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かんとこうブログ

2020.07.14

空の青、海のあを その1

 

このタイトルを見て、若山牧水と思った方は相当の文学通だと思います。若山牧水は有名な明治の歌人で、その代表作のひとつである「白鳥(しらとり)は 哀しからずや 空の青 海のあをにも 染まずただよふ」は、明治41年(1908)発行の歌集『海の声』に収められたものであり、中学校の教科書にも収録されています。今日から3日間はこの歌に詠われている「空の青、海のあを」について、この「青」と「あを」は違うのか?そしてなぜ両方とも青く見えるのか?について書きます。 

空の青 海のあを  腰越漁港から江の島。富士山を望む 2018年1月6日撮影

この歌を読むと、白い鳥が悠然と海原を飛翔する様子が瞼に浮かんできます。青い空と海のいずれからも哀しいほど相いれない姿で孤高に飛ぶ白鳥の姿を思い浮かべて、感極まった記憶があります。この素晴らしい歌についての私の長年の疑問は、実は「空の青海のあをがどう違うのか?」ということでした。疑問に思いつつも調べもせずにいたのですが、今回調べてみると意外にも、「あをについては、重複をさけるために漢字ではなくひらがなを用いたもの」と解説されていました。何たる大雑把さ!歌人たるものその繊細な観察眼で、空の青と海の青を描き分けたのだとばかり思っていたのでしたが・・・ まあ、歌としては空と海のそれぞれの色合いに特別な意味を持たせたわけではないということなのでしょう。

しかし、気を取り直して、古語辞典で「あを」を調べてみると、「①青い色。本来は、白と黒の間の広い範囲の色で、主として青・緑・藍(あい)をさす ②馬の毛色の名。全体に青みがかった黒色。また、その毛色の馬 」とありました。そんなものなのです。②はともかく、①によれば、昔は白と黒の間はすべて「あを」と呼んだのだそうです。

しかし、これに関して興味深い資料があります。大日精化株式会社のサイトに色の名前がどのように生まれてきたかということが書かれています。それによると、文化人類学者のブレント・バーリンと言語学者のポール・ケイは、日本語を含む98の言語について調べて、ある基準を満たす基本色彩語という11の色を表わす言葉(白、黒、緑、黄、青、茶、紫、桃色、橙、灰色)とその発生の過程を表わしました。下の図をみてください。色彩語が生まれてきた過程が書かれています。

青はというと、この図では緑よりも後に生まれていますが、日本では、青は緑よりも先に生まれ、若葉を青葉というように木々の緑を表わすにも青を用いていたようです。いずれにしても、明暗を表わす「白」と「黒」が生まれ、有彩色の代表として「赤」が生まれ、その後次第に分化して、様々な色彩語が生まれてきたということに関しては世界共通のようです。

11の基本色彩語とその進化の過程 大日精化株式会社のホームページより引用

https://www.daicolor.co.jp/rd/color/directory/index.html

若山牧水の時代に、おそらくこうした色彩語はすでに日本語の中で確立した地位を占めていたものと思われますが、ここまでくればやはり職業柄、空と海はなぜ青いか(青く見えるのか)を説明しなければなりません。これもすでにいろいろなところに書かれていますので、なるべく間違いなさそうなところの情報を整理してみることにしました。

空と海がなぜ青く見えるのかは、実は異なる理由によるものですが、それらを正しく理解してもらうための前提が必要なので、それを先に書きます。それは人間がどのようにして色を認識しているかということです。

ここでも、コニカミノルタのサイトから図をお借りすることにします。この「色々雑学」というサイトは、「人間に色が見える」ということについて、わかりやすく説明してくれています。 昔学校でやったプリズムの実験を思い出してください。光をプリズムに通すことでさまざまな色が現れることから、太陽光にはいろいろな色の光が含まれていると習ったはずです。人間の目で色として認識できる光は、その波長が380~780nmのものに限られ、それらは「可視光線」と呼ばれます。太陽光には「可視光線」以外に「紫外線」や「赤外線」なども含まれていますが、ここでは「可視光線」に限定して話を進めます。


人間は、特定の波長を色として感じることができます。
コニカミノルタ株式会社 色々雑学 色の見え方と表現方法 より引用

https://www.konicaminolta.jp/instruments/knowledge/color/section1/02.html

太陽光が物体にあたると、物体の性質によって、波長ごとに吸収されたり、反射されたりします。すべての波長の光が吸収されてしまうと、その物体は黒く見えます。すべての波長の光が反射されてしまうとその物体は白く見えます。それ以外の色の物体は、「可視光線」を部分的に吸収したり反射したりしているのです。そして、我々が色を認識するということは、物体にあたった光のうち、反射している光を認識しているということになります。これは太陽光に限らず、光源の光でも同じことです。例えば、太陽光と電球では、含まれている光の成分(波長ごとの分布)が異なります。光の成分が異なると、吸収される光、反射される光も異なりますので、同じものを見ているのに色が違うことになります。水銀灯の下ではいつもと色が違って見えることなどは、皆さんも日常経験されていることと思います。

このことを踏まえると、空にしても海にしても青く見えるということは、我々の目が空や海からくる青い光を認識しているということになります。したがって、「空の青、海のあを」の説明は、どうして空や海から青い光が発せられているのかという説明になります。

「空の青」や「海のあを」を説明する前に、紙面がつきてしまいました。申し分けありませんが、続きは明日書くことにさせてください。

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