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かんとこうブログ

2020.07.16

空の青、海のあを その3

 

さて今日は空の青です。空の青は海ほど簡単には説明できませんので少々説明が長くなりますが、お付き合いください。 


スペイン グラナダにあるアルハンブラ宮殿 アラヤネスの中庭と青い空 2019年8月20日撮影

なぜ空は青いのか?この解明には、長い年月がかかり、多くの科学者達がこの謎に挑戦しました。レオナルド・ダビンチやゲーテは、ある種の煙の中に空と同じ色が観察されることを記録に残しています。太陽の光が、空気中に含まれる塵や水滴によって反射されることが原因だと考えたようです。ニュートンも水蒸気が凝縮してできる小さな水滴による光の干渉が空の青さの原因であると考えました。

19世紀にチンダルはガラスパイプの中に、いろいろな蒸気や煙を閉じ込め、これに光をあててその散乱光を詳しく観察し、微粒子による散乱光が青いことを発見しました。さらにレイリーは、光の波長(0.4μm、1μmは1/1000mm)よりも十分小さい粒子による光の散乱について理論的な解析を行いました。そして空の青さは、空気中の塵や水滴ではなく、まさしく空気そのもの(空気を形成する窒素分子と酸素分子など)による光の散乱に由来するものであることが突き止められたのです。

レイリー散乱と呼ばれるこの理論によれば、光の波長よりも小さな粒子による光の散乱は、波長が短い青い光の方が、波長が長い赤い光よりも約10倍散乱されやすいので、空は青い散乱光によって青く見えているのです。こうした散乱については、様々な式が提唱されていますが、散乱強度に対する波長の影響は、波長の4乗に反比例するとされており、波長が半分になればなんと2の4乗である16倍も散乱されてしまうのです。

さらにミーはマクスウエルの電磁方程式を用いて、粒子の光散乱理論を完成させました。一般には光の波長と同じくらいの大きさの粒子による散乱はミー散乱と呼ばれ、ほとんど波長に依存しないためその散乱光は白く見えます。空に浮かぶ雲が白いのはこのためです。

少し難しかったかもしれませんが、こうした例は、実は身近にいくらでも経験できます。

「紫煙」 タバコや焚火の煙は光にかざしてみると青みがかって見えます。小さな粒子が光を散乱しているのです。「青い山脈」 木々の緑によって緑であるはずの山々も、遠くなるほど青く見えます。(下の写真)


伊豆大室山から北の方角を望む 中央やや左に富士山 遠方の山ほど青く見える 2019年11月24日撮影

太陽が沈む頃には、空の表情は大きく変化します。太陽が水平線近くなると、天空にある時と比較して、その光は私たちの目に届くまでに長い距離を透過してこなければなりません。するとその過程で青い光は散乱して失われてしまい、赤い光だけが届きます。太陽光は赤くなり、その光が白い雲を照らすと幻想的な夕焼けとなるのです。


左)西明石大橋に沈む夕日 右)富士山に沈みゆく夕日

空の色がさまざまな色に見える理由を理解していただけたでしょうか?

ところで、青いと言えば地球も宇宙から眺めた時に青い星であると言われています。では地球が青く見えるのはなぜでしょうか?


この写真はインターネットのフリーサイトから引用したものですが、これをじっとみてもらうと青いのは海の部分であるということがわかります。陸地は緑や茶色に見えます。これ以外に様々な宇宙からみた地球の写真を探しましたが、全体が一様に青いという写真は一枚もありませんでした。宇宙から地球が青く見えるのは、表面積の7割以上を占める海が青く見えるからなのです。

さらに付け加えれば、地球以外の惑星や衛星では、空の色は青ではありません。大気の存在しない月では空は黒いのです。下の写真は、アポロ8号の飛行士が撮影した月の空に浮かぶ地球、いわゆる「地球の出」の写真です。この写真から大気の存在しない月の空は黒く見えることがわかります。


Photograph by NASA 1968年12月24日撮影

このほか、火星では、二酸化炭素を主成分とする薄い大気が存在し、常に強風が吹いているため地表から巻き上げられる微粒子がたくさん存在しており、それら微粒子による散乱の影響で空の色がさまざまに変化するようです。有力な説としては、太陽が天空では赤またはピンク、地平線付近では青という説明が載っていましたが、そうでないとする説もありましたので、ここでは何色かは参考程度にとどめておきたいと思います。

さて、これで空の色の話は終わりますが、説明の中にでてきたレイリー散乱やミー散乱が、実は塗料の世界で見事に利用されていることをご存知でしょうか?

塗料に使用される代表的な白顔料である酸化チタンは、その粒子径が250nm付近に設定されており、ミー散乱によって究極の白さを生み出すよう設計されています。このことは以前ブログにも書きましたので、覚えていらっしゃる方もいるかもしれません。

一方、レイリー散乱を利用した色彩は自動車の外板に使用されています。1999年にトヨタVitsに採用された「ペールローズメタリックオパール」という色がそれです。高度に分散された微粒子酸化チタンを用いたこの色彩は、光環境の変化にあわせて表情が微妙に変化し、かっこよく言えば、「天然現象では何キロもの距離が必要な青空と夕焼けを、わずか15ミクロンの塗膜に閉じ込めた」色彩なのです。時代の要請にもマッチしたこの色彩は、当初の予想を上回る大ヒット色となり、1999年のオートカラーアウォードのグランプリを受賞しました。


1999年 オートカラーアウオード グランプリ受賞色
Vitsに採用された「ペールローズメタリックオパール」

今度青い空と白い雲を見上げたら、是非このことも思い出してもらえたらと思います。

空の青、海のあを の話はこれで終わります。本日の空の青の記述に関しては、元関西ペイント株式会社の中畑顕雅さんの書かれた「色のおはなし」Vol.2 「空の色とニュアンスカラー」から、多くの部分を引用させていただきました。また昨日一昨日掲載分とあわせ、資料の提供およびアドバイスをいただきました。深く感謝いたします。

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