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かんとこうブログ

2020.06.01

界面活性剤による新型コロナウイルス感染症の不活性化について

 

先日、経済産業省とNITE独立行政法人 製品評価技術基盤機構から、「新型コロナウイルスに有効な界面活性剤を 公表します」というタイトルで発表がありました。これは家庭にある洗剤に含まれる界面活性剤を用いて、簡単に新型コロナウイルスの不活性化(いわば殺菌)ができますという内容で、有効な界面活性剤の種類とそれを含む各種家庭用洗剤の名前もあわせて公表されました。アルコールや次亜塩素酸ナトリウムと言った定番のもの以外にも、不活性化に使えるものが一挙に増えたわけで、今後の生活にとって大変有用な情報に思えました。界面活性剤の化学構造と不活性化の関係にも興味があったのでNITEの報告書を詳しく調べてみました。

 今回効果が推奨されている界面活性剤は5種類ですが、このほか2種類も一部機関で効果が認められたとして発表されました。界面活性剤による不活性化試験は、今回の有効性が認められた界面活性剤以外にも行われていますが、一定の濃度(最大0.2%)以下で短時間(5分以内)の接触で、新型コロナウイルスをほぼ完全に不活性化できるという条件で選定すると発表された5種類が有効であったとされています。

 興味深いことに、今回は、石鹸の成分である脂肪酸ナトリウムやカリウムも試験されましたが、いずれもウイルスを不活性化させることはできませんでした。手や体に付着したウイルスを洗い流すことには有効でも、石鹸の成分に接触しただけではウイルスは不活性化しないということのようです。

 不活性化に有効な5種類とは下表に示す通りですが、いずれも一般に広く使用されている界面活性剤です。特に共通する構造的な特徴は界面活性剤であるという以外には見つかりません。一般に殺菌作用があるとされている四級アンモニウム塩でなければならないということもないようです。(化学物質名のアルキル基については、比較しやすくするため炭素数12で統一してあります)

新型コロナウイルスの不活性化に有効と発表された5種類の界面活性剤

  界面活性剤の名称   代表的な化学物質名 試験結果に基づく 不活性化条件
(感染研/北里大)
直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム ドデシルベンゼンスルホン酸 ナトリウム 0.1%20秒/0.1%5分
アルキルアミンオキシド ラウリルジメチルアミン N‐オキシド 0.1%20秒/0.1%1分
アルキルグリコシド n-ドデシル-β-D-グルコシド 0.1%20秒/0.05%1分
塩化ベンザルコニウム ベンジルドデシルジメチル アンモニウムクロライド 0.05%3分/0.05%1分
ポリオキシエチレンアルキルエーテル ポリオキシエチレン ドデシルエーテル -----------/0.2%5分

試験は、国立感染症研究所と北里大学で実施され、それぞれの試験条件は異なっていますが、いずれも0.05~0.2%に希釈した界面活性剤を 新型コロナウイルスに20秒~5分間接触させて判定を行いますが、ウイルスの数が減少するだけでなく、再び感染を引き起こす力がないことを確認した場合にのみ有効としています。

 こうした結果に基づいて経済産業省とNITEが作成した5月25日付のポスター https://www.nite.go.jp/data/000109230.pdf と一覧表https://www.nite.go.jp/data/000109226.pdf については、皆さんに注意喚起をしたいことがあります。

 ポスターには後半にこんな記述があります。「住宅・家具用洗剤」が手元にない場合には、台所用洗剤を使って 代用することもできるとして、家庭にある台所洗剤を100倍に希釈して、それを布にしみこませて表面をぬぐい5分後に水拭きをするよう指示しています。ここで推奨している手順には、特に使用する台所用洗剤に条件を設けていません。 この指示の前提は、台所洗剤に使用されている界面活性剤が、前述の効果が認められた5種類のものであり、かつ濃度が一定以上(100倍希釈しても0.05-0.2%以上)であることであり、この条件が守られなければならないことはもちろんです。

 確かにポスターの前半部分には、「ご家庭にある洗剤に、どの界面活性剤が使われているか確認しましょう」と書かれているので、使用する前に界面活性剤の種類と含有量を確認するのが前提であることは自明と言えるかもしれませんが、後半だけを見た場合には誤解を生じる恐れが十分にあります。

 また、上記5種類のいずれかの界面活性剤を含む洗剤の一覧表について、自宅にあるもので確認してみたところ、実物のラベル表記とことごとく異なっていることがわかりました。たまたまですが、いずれも花王の製品でした。

商品名 一覧表中の界面活性剤名 ラベル表記の界面活性剤名
ガラスマジックリン アルキルグリコシド 0.4% アルケニル コハク酸カリウム塩
バスマジックリン ポリオキシエチレンアルキルエーテル 6% 脂肪酸アミド プロピルベタイン
トイレマジックリン消臭・洗浄スプレー アルキルグリコシド、塩化ベンザルコニウム 5% 脂肪酸アミド プロピルベタイン

 おそらく製品はいろいろな種類があるのでこういうことも起こりえるとは思いますが、化学物質の名称に詳しくない一般の方が、果たしてラベルを見て正しく判別できるのか心配になりました。

 アルコールの入手が今でも容易でない中、家庭用洗剤でウイルスの不活性化ができるということは確かに朗報ではあります。しかし、試験結果に鑑みれば、界面活性剤ならなんでも新型コロナウイルスを不活性化できるわけではないので、くれぐれもラベルを見て、界面活性剤の量と濃度を確認して、有効とされる条件を守って使用するよう注意していただきたいと思います。

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