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かんとこうブログ

2024.07.03

国債の利払い費は実際いくらなのか?

先日、国会質問の中で財務省が「国際の利払い費がGDPに対して0.28%に過ぎず、これはG7の中でカナダに次いで2番目に少ない数字である」と答弁したとの情報がネットに上がっており、答弁の動画も示されていました。今日はこの国債の利払いに実際には一体いくら払っているのかを推定してみたいと思います。

国債と言えば、これまで国の借金はとてつもなく巨額で孫子の代に禍根を残すというように刷り込まれてきました。実際に政府債務のGDP比と言えば確かにGDPの250%であることは間違いがないようで、現在のOECDの資料でも下図のように政府債務はGDPの250%であるとなっています。(下図OECD資料:赤棒が日本)

しかしながら、冒頭ご紹介した財務省答弁にあったOECDの5月発表の資料では、国債の利払いの対GDP比は下図のようになっているとのことでした。(OECDのサイトでこれに該当するものを見つけることができませんでしたので、政府答弁の数字を使ってグラフ化しました)

国の借金が増えて何が不安化と言えば、いずれ満期が来てお金を返すための原資が必要になること、そして今のような金利が低い状態から高い状態にあがった場合の利払いのお金が必要になることです。これも財務省答弁によれば、満期における償還については、現実的にはすべて借換債の発行で対処しており、費用は1円もかからない、すなわち国が存続する限り借り続けられるということでした。借り続けることの是非はともかく現実としての費用面では国債の満期が来ても費用は発生することはないということでした。となると実際に心配しなければいけないのは、国際の利払いです。これを計算してみようと思います。

国債の発行残高と利払い費がいくらであるのか、これは財務省の資料で見つかりました。(下記URL)

https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/005.pdf

    

  

OECDのデータが2022年でしたので、このグラフから2022年の国債の発行残高と利払い費を見るとそれぞれ、1027兆円、7.1兆円とあります。ここから日銀保有分(利払いされても最終的に国庫に入る)と外貨準備として保有している米国債の利払い受け取り金を計算して差し引いてみます。

   

国債の日銀保有分はこれも財務省の資料(下記URL)で令和5年12月末で53.8%とありました。

https://www.mof.go.jp/jgbs/reference/appendix/breakdown.pdf

   

2022年(令和4年)時点ではもう少し少なかったのかもしれませんが、これで代用します。すると日銀保有分を除いた国際利払い費およびその対GDP比は以下のようになります。

  

   

外貨準備として保有している外国債の金額はやはり財務省の資料(下記URL)から2022年4月で1兆894億ドルとされており、このほとんどが米国債と思われますので、この金額を用います。

https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/reference/official_reserve_assets/data/0403.html 

さらに金利は10年もので4.38%として計算します。先ほどの日銀保有分による減殺に加えて計算すると以下のようになり、逆にマイナス、すなわち利払いを受け取れるという計算になります。

   

   

米国債の金利受け取りを勘定に入れて計算することにも議論があるとは思いますが、こういうものの見方もできるのではないかというのも事実です。OECD資料による国債の利払い費がGDPの0.28%であるとして計算すると利払い費はわずか1.53兆円に過ぎず、上で計算した日銀保有分を差し引いた数値よりも小さな数字になります。

かねてから、国の借金について財務省には「借金の額のみを言って資産を言わない」という批判があります。元内閣官房参与の高橋洋一氏によれば、国の総合的な貸借対照表を作成すれば、約100兆円の資産超過であるとのことでした。上で示した財務省資料の国債発行残高と利払い費の図には「普通国債残高は1000兆円を超えており、金利が上昇すれば利払い費が大幅に増えることになります。」と説明文が添えられています。確かにそれはそうでしょうが、日銀保有分の金利は支払われても国庫に戻ることも含め、統合政府としての貸借対照表で説明し、国民に理解と協力を求めるべきではないかと思います。観念論としてのプライマリーバランス論は説得力も訴求力もないと思われます。

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