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かんとこうブログ

2022.10.06

ノーベル化学賞・・受賞理由のクリックケミストリー

昨夕はノーベル化学賞の発表があり、アメリカ、スタンフォード大学のキャロリン・ベルトッツィ教授と、デンマーク、コペンハーゲン大学のモーテン・メルダル教授、アメリカ、スクリプス研究所のバリー・シャープレス教授の3人が受賞しました。残念ながら日本人の受賞はなりませんでした。この3人の受賞理由となったのが、「クリックケミストリー」と呼ばれるさまざまな分子の結合を簡便に行うことができる手法です。シートベルトを装着する際に「カチッ」と音をたてて結合部がはまりますが、この「クリックケミストリー」も同じように簡単にしかもしっかりと結合されることからこの名称がつけられたそうです。今日はこの「クリックケミストリー」についてご紹介します。ご紹介する内容はほぼ東京化成工業のサイトからの引用です。

クリックケミストリー | 東京化成工業株式会社 (tcichemicals.com)

この「クリックケミストリー」の定義としては以下のことが要求されます。

(1) 目的の生成物を高収率で与える。
(2) シンプルな構造を持つ分子同士を組み合わせる。
(3) 副生成物をほとんど生じない。
(4) 実験操作が簡便で,カラムクロマトグラフィーなどの精製操作を必要としない。
(5) 水中でも反応が進行する。

この条件、別な言葉で言いかえれば、単に収率だけでなく環境にも調和し複雑な操作も必要としないスマートな反応でなければならないということになります。

「クリックケミストリー」の代表例として挙げられているのは1961年にHuisgenによって開発された以下の反応です。アジドとアルキン(三重結合)による双極子付加環化により安定な1,2,3-トリアゾールが生じ、結び付けたい分子どうしを連結することができます。

この「クリックケミストリー」は現在幅広い用途に応用されています。その具体例を下図に示しまず。

今回受賞された3人にうちベルトッツイ教授は、上の図の3.にあたるウイルス表面の修飾を行いました。同教授の研究により、細胞表面に特殊な化合物を結合させ、細胞を光らせたり,印をつけたりすることができるようになり、がん細胞の分子の動きなどを観察することが可能となったとされます。(この部分はNHK特設サイトからの引用です。)ノーベル化学賞|ノーベル賞2022 NHK

ところでこの「クリックケミストリー」に頻出するトリアゾール骨格、塗料の世界でもさまざまなベンゾトリアゾール化合物がUV吸収剤として広く使用されていますので親近感があります。今回の受賞には直接の関係はありませんが、なんとなく親近感を覚えるのはそのせいでしょうか?

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