かんとこうブログ
2025.01.30
フジ・メディアホールディングスの有価証券報告書
今世間の注目を集めているフジテレビジョンならびにフジ・メディアホールディングスとは一体どういう会社なのか有価証券報告書で調べてみました。どれほどの売上があってどんなことをしている会社なのかということを中心に役員やコプライアンス関係に関して書いてあったことをご紹介したいと思います。
今年度分の有価証券報告書はまだ発行されていませんので、2024年3月期分から内容を引用します。(下記URL)
https://contents.xj-storage.jp/xcontents/46760/944d58bf/ad7c/411b/a4dd/ba7c35c8a6c5/S100TQX0.pdf
まず㈱フジ・メディアホールディングスと㈱フジテレビジョンの関係ですが、これは親会社、子会社の関係で、㈱フジテレビション(以下フジテレビ)は㈱フジ・メディアホールディングス(以下ホールディングス)の子会社になります。ホールディングスはメディアコンテンツ事業と都市開発・観光事業の二つのセグメントを有し、フジテレビはメディアコンテンツ事業に属し、2024年度においてメディアコンテンツ事業の売上の6割弱を稼ぐ中核事業となっています。
しかしながら他のセグメントや事業が増収増益を記録しているのに対し、フジテレビの収入、営業利益はこのところ下降していました。(下表,下図)放送収入のうち、ネットタイムは全国放送の、ローカルタイムは関東地方の放送の、スポットは文字通りスポット広告のそれぞれ収入を表しますが、放送収入はこの3年間毎年減少しています。それに伴い営業収入も大幅に減少しています。一方でコンテンツビジネス(イベントや動画配信など)は年々増加しています。
またメディアコンテンツ事業と都市開発・観光事業を比較すると後者の方が利益が大きく、売上こそ少ないもののホールディングスへの貢献と言う点では、都市開発・観光事業の方が貢献大という状況です。
つまり、フジテレビとしてみるとそれまでセグメント、グループの基幹事業であった放送収入の減少は、その背景にある視聴率低下とともに、会社の経営に関わる大きな問題になっていたのではないかと思われます。一方でホールディングス全体での売上、利益については、下表、下図のように増収とは言えないまでもまずまずのように見えます。このことから、フジテレビの放送事業はグループ内での地位が地盤沈下してきているのではないかということです。
ホールディングスの他の子会社についてもう少し見てみたいと思います。ホールディングスの子会社としては以下の会社が挙げられています。
この表から、フジテレビの従業員数は全体の約1/3を占めていることがわかります。この中には出向者の87名は含まれていないそうなので、実際にはもう少し多い人数がフジテレビに従事しており、フジテレビ幹部として、グループの旗頭として稼ぐ力が低下していることに対し。何とかしなければならないという意識が働いていたのではないかと想像しています。
もう少し枠を広げてフジ・サンケイグループ全体を見ても、こうした事情は変わりません。下図はフジ・サンケイグループの構成です。このうち青色で囲った部分は親会社子会社の関係ではないようですが、ここまで広げてみてもフジテレビに比肩するべき存在は㈱産経新聞社しかなく、新聞ばなれが顕著な中で新聞社に対して利益による貢献を期待するのは難しく、一層フジテレビの奮起が期待されるということになるのではないでしょうか?
次にホールディングスの役員構成を見てみたいと思います。この役員表を見ていろいろな意味で驚きました。
驚きの一つ目は、何と言ってもホールディングスとフジテレビの兼任役員の多さです。右から二つ目の欄の赤字が現在でのフジテレビの役職を示していますが、ホールディングス役員17人中14名がフジテレビの役員でした。逆にフジテレビ以外の子会社からは誰も役員になっていません。ホールディング傘下には多くの子会社がありながら、フジテレビ出身者と社外取締役だけの役員構成で経営がうまくできるのか心配になります。
二つ目の驚きは平均年齢です。この点については海外株主から改善要求を受けたためマスコミでも報道されていますが、単純に計算しても72歳になります。最高齢は89歳です。経験がすべてに優越するとも思えない時代の中でのこの年齢には驚きました。監査等委員(監査役)の平均年齢は80.6歳になります。
三つ目はフジテレビ役員在位期間10年以上の方が8人もいることでした。これも通常の会社に比べて多いのではないかと思います。同じ人がずっと長く役員をやっているということになります。一方、フジテレビの役員は、1月28日までの構成では24名とホールディングよりも7名多く、ホールディング役員を兼任している人が14人、兼任していない人が10人いましたが、経歴や年齢はわかりません。
4つ目は社外取締役7名のうち3名が大株主またはグループ会社出身者であることです。監査等委員についてはさすがにそうした関係のない人たちで構成されていますが、取締役のうち3人は大株主である東宝と文化放送の社長経験者、同じグループの産経新聞の会長経験者でした。東宝と文化放送は下図のようにホールディングスの大株主です。法律的には問題ないのでしょうが、外から見た時にどう見えるのでしょうか?
最後に社内のコンプライアンスに関する記述をご紹介して終わりにしたいと思います。
このように規定を作っても、実践されなければ何の意味がないわけで、コンプライアンス対策室長が初めて知ったのが、昨年12月の週刊誌報道からであったというのでは話になりません。人皆挙って他山の石とすべきかと思います。