かんとこうブログ
2025.04.30
VOC報告書に思うこと その3
今日は残りの需要分野における塗料種量の推移を見ていきたいと思います。最初は機械用塗料です。
機械用塗料の中では錆止め塗料が面白い動きになっています。錆止めハイソリッドが減少し普通の錆止め塗料が増加しています。同じグラフの中でエポキシ樹脂塗料とエポキシ樹脂ハイソリッドの関係は錆止め塗料とは異なっています。全体的には錆止めと錆止めハイソリッド以外に大きな順位の変動はありません。次は電気機械です。
電気機械の全体のVOCは減少一途ですが、塗料の方はさまざまです。V字
がアミノアルキド樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、アクリル樹脂塗料(焼付)、L字型がウレタン樹脂塗料、その他塗料、上昇一途がシリコン・ふっ素塗料、水性樹脂塗料、エマルション塗料で、量はすくないものの水性樹脂とエマルションの量は増加傾向にあります。続いて自動車補修です。
自動車補修は交通事故の減少で塗料の出荷量が減少傾向です。使用されている塗料もほぼ同じペースで減少しています。残念ながらエマルション、水性樹脂塗料も同様です。続いてその他塗料です。
その他塗料は、規定されているどこの需要分野にも属さない塗料の集まりですので、全体のVOCが大変特異的な形になっています。主要な塗料種の排出VOCも大きく変化していますが、全体VOCとの因果関係を説明するのは難しいようです。次は家庭用です。
家庭用塗料のVOCもほぼ減少一途です。アクリル樹脂塗料(常乾)とアルキド調合の大幅減少と多くの塗料での減少によるところと推測されます。全塗料種の中で最も溶剤含有量の高いラッカーが増えているのは少し残念です。最後は木工製品用塗料です。
木工製品用塗料は、20年30年と言った中長期スパンで見た時に最も出荷数量が減少している需要分野です。塗料種で見ても不飽和ポリエステルを除きすべて減少傾向にありますが、水性樹脂とエマルションの使用料は極めて少ない状況です。
以上各需要分野を見てきましたが、需要分野別のVOC発生量を説明できるような塗料種別使用量の変化はあまり認められない場合が多く、少なくとも環境に配慮したVOC低減型塗料の意図的増加が確認できるまでには至っていないことが判りました。
このVOCについて塗料業界が考えなければならない問題はこの3回シリーズの初回にご紹介した全体の塗料単位重量あたりのVOC発生量が減少せずにむしろ微増になっていることです。この事実は否定できません。理由はどうあれ、塗料業界はVOC削減に後ろ向きな業界ととらえられても仕方ない状況と言わざるを得ません。このところ全体の出荷量が減少しているので、発生VOCそのものも減少しているため、世間から気づかれずにいますが、いつまでもこうした状態を続けるわけにはいかないのではないかと強く思います。