性が60人、女性が40人ということになりますので、圧倒的に男性が多いことになります。
東京、大阪、名古屋の3大都市圏と仙台都市圏では女性の比率が高くなっています。さらには、中国・四国地方、北海道と沖縄でも女性の比率が高い傾向にあります。東京では男性比率が0.48と0.5を下回っており女性の方が多いことになります。総じて大都市圏では女性により多くの働く場が存在することを示しています。北海道と沖縄については共通する要因として観光という言葉が頭に浮かびますが、想像の域をでません。いずれにしても興味深いデータです。
一方で消費者物価はどうなっているのでしょうか?消費者物価地域差指数というものがありましたのでご紹介します。
消費者物価地域差指数-小売物価統計調査(構造編)2022年(令和4年)結果- (stat.go.jp)
最低賃金や平均収入と似ているようですが、ちがうところもかなりあります。東京圏が高いのは同じですが、大阪圏は他と変わりません。逆に北海道や山形が平均越えになっていました。この消費者物価指数は、賃金収入に比べて北高南低傾向が強いようで、その要因は冬の暖房費が大きな要因となっているようです。
さらに最低賃金と平均収入、平均収入と消費者物価についての相関性を調べてみました。
最低賃金と平均収入については、かなり高い関係性が認めらました。平均収入は最低賃金を決めるための要素ともなりうるので当たり前かもしれません。最低賃金は890円台で足切りのようになっており、これがなければもっと相関係数は高くなるものと思われます。
平均収入と消費者物価指数については、あまり関係性がないという結果でした。言い換えると場所によって物価の高いところと安いところがあるということになります。東京、神奈川は平均収入も物価も高いのですが、平均収入の割には物価が高いところとして、埼玉、北海道、山形、沖縄が挙げられ、逆に平均収入の割には物価が安いところとしては茨城、大阪、群馬、宮崎が挙げられます。こうした消費者物価の地域差についても最低賃金の決定要因として使用されているかどうかはわかりませんが、最低賃金と消費者物価指数のグラフを描かせてもほぼ同じになりますので、あまり考慮されていないのかもしれないと思っています。