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かんとこうブログ

2020.12.17

Go To トラベルに関する素朴な疑問

Go Toトラベルについては、これまでいろいろとデータをご紹介してきましたが、その理由は、科学的見地から見て本当はどうなのかという疑問をもったからです。塗料製造という科学の世界で仕事をしてきた人間にとって、知りたくなるのは性のようなものです。

今日書くことはこれまでとは違い、Go Toトラベルの経済効果に関する疑問です。決して政府を非難したいのではなく、経済を回すという大義名分でGo Toトラベル事業を推進したことの正当性について堂々と説明してほしいと思っているから疑問を呈するのです。

一つ目の疑問は、この事業に直接かかわる事業従事者数です。先日国交大臣はテレビ番組の出演に際し、このGo Toトラベルには900万人の雇用がかかわっていると話していました。この900万人という数字はどういう数字なのかという疑問です。下の図は、労働政策研究・研修機構のサイトから引用したもので、いわば政府の関係機関のデータです。

これによれば、宿泊業、飲食サービス業は2018年度(これが最新です)で420万人です。これに運輸業の一部なども関係するでしょうが、運輸・郵便も就労者は347万人です。小売り業の一部も食料生産者やその流通業者も関係するとは思いますが、900万人はいかにも多いように感じます。一方でエッセンシャルワーカーと言われる医療・福祉は843万人も就労しています。医療崩壊が懸念されるなかで、420万人の宿泊・飲食サービスを救うためのキャンペーンを継続することはいささかバランスを失しているような感じを受けます。900万人がどのような業種の人たちが何人いるのか説明をしていただければより国民の納得性が上がるのではと思っています。

二つ目は、なぜGo To事業はトラベルやイートが中心なのか?です。

この図は昨日掲載した内閣府の「法人企業景気予測調査」の中小企業の業種別数値です。この中で宿泊業、飲食サービス業については、確かに46月で大きく落ち込み、7-9月以降急激な回復を見せておりGo Toトラベル他のGo To事業の効果が表れているように見えます。しかし、一方で卸売業や製造業の電気機械器具製造などは、回復率がなかなか上がらずに苦しんでいる事業もあります。であればGo To電化製品も、Go Toアパレルも必要なのではないかと思われます。

公平を期するためにもう一つ別なデータを紹介します。一昨日載せた日銀短観12月のデータです。

上の法人企業景気予測調査とは違う統計ですが、確かに非製造業の中では、宿泊・飲食が大きく落ちこんでおり、それが急に上向いていることからGo To事業の効果が想像できます。が一方で上段左端の全非製造業のグラフを見る限り、そうした効果が全体に波及しているようには見えません。

ということから三番目は、観光事業の経済全体に与える影響の大きさです。

この図は2018年度の各業種が国内総生産に占める割合を示したものです。宿泊飲食サービスの占める割合は2.54%です。全体が545兆円ですから、13.6兆円にあたります。国内旅行の市場規模は24兆円と言われていますので、その差は運輸や小売りなどで埋められるのでしょうが、24兆円としてもGDPの5%弱になります。経済回復の1丁目1番地がトラベル事業であるというには少ないように思えますが、もっと大きな波及効果が期待されるのでしょうか?

Go Toトラベル事業は継続延長が決定されています。単に「経済を回す」「地方が立ち行かない」などという曖昧な言葉ではなく、具体的なメリットを数字で示した上で、継続の必要性をきちんと説明した方が国民の納得が得られるのではないでしょうか?

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