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かんとこうブログ

2022.02.04

高齢者へのブースター接種はどこまで効果が期待できるのか・・・

昨日首相官邸ホームページのコロナワクチンコーナーに117日から23日までの1週間のワクチン履歴別年代別感染者数が報告されていました。すでに今年に入って2回ほどご紹介していますが、この資料は実にいろいろなことを考えさせてくれます。今回のデータは以下のようでした。首相官邸ホームページからの引用です。

https://www.kantei.go.jp/jp/headline/kansensho/vaccine.html

この表には、年代別ワクチン履歴別10万人あたりの感染者数がまとめられており、感染者の年代別ワクチン歴別の傾向を前回と比較してみます。

左図が110-16日の1週間の感染者数、右図が117-23日の1週間の感染者数です。傾向としてはあまり変化がないように見えますが、縦軸が右は左のおおよそ2倍の数であり、大幅に感染者が増えていることがわかります。年代別では、ほぼ前回と同じ傾向なのですが、20代の割合が減少して、80台、90台の割合が増加しています。いずれの年代でもワクチン接種者の感染者が未接種者の感染者に比べて圧倒的に少ないことも変わっていません。この10万人あたりワクチン履歴別の感染者数からワクチン2回接種者における感染阻止率が計算できます。

この感染阻止率は、感染者が急増したにも拘わらず、前回とほぼ同じ数値でした。(下図)

ここで年代別の感染阻止率がかなり異なっていることについてまず考えてみます。一般に考えれば、ワクチンによる抗体の生成は若年層が多く、維持率も高いと考えられます。従って感染阻止率は若年層の方が高くても良いはずです。そうならないということは、ワクチンによる感染阻止率は、単に抗体の数できまるのではなく、行動による要因も無視できないということになります。

しかし行動だけで決まるわけではないことは、ワクチン接種者と未接種者では10万人あたりの感染者数が著しく異なることから明確であり、ワクチンによる感染防止効果は疑いもなく大きな要因です。次に2回のワクチンによる感染阻止率はこの時点でもまだかなり高い数字ですが、こうして感染者が増えてきても前回、前々回からほとんど変わらないのはなぜかを考えてみたいと思います。

例えば20台を例にとりますと、20代のワクチン接種率は79.4%です。従って未接種者は残りの20.6%となります。ワクチン接種者の感染阻止率は117-23日の期間で72.4%でした。ということはワクチンを接種したにもかかわらず感染した人の割合は79.4 X100-72.4%)で求められ、21.9%となります。この数値が未接種者の割合(20.6%)とほぼ同じであるため、感染者数の増減によって感染阻止率が変化することはないと考えられます。このように、(ワクチンをしても感染した人)と(未接種者)がほぼ等しいという関係は少なくとも30代までは成立します。それよりも上に年代の40代から70代では(未接種者)の数が(ワクチンをしても感染した人数)よりも少なくなりますが、80代と90代ではまた両者が拮抗するようになります。(下図)まとめると(ワクチン接種者の割合)と(接種者における感染阻止率が高い)ために、結果として接種者と未接種者がほぼ一定の割合で感染しているという解釈になるでしょうか?

こうした計算をしていて気になったことがあります。それが掲題の高齢者へのブースター接種にはどれだけ効果が期待できるのか?ということです。これまでの流れは

ブレークスルー感染が起きている感染防止は2回のワクチンでは不十分

オミクロンの感染者は軽症者や無症状者が多かった次第に高齢の感染者が増えてきた高齢者は感染すると重症化リスクがある

という二つの流れから「高齢者のブースター接種が急務」というような論理展開になっているのではないかと思います。しかし、123日までのデータを見る限り、8090代の2回ワクチン接種者の感染阻止率は95%程度あります(二つ上のグラフ)。65歳以上でみてもこの間阻止率は低下しておらずむしろ上昇しています。(下表、図)感染拡大により、ますます高齢者の行動自粛に拍車がかかったのでしょうか?

この先ブースター接種をしたとしても感染阻止率は最高でも100%になるだけです。おそらく100%は難しいでしょうから、どれほどの伸びしろが残されているか気になるところです。

もしそうであれば、感染する確率の高い若年層、特に今までワクチン接種の対象となっていない12歳以下の子供たちへの接種を急ぐべきではないのでしょうか? 8090代のワクチン接種者の感染阻止率は極めて高い数値であり、これは高齢者層の行動自粛が徹底していることの証ではないかと思います。となれば高齢者の感染は、高齢者の居住場所で起きている可能性が高く、同居する未接種者(幼児含む)への接種あるいは接する施設職員へのブースター接種を急ぐことの方がより効果的なのではないかと思われます。とは言え、ご紹介したデータは123日までの結果であり、すでに2週間近くの時間が経過しています。もう少しタイムリーなデータ提供ができないものか・・残念です。

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