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かんとこうブログ

2021.12.27

南アフリカ国立感染研究所のオミクロン株の入院率、重症化率の詳細 データ

12月22日に南アフリカ国立感染症研究所が、「南アフリカにおけるSARS-CoV-2オミクロン変異体の臨床的重症度の早期評価」という報告書を、医学雑誌の予稿として発表しました。この内容は、「オミクロン株の入院率は、これまでの20%程度」という形で報道がされており、一方で「まだ早期のデータであり、過信するべきではない」という意見も発表されています。なにしろ判断しようにも詳細がわかりませんので報告書の原文を探したところ、見つかりましたので、今日はこの内容をご紹介します。

Early assessment of the clinical severity of the SARS-CoV-2 Omicron variant in South Africa | medRxiv

この調査の概要は以下のようになります。(この報告書では、オミクロン株とは表現せず、S遺伝子標的欠損種としていますが、以下の文章では理解してもらいやすくするためオミクロン株としています)

①2021年10月1日から11月30日の間に診断されたオミクロン株感染者と非オミクロン株感染を比較することによって入院率を評価した。また年代別や性別、基礎疾患の有無などの影響も調査した。

②2021年4月から11月にかけて診断されたデルタ株入院者と、2021年10月1日から11月30日の間に診断されたオミクロン株入院者とを比較することによって重症化率を評価した。(この評価はこの比較だけが実施された)

オミクロン株かどうかの判定はゲノム解析ではなく、TaqPath PCR検査によりS遺伝子標的欠損があるかどうかにより判別しています。このTaqPathというのは、検査試薬の商品名のようですが、詳細はわかりません。前回の11月25日の同研究所の発表において、「オミクロン株の検出は、S遺伝子の欠落という形でPCR検査を通じて可能」と報告されていますので、それを踏襲しているものと思われます。

まずは、①の調査におけるオミクロン株とそれ以外株の入院率の比較からです。


実際には10000人以上の感染者の比較ですが、オミクロン株感染者が圧倒的に多くなっています。報道されていた「入院率がこれまでよりも80%少ない」というのは、この調整後比率がそれ以外の種に比べて0.2であるというところからきています。統計上的には非常に高い確率で両者の差は優位であり、オミクロン株感染者の入院者は圧倒的に少ないという結果です。

次に、入院者のうちの重症化した人の割合です。ここでは、オミクロン株とそれ以外の種、およびオミクロン株とデルタ株の比較がされています。


オミクロン株とそれ以外の比較では、重症化率としては差があるのですが、それほど高い確率ではないという結果になりました。一方デルタ株との比較では、高い確率でデルタ株とよりも重症化率は低い(デルタ株の30%程度)という結果でした。

上で述べたように、①の調査( 2021年10月1日から11月30日の感染者) では、これ以外に要因についても調べています。残念ながらこれらはオミクロン株とその他に区分けされていませんが、この間の感染者はほとんどオミクロン株の感染者であったことを考えれば、ほぼほぼオミクロン株のデータとも考えてもよいのではないかと思います。

診断日と入院日の関係、新規感染か再感染か?、基礎疾患の有無、ワクチン接種の有無のうちで統計的に明らかに有意となったのは、基礎疾患の有無だけでした。ということは感染による抗体、ワクチンによる抗体の両方ともオミクロン感染には際立った防止効果はないということになります。しかし単に確率だけでみれば、両者とも4割減ほどの効果はあるようです。

以上が主な結果ですが、これらの結果に対しては、この論文の中でも著者自らが結果を条件付きとすべきであると述べるに至った問題点を4つほど挙げています。第1は、この調査におけるオミクロン株の標本はPCR検査におけるS遺伝子標的欠損の有無により判定されているが、ウイルス濃度が比較的高濃度でないと検出できないため、オミクロン株を過少に見積もっている可能性があること。第2には、このPCRによるS遺伝子標的欠損は、アルファ株やその他の変異株でも起こりうる可能性があり、さきほどとは逆に過多に見積もっている可能性があること。第3に調査期間が十分とは言えず、サンプル数不足、遅延重症化の可能性を否定できないこと。第4に、デルタ株との比較において、感染拡大期のオミクロン株と感染収束期のデルタ株の重症化率を比較していること など将来の継続調査において今回の結果が変化する可能性に言及しています。

しかしながら、デルタ株との比較はさておき、今回の調査期間における感染者のほとんどがオミクロン株によるものであり、アルファ株などの他の変異種の感染が認められていない以上、第1と第2の点については、あまり懸念する必要はないのではないかと思います。第3の点についても、少なくとも3週間の経過観察期間をおいていますので、感染後さらに長期の期間を経て重症化するというのも考えにくい気がします。ということで、この調査結果を「まだ査読も終えていないし、調査期間も短い」ため信じるに値しないとするのは私としては納得いきません。

このオミクロン株については、香港の大学が、ウイルスの増殖が主に気管支で起こり、肺では起こりにくいという結果を発表しており、イギリスやアメリカでも重症化は少なそうだという結果が発表されています。ここでご紹介した結果もそうした発表と方向性が同じであり、貴重な情報として扱うべきではないかと考えます。

素人が専門的な医学報告書の解説するなどすべきではないという批判は甘受するとして、この報告書の結果から、日本での対策に参考になる点を挙げるとすれば、

1. ワクチンの接種や過去の感染経験はオミクロン株の感染防止には必ずしも十分ではない。

2. オミクロン株の入院率、重症化率は、その他の種比べて低い可能性が高い、

3. ただし基礎疾患のする人の重症化率には、その他の種との差が認められない。

4.デルタ株と比べた場合、入院患者の重症化率も低い可能性が高い、

くらいのことは十分言えるのではないかと思っています。

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