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かんとこうブログ

2024.09.24

塗料事業所数が最も多い都道府県別は?

2019年まで実施されていた「工業統計表調査」に代わり、2020年に実施した5年に一度の「経済センサス調査」をはさんで、2021年からは「経済構造実態調査」が実施されています。2022年の調査結果が2024年の4月26日と7月26日に発表されていました。この調査では、製品分類別のさまざまな調査の他に都道府県別の事業者数や出荷金額などが調査されています。今日は2022年における都道府県別事業所数、従業員数、出荷金額などをご紹介したいと思います。

事業所が最も多い都道府県は大阪府でした。え?埼玉県ではないのかと思ったかたも多いかと思いますが、実はこれが統計の恐ろしさで、冒頭書いたように一昨年まで本ブログで紹介してきたのは主に「工業統計表」でしたが、この統計は2019年対象の調査が最後で、2020年は5年に一度の「経済センサス調査」、そして2021年からは「経済構造実態調査」に代わりました。ここで示されているのも工業統計表の「4人以上の事業所」から「ひとり以上の事業所」に変わりました。それで埼玉から大阪へと首位が交代したという事情があります。

さらに、2022年の前年である2021年(今回ご紹介するデータの前年)の主要都道府県の事業所数と従業者数は以下のようになっていました。

事業者数は2022年と変わっていませんが、人数はかなり変動があります。この理由はわかりません。いずれにしても、埼玉、大阪のほかに兵庫県、愛知県、千葉県、神奈川県、東京都など上位にならぶ都道府県はこれまでと概ね変わっていません。

事業所数全体と従業員数全体の推移を下図に示します。紺色の線は2019年までの「工業統計表」と2020年の「経済センサス」の数値であり、赤色の線の2020年は「経済センサス」、2021と2022年は「経済構造実態調査」の数値です。

統計間に差異が生じるのは致し方ありませんが、以下のことがわかります。①工業統計表で調査されていなかった1~3人の事業所数は、2020年度の結果から66程度と推定できる。②事業所数は2017年が底と推定され、減少に歯止めがかかっている。③従業員数についても最低であった2012~2013年よりも増加傾向にあると推定される。従業員数についてはコロナで少し減少したようですが、それ以降はなんとか持ちこたえていると思われます。

一方、製品の出荷金額は以下のようになっています。下上図の2022年と下図の2021年のデータとともにご覧ください。単位は2022年が億円、2021年が百万円です。かなり差異がありますが、そもそも全体の金額が大きく異なっており、統計の対象が同じでない可能性もあるのではないかと思っています。具体的には、全体の合計数量が違いすぎるので、2021年は塗料製造業者(細分類1644)のみが対象だが、2022年はそれ以外の塗料を製造する事業所の数値も含まれているのではないかと考えています。

日本全体についての製品出荷金額については経産省確報「生産動態統計調査」で毎月報告していますので、過去からの推移はそちらをご参照ください。一貫性があるデータになっています。因みにこの経産省確報「生産動態統計調査」の金額は、「経済構造実態調査」よりも随分と小さな金額になっています。

この「経済構造実態調査」では、さまざまな指標が得られます。全体の人件費、製品出荷金額、付加価値金額などですが、それを一人当たりに換算すると大変興味深いデータになります。ひとりあたり人件費によって給与水準が、ひとりあたり製品出荷金額とひとりあたり付加価値金額によって生産性が推測できます。以下に各業界(大分類)および化学業界(細分類)のひとりあたり数値をご紹介します。塗料業界がどこに位置しているか注目してご覧ください。

最初はひとりあたり人件費です。

製造業全体のひとりあたり人件費の平均は477万円です。化学業界平均はそれよりもかなり高く570万円です。さらに塗料業界平均は592万円と化学業界平均を上回っています。(これはあくまで人件費であり給与支給額ではありません)

次に原価率(ただし製造に関わる人件費は除く)です。

製造業全体の平均は66%です。化学業界平均はそれよりも低い60%です。さらに塗料業界平均は59%と化学業界平均をさらに下回ります。ただし、この数値はぱっと見て低すぎると感じましたが、日塗工の「塗料製造業実態調査」の2021年のデータを見ると5%ほど低いことが確認できました。「経済構造調査」における原価は原材料費とエネルギーコストだけですので、日塗工の調査結果下図のA(50人以下)~D(300人以上)について、原材料費と燃料動力費を足すと製品金額の62~66%程度になり、「経済構造調査」を5%ほど上回ります。

続いてひとりあたり製品出荷金額です。

製造業全体の平均は4670万円です。化学業界平均はそれよりもかなり高く8670万円です。塗料業界平均は7500万円と化学業界平均を少し下回りますが、製造業全体をかなり上回っています。

ただしこの結果は、日塗工の「塗料製造業実態調査」の2022年度のデータ(下図)よりはかなり高くなっていますが、この差については理由がわかりません。

最後に付加価値金額です。

製造業全体の平均は1400万円です。化学業界平均はそれよりもかなり高く3080万円です。塗料業界平均は2770万円と化学業界平均を少し下回りますが、製造業全体の2倍以上になっています。塗料業界の付加価値金額27.7%というのは、日塗工の「塗料製造業実態調査」における粗利益率+製造の労務費の合計30~32%より若干低い値となっています。

明日は、塗料業界の規模別(従業員数別、資本金別)に今日ご紹介した数値をご紹介していきます。

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