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かんとこうブログ

2024.08.26

2024年~2030年の世界の塗料需要について その1

先日、日本塗料工業会から、Orr & Boss Inc. による塗料の世界需要に関する最新のデータのご紹介をいただきました。同社は、各国・地域の塗料工業会から統計データの提供を受け世界的な塗料需要に関する統計資料を作成・提供しております。この度、出展を明記すれば公表してもよいとのお許しを得ましたので受領したデータの一部をご紹介したいと思います。

このOrr &Bossのデータは、2023年までの実積と2024年から2030年までの予測から構成されており、世界の国や地域別及び需要分野別の数量と売上金額を収載した膨大な資料となっています。それでは順番にご紹介していくことにします。

最初は2024年の需要分野別の数量と金額からです。

数量は全体で48,936メガリッター、比重1.2とすると5,872万トンで前年比1.5%増でした。金額は1,974億$、日本円では29兆円あまり(1$=147円)で前年比1.1%増といずれも例年にくらべて低い増加率に留まりました。これを世界の人口で割った一人当たりの数値は、数量で7.34Kg/人、金額で3,630円/人となります。

需要分野別は、建築が数量で59%、金額で47%と約半分を占め、残りの工業用途と全体を二分する構図は変わりません。ただ、例年の区分の仕方とは少し異なるようなので、あまり気にせず大枠で捉えていただければと思います。

次に地域別の割合を見ていきたいと思います。これも例年と同じです。数量、金額ともアジアが最大の塗料需要地であることに変わりはありません。下図中央下に小さなグラフを示していますが、これが世界の地域別人口の割合です。少なくとも数量は人口比率に近い割合であることが解ります。

2024年のデータから、各国・地域のひとり当たり数量と金額を計算してみました。

縦棒がひとりあたりの数量、赤折れ線がひとりあたりの金額です。左のG7諸国ではひとり10リッター、70$というのが大まかなラインで、アメリカとイタリアが少し抜けています。一方アジアでみると中国、日本、韓国、豪州(オーストラリア、ニュージーランド)はまずますG7並みですが、その他の地域、塗料消費数量・金額とも小さくなっています。逆に言えば、今後ひとりあたりGDPが向上するにつれ、ひとりあたりの塗料需要も増えて行くであろうと推測されます。

次の世界の塗料需要の推移(実績と予測)を見てみましょう。

   
左側の上下二つのグラフは、2012年から2030年にかけての世界全体の実績と予測です。金額・数量とも2020年に小さなへこみがありますが、これがコロナによる経済停滞の影響です。それを除けばほぼ順調に増加しており、2012年から2030年までの平均成長率(年率)を計算すると金額は4.60%、数量は2.94%とかなり大きな数字になります。
  
一方右側の毎年の前年比増減%のグラフは、2023年までの実績でかなり乱高下が見られます。大きくはコロナによる停滞(落込み)と回復によるものですが、数量の実績は毎年小さからぬ変動があります。ただし、2024年以降、特に2026年以降については、ほぼ一定の値を予測値として見込んで計算しているようです。2020年代後半の成長率を図中に記入しておきましたが、金額で4.91%、数量で3.14%と、コロナ禍以前よりも高率で成長するとの見通しが示されています。金額の成長率が数量のそれの約1.5倍ですので、単価も同じように上昇していくと予測されています。
   
2020年代後半の各国各地域の数量・金額の推移はほぼ一定ですので、その数値をグラフ化してみました。
   
   
左の地域別で見ると、世界全体(右端)に比べて低成長なのが北米、欧州の先進国主体地域で、それ以外の地域はすべて世界全体の成長率よりも高い成長率となっています。一方右側のアジア各国・各地域に目を転じますと、インド、中央アジア、東名アジアの高成長率が目立つ一方で、それとは対照的なひときわ低い日本の成長率が目を引きます。ひょっとすると世界で最も低い成長率かもしれません。また中国の成長率も世界全体の成長率を下回り、かつての高成長が完全に終焉を迎えたことが解ります。
  
明日は、各国、各地域の塗料需要の実績と予測、および2030年における世界の需要分野別シェア、地域別シェアの予測をご紹介したいと思います。

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