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かんとこうブログ

2025.05.23

経常収支を黒字化させている第1次所得収支における特異的な2か国

5月12日に財務省から令和6年度の経常収支速報が出されました。結果は大きく報道されていますので、ご覧になった方々もいらっしゃると思いますが、経常収支としては30兆3771億円の大幅な黒字となりましたが、一方で実際のものやサービスの取引の収支である「貿易・サービス収支」は、輸入超過で赤字となりました。今日はこの経常収支で黒字をもたらした第1次所得収支についてご紹介したいと思います。

令和6年度の経常収支とその項目の内訳について下図をご覧ください。左の表は財務省の発表資料のコピー、右側は「ファンダナビ」サイトからの引用です。(字が小さくて恐縮です。)

経常収支において、金融以外のものの取引の収支である「貿易収支」も、サービスの取引である「サービス収支」も、国際援助などの「第2次所得収支」もすべて赤字ですが、唯一黒字の第1次所得収支の41兆円もの大きな黒字のおかげで日本の経常収は黒字になっているわけです。「第1次所得収支」とは海外子会社などの投資先からの配当金や利子であると説明されています。つまりものやサービスのやり取りでは赤字だけれど、これまで投資してきた先からの配当や利子などで大幅黒字になっているということなのです。この第1次所得収支の詳しい中身については後で解析するとして、これまでの経常収支の推移を財務省の資料から引用して示します。

黒線の折れ線グラフが経常収支の推移を示しています、これまで日本はこの30年ほどずっと経常収支黒字をキープしてきましたが、その中身はずいぶんと変わってきています。2000年代までの経常収支の黒字はその中身の主体が貿易収支でした。ところが2010年以降は貿易収支の黒字が大幅に縮小する一方で、第1次所得収支が拡大して経常収支の黒字を支えるようになりました。ここ数年を見ても第1次所得収支の増加は勢いを増しています。

さて、こうした第1次所得収支の国別割合はどうなっているのでしょうか?日本の主要貿易相手国であるアメリカや中国なのでしょうか?これも財務省の資料から引用して示します。まず世界の地域別から見ていきたいと思います。

地域別の順位はこの10年間ほとんど変わっていません。金額の大きな順にアメリカ、アジア、欧州、中南米、オーストラリア、中東、アフリカの順です。ここまでは予想通りかもしれません。ここからさらに国別に見ていきます。最初はアジアからです。

ここでも予想通り中国がトップを独走しています。しかし、最近ではタイとシンガポールも増加の速度が大きくなってきています。4番手がインドネシアとインド、6番手が韓国といったところでしょうか?次に南北アメリカとオーストラリアを見てみましょう。

ここではアメリカがダントツです。しかし、2024年の2番はケイマン諸島です。タックスヘブンとして有名な国ですが、ここから日本が多額の第1次所得を得ているというのは知りませんでした。どのような会社があるのか興味がありますが、簡単にネットで見た程度ではわかりませんでした。続いて欧州です。

欧州ではアメリカや中国に匹敵するような国はありません。最も多額の収支を得ているオランダでもケイマン諸島はもちろん、オーストラリアにも及びません。やはり日本の投資先としては優先順位が低いようです。なぜオランダが欧州で一番多額なのかについてもわかりませんが、地理的にみればオランダは欧州の中核的位置にあります。英語も問題なく通じる国であります。イギリスはEU離脱以降額が減少しており、イギリスからオランダへ変更された投資先や子会社もあるのではないかと思われます。

しかし欧州での注目はスイスです。一覧表に記載した国の中で唯一第1次所得収支がマイナスの国です。これはスイスの日本における投資先からの金額が、日本のスイスにおける投資先からの金額よりも大きいことを意味します。スイス以外にこうした国はありません。スイスと言えば銀行ですが、精密機械などの産業もあり、日本でどのような投資先があるのかは私にはわかりません。

ここで第1次所得収支の金額の大きい国ベスト5を挙げます。

アメリカがダントツの1位ですが、2位はケイマン諸島で3位中国を上回ります。というわけで、第1次所得収支における国別金額を調べて驚いた特異な国は、堂々2位のケイマン諸島と唯一日本側が赤字となっているスイスでした。いずれも特異である理由がわかりませんが、その理由には興味があります。

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