かんとこうブログ
2024.11.08
投票率、得票率など選挙にまつわる数字の話
10月29日付の朝日新聞に、先日の衆議院選挙の選挙区ごとに投票率や政党別の得票率などがでていましたのでご紹介したいと思います。
まず都道府県別の投票率です。なんとなく都会は低くて地方は高いというイメージがありますが、今回の都道府県別を見る限りそうではありませんでした。投票率の都道府県別一覧をご覧ください。
今回の投票率は全体では53.85%(小選挙区)で戦後3番目に低い数値だったそうです。最も高かったのは山形県で唯一60%を上回りました。続いて秋田、新潟、奈良、島根、鳥取、福井、長野、岩手と続きます。やはり地方のイメージでしょうか?一方最低は広島県の48.40%でした。以下群馬、沖縄、岡山、栃木、宮崎、徳島とこれも地方のイメージです。強いて言えば「投票率の高い方は北が多く、低い方は南が多い」でしょうか?そして都会はと言えば東京は11番目で高い方、大阪は29番目で下の方ということで、都会か地方かと言う問題ではないということになります。
投票率の高い低いを選挙区別に見ると下図のようになりました。
投票率60%を超えた選挙区は14ありました。岐阜4区の63.91%が最高で、愛知11区、山形2区、和歌山2区、新潟5区と続きます。一方低い方は、49%を下回った選挙区が23ありました。最低は広島6区の44.80%、続いて広島3区、岡山4区、福岡1区、宮崎3区、群馬2区、愛知5区、愛媛1区、大阪18区と続きます。
こうした選挙区には投票率が高い、あるいは低い理由があるのではないかと思い調べてみました。高い理由については、候補者が激しく競り合い白熱した選挙戦になり、関心を持つ人が増えたのではないか?と思いその選挙区の開票結果から接戦率(1位と2位の得票差)を計算してみました。残念ながら、これらの選挙区の中で接戦と言える(90%を超えた)のは、東京18区と東京19区だけでした。
この他の要因として、選挙区割の変更を考えてみました。今回は前回から約半数の小選挙区で区割りが変更されています。区割りが変わればこれまでなじみのある候補者が他の選挙区へ行ってしまい興味を失うというようなことがあるのではないかと思ったのです。上に二つのグラフで中心が赤い縦棒の選挙区は、前回から区割りが変更になった選挙区です。投票率が低い選挙区では、区割り変更になった選挙区が多いように思えますが、果たして統計的に有意となるかは疑問です。結局、特定の選挙区の投票率が高い(低い)理由はよくわかりませんでした。
次の政党別の得票率の数字を見てみましょう。
左図が小選挙区の得票数と議席数、右が比例の得票数と議席数です。小選挙区では上位4党以外は5議席以下でグラフではわからない程度の議席数に留まっています。一方右図の比例では、得票数と議席数は良く対応しており、ブロックごとに比例配分する以上当然ではありますが、得票数に応じた議席になっています。全議席数は小選挙区が289議席、比例が176議席で、小選挙区:比例区=62:38の比率になります。
得票率と議席獲得率の関係を与党(自民党+公明党)と野党(それ以外)で計算すると、意外ですが小選挙区も比例もあまり差がありません。(下図)
与党と野党の対比で言えば、小選挙区も比例も与党の方が少ない得票率でより多くの議席を獲得していることになります。これは今回小選挙区では全般的に自民候補対野党候補が接戦でトップを争う構図が多く、一方的に死票が増えることが少なかったからではないかと考えています。ここ何回かの選挙のように自民圧勝であれば、野党側の死票はもっと増えていたと思われます。
小選挙区の場合がすべて候補者を立てるわけではありませんので、小選挙区の得票率の数字は政党支持とは異なることが想定されます。比例はそうした候補者による選択の制限がありませんので、実際の政党支持率に近い数字なのではないかと考えています。
そこでもう一度よく考えてみたい問題があります。今回自民党の比例における獲得票数は約1458万票でした。公明党の票が約596万票ありますので、合計すると与党支持票が約2054万票になります。一方で日本の有権者数は逆算して1億76万人程度と思われます。与党支持票は全有権者の2割に過ぎません。もちろん、選挙で正当に選ばれた結果ですので、何の問題もないのですが、本当に民意が反映された結果であるのか?と選挙のたびに思います。
投票に行かない有権者が悪いと言えばその通りですが、せめて投票率が7割くらいにする方法はないものかと考えています。