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かんとこうブログ

2022.09.20

このままでも2050年のカーボンニュートラルは実現できる?

 先週の金曜日に関塗工の組織内を対象に、「塗料・塗装業界におけるSDGs」というタイトルでセミナーを開催し、僭越ながら講師を務めさせていただきました。その中で「2050年にカーボンニュートラルを実現すると世界に約束したが、これは並大抵のことでは実現できない」との自説を披露したのですが、そのあとでデータを見直してみると、日本の二酸化炭素排出量は、2013年をピークにこのところ連続して減少しており、このままこの傾向を延長して外挿したら2050年にはどのようになるのだろうかと気になったので計算してみました。結果は全く予想外の結果でした。今日はその結果をご紹介します。ただし、この実際にはこの結果のようになるとは全くもって思っていないことには変わりありません。

まず、日本の二酸化炭素排出量の推移について、全体と一人あたりの排出量についての推移のグラフをご覧ください。これはJCCCAのサイト(下記URL)から引用しています。

https://www.jccca.org/download/65455?p_page=3#search


このグラフを引用するにあたり勝手に加工しないこととなっているので補助線を引けませんが、日本全体の排出量、一人あたり排出量とも2013年をピークに減少に転じています。そこで2013年以降の排出量だけを抜き出してグラフ化してみました。


両者とも一次式のR2乗値が高く一次式で近似しても問題ないほど直線的に減少しています。ここでもとめた回帰式から2030年、2050年の数値を計算してみました。その結果は以下のようになりました。


このペースで減り続ければという仮定のもと、淡々と計算すると2050年には日本の二酸化炭素排出量は7300万トン、ひとりあたり排出量はわずかに0.55トン/人となりました。すなわちこのペースで減少を続ければ、2050年にカーボンニュートラルを実現するという目標はほぼ実現できてしまうという結果でした。ただし、誠に残念ではありますが、この結果を受け入れることはできません。それは以下の理由によります。

①JCCCAのサイトのデータによれば、2018年で日本の一次エネルギー構成比中にしめる石油、天然ガス、石炭の合計は88.0%にも及ぶ。すなわちほとんどが化石燃料であり、カーボンニュートラルを実現するためには、こうした化石燃料の使用をすべてやめる必要がある。

②2020年の上半期におけるIEAのデータにおいて、日本の発電にしめる化石燃料の割合は78.7%であり、大幅に前年度から減少しているが、これはコロナ禍による経済停滞のため、電力需要が減少したことの影響が大きい。

③環境庁の脱炭素ポータルの2020年度地球温暖化対策計画の進捗状況を見ても、2013年から2020年までの削減量の主体は、省エネ、省CO2が主体であり、再生可能エネルギーへの転換が顕著な進捗によるものではないと思われる。

つまり、省エネはもちろん重要ではあるが、根本の一次エネルギー源を再生エネルギーに転換できない限りカーボンニュートラルの実現は困難ではないかと懸念しています。政府としていろいろ構想を練っていることはわかりますが、それが確たるイメージとして思い描くことができません。私の理解が浅いからだと言われればそれまでですが・・

③の「2030年度目標にむけた進捗」についての資料(下図・表)を見る限り、なんとか2030年の目標である全体の排出量を7.6億トンに抑制することは可能であるように思えますが、細部にわたって仔細にみても、化石燃料から再生可能エネルギーへの転換率がいくら増えたのかが見えないところに不安を感じます。これが杞憂に過ぎなければよいと思っています。

https://ondankataisaku.env.go.jp/carbon_neutral/topics/20220812-topic-30.html


この図は2013年から2020年にかけて、活動量の増加で0.05億トン増えたものの、省エネ、省CO2等により2.6億トン、吸収量の増加(森林の成長)で0.45億トン削減できたとしています。そしてその削減の内訳を下表にまとめています。


この表では、エネルギー起源CO2の削減について、部門別への割り振りは、直接排出ではなく最終使用者別に集計していますが、部門別の具体策の進捗では直接排出者で集計しており発表内容が一貫していません。なんだか都合のよいところを張り合わせて作成した印象をうけます。

2030年度の目標は達成できそうだと聞くと安心はしますが、本当の山場はこの先にある化石燃料から再生可能エネルギーへの転換だと信じて疑いません。2030年度目標の達成も重要ですが、最終目標へのロードマップもできるだけ早い時期に明快な形で示してもらいたいと思っています。

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