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かんとこうブログ

2025.04.25

VOC報告書に思うこと その1

日塗工から2024年度のVOC報告書が発行されています。実際には2023年度の塗料から発散するであろうVOCの量に関しての統計資料で、非常に細かく分野別、塗料種別、VOC種類別の数値が掲載されています。そもそもこの冊子が発行されていることの理由の一つは、日本国内で揮散されるVOC全体の約4割が塗料を塗装する際に揮散するものであり、発生源別では統計を取り始めて以来ずっと首位を独走していることです。

今回の報告書では少し気になることがありましたので、それをご紹介していきたいと思います。気になることとは塗料単位重量あたりのVOC発生量がわずかではありますが、増加に転じていることです。以下順を追って説明していきたいと思います。

この報告書で使用されているデータは、毎年行われている「塗料製造業実態調査」から抽出されています。毎年100社近くの塗料メーカーが参加していますので、経産省の「生産動態統計調査(確報)」には及ばぬながら、業界のほとんどを網羅していると考えてよいと思います。VOC報告書には膨大なデータが掲載されていますので、ここでは需要分野別の塗料出荷数量、推定VOC発生量、そして推定VOC発生率(塗料単位あたりVOC発生量)の順にみていくことにします。

2017年度以降の需要分野別塗料出荷数量の推移です。多い順に並べていますが、全体的に減少傾向にあります。コロナ禍を挟んでいますがアフターコロナになっても減少傾向は止まりません。上段と下段、さらに下段の左3つと右のグラフでは縦軸が異なりますが、おおよその量的のイメージが一瞥でわかるようにグラフを描いてあります。

次に需要分野別の推定VOC発生量です。大体は塗料出荷数量の順に並んでいますが、必ずしも同じ順番ではありません。これは単位重量あたりの含有VOC量が塗料の種類ごとに異なるためです。

ひとつずつ塗料出荷数量と推定VOC発生量を見比べると、単純に連動しているものもあり、そうでないものもあることがわかります。例えば自動車はほぼ平行移動のようですが、建物はグラフの形が違います。形が違うということは、使用される塗料の内訳が変化している可能性を示唆しています。

塗料出荷数量と推定VOC発生量のグラフの形が異なる需要分野は、建物のほかに船舶、建築資材、路面標示、その他塗料、家庭用、路面標示などです。これは後で需要分野ごとにその理由を考察します。

次に需要分野別推定VOC発生率(塗料単位あたりVOC発生量)を示します。これは推定VOC発生量を塗料出荷数量で割ったもので、単位重量あたり塗料からのVOC発生量を表しています。このグラフは報告書には掲載されていません。

この需要分野別推定VOC発生率は、言い換えると塗料1Kgを塗装する際にどのくらいVOCが発生するかを表しています。単なる需要別VOC発生量とは全く異なる順番でならんでおり、傾向として工業用が上位に並んでいます。

先ほどのVOC発生量が全体的に減少傾向であったのに対し、このVOC発生率では残念ながらこの7年では全体として微増傾向にあります。つまり単位重量あたりの塗料から発生するVOCは減っていないということになるのです。

図中の一次回帰式が赤字であるところは、傾きがプラス、すなわち増加している分野です。需要分野別では、その他塗料、自動車新車、建築資材、建物がそれにあたります。先ほどの塗料出荷数量と推定VOC発生量のグラフの形が異なる需要分野とともに、使用される塗料がどのように変化してきたかを明日以降にご紹介したいと思います。

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