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かんとこうブログ

2022.02.03

塩野義製薬のコロナ経口薬の臨床試験結結果

131日に塩野義製薬が同社の四半期報告会の中で開発中の新型コロナウイルス感染症に対する経口薬S-217622の臨床試験結果を発表しました。今日はこの結果をご紹介します。

このS-217622はファイザーが承認申請を行っている経口薬と同じ作用機序であり、3CLプロテアーゼ阻害薬になります。この塩野義製薬の作用機序の説明は、本ブログ202193日に掲載されていますし、ファイザーの開発薬ついても20211224日に掲載されていますので詳しくはそちらをご覧いただきたいと思います。

Microsoft Word – ⁄ø 1 (kantoko.com)
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この作用機序は、簡単に言えば・・・ウイルスが体内に侵入し増殖する過程で、RNA鎖のコピーとウイルスの部品を合成するのですが、ウイルスの部品は大きなタンパク質の塊として作られます。それを3CLプロテアーゼという酵素で必要な部品に切り分けて、それらを設計図通りに組み立てウイルスが出来上がります。この大きなタンパク質を切り分ける役割の3CLプロテアーゼの働きを阻害すれば部品ができず、従ってウイルスも出来上がらないというのがS-217622に期待されている効果です。この3CLプロテアーゼ阻害薬のメリットのひとつはスパイクたんぱくの変異には増殖阻止効果が影響を受けないということです。事実131日の説明資料でも、デルタ株やオミクロン株などあらゆるタイプの変異種に効果があると説明されています。(下図)

薬効の証明として、今回発表された内容では、プラセボ(偽薬)投与群と比較して、投与後のウイルス量の減少速度が大きいことが示されています。(下図)

また鼻ぬぐい液からウイルスが検出される患者の割合がプラセボ(偽薬)投与群と比較して3回投与後で63-80%減少(陽性者の割合が減少)したとしています。ニュースではこの数字が効果を示す割合として使われていました。5回投与後でも54-100%少ないという結果でした。(下図)

今後の展開については、治験を進める一方で最速での国内提供を目指すとしており、(上図)3月までに100万人分の提供体制構築を完了し、4月以降は1,000万人分以上/年の生産を行う予定としています。

 

さてこのS-217622の構造ですが、いろいろ調べても出てこないのですが、なんとWikipediaに載っていました。そう言えばメルクのモルヌピラビルの構造式もファイザーのパクスロピドメルクの構造式もWikipediaで見つかりました。Wikipedia恐るべしです。三次元モデルも載っていましたが、構造式と全く同じに見えるように回転させることはできませんでした。ご容赦ください。

塩野義製薬は、並行して国産ワクチンの開発も行っており、海外に依存してきた対コロナの医薬品供給体制に希望の光が見えてきたようにも思えます。すでに承認済のメルクのモルヌピラビル、承認が近いと言われているファイザーのパクスロピドに続く第3の経口薬として塩野義製薬のS-217622に期待したいと思います。

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