かんとこうブログ
2024.08.22
2021年1月以降で増えた塗料、減った塗料・・経産省6月度確報より
一昨日は経産省確報から塗料単価の推移を、昨日は同じ経産省確報から塗料原材料の単価推移と一部原料の数量、金額動向をご紹介しました。ふと気が付くと、塗料については単価動向のみをお知らせして、塗料種類別の数量と金額についてはご紹介しておりませんでした。全体としては数量は減少傾向、金額は増加傾向であるとは認識していましたが、塗料種別の傾向は把握できていませんでしたので、昨日の原料と同じように2021年1月以降2024年6月までの3年半の塗料種類別の数量と金額の推移をグラフにしてみました。
確報の順に4種類ずつご紹介します。青線が販売数量(左軸:単位トン)、ピンク線が販売金額(右軸:単位百万円)です。図中の式は、一次の近似式で、上が金額、下が数量の式となります。いうまでもなく、傾きがプラスは増加、マイナスは減少です。
この4種類はすべて数量は減少、金額は増加でした。またいずれも時間とともに数量と金額が乖離していく傾向にあります。
この4種類も、数量は減少、金額は増加でした。時間とともに数量と金額が乖離していく傾向にありますが、アクリル樹脂塗料(焼付)だけは乖離が軽微となっています。
この4種のうちエポキシ樹脂塗料と船底塗料は数量、金額とも増加でした。にもかかわらず、数量と金額が時間とともに乖離していることは、金額の上昇が数量の上昇よりも大きかったことを示しています。
逆に不飽和ポリエステル樹脂塗料は数量、金額とも減少傾向で需要が減少しています。ウレタン塗料は数量は減少、金額は増加という大多数のパターンでした。
ここで厚膜エマルションは、数量、金額ともに減少しており、数量、金額の乖離もわずかです。数量が減少する中で価格の改訂も難しい状況かと思われます。逆に水性樹脂塗料は数量、金額とも増加であり、かつ数量、金額の乖離もあります。金額の上昇が数量の上昇よりも大きかったことがわかります。その他溶剤系塗料とエマルション塗料は、数量減少、金額増加でした。
トラフィックペイントは数量、金額とも減少でした。数量と金額がよく一致しており、単価がほとんど上がっていないことを示しています。他の3種類は数量減少、金額増加で、数量と金額の乖離がありますので、単価も上昇しているということになります。
以上種類別の統計が報告されている種類の塗料の数量と金額の動向をグラフで見てきました。それぞれの種類別近似式の傾きaと切片bから、a/b%を求めました。これは言わば1か月で2021年月の数量や金額が何%増加、あるいは減少するかという数字です。表中の数字は小さいですが、0.1%/月は年率に換算すると1.2%/年になりますので、3年半では4.2%も増加/減少することになります。
個々の塗料でご紹介してきたように、全体的には数量減少、金額増加で単価の上昇により数量の減少がカバーされているという構図ですが、数量も金額も減少した塗料が3種類(不飽和ポリエステル樹脂塗料、厚膜型エマルション、トラフィックペイント)、逆に数量も金額も増加した塗料が3種類(エポキシ樹脂塗料、船底塗料、水性樹脂塗料)ありました。それぞれに理由がありそうですが、推測の域をでませんのでここでは触れません。
上表の数量と金額のa/b%を散布図にしてみました。赤線がそれぞれプラスとマイナスの境界線です。
横軸が金額、縦軸が数量です。右上が金額数量とも増加、左下が金額数量とも減少です。まず目につくのは船底塗料の金額上昇が突出していることです。銅地金の高騰が要因と思われます。残りの塗料は点線で囲った範囲にあるのですが、この楕円形の右側が比較的単価の上昇が大きかったものになり、シンナー、アルキド錆止め、エポキシ樹脂塗料、水性樹脂塗料になどがこれにあたります。金額が減少した3種類はいずれ数量の減少も大きいことが改めてわかります。全般にアルキド関係、ラッカーなどは振るわないという印象を受けます。
最後に単価についても同様に散布図にしてみました。例月は12種類しかご紹介していませんが、今回は20種類全てをプロットしています。横軸が2021年1月から2024年6月までの単価上昇金額(円/Kg)、縦軸が2024年6月時点の単価指数(2021年1月=100)です。
シンナー、船底塗料、トラフィックペイントは、集団から外れた形になりました。それら以外は、上昇金額で言えば、40~170円/Kg、指数で言えば110~130の範囲に収まります。金額が減少した3種類については、トラフィックペイントと厚膜エマルションは、単価指数が低く抑制されているのに対し、不飽和ポリエステルは単価指数が高くなっています。前者は需要停滞から価格改定が難しく、後者は価格上昇が需要の停滞を招いているとも考えられます。
おそらく実際の商売に携わっておられる方であれば、もっといろいろな考察ができるのではないかと思います。ここまで見たきたように、全体として数量減の金額増です。今年に入り金額の増加も頭打ち傾向が見られますので、数量の回復は依然として重要な課題に留まり続けると思われます。