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かんとこうブログ

2023.01.19

アルツハイマー型認知症の治療薬「レカネマブ」について

先日新しいアルツハイマー型認知症の治療薬がエーザイにより国内での製造販売申請がなされたというニュースが報じられました。実は2021年6月にも同じようにアルツハイマー型認知症の治療薬がFDAの特認使用許可を受けて国内での製造販売申請がなされていますので、アルツハイマー型認知症治療薬としては2例目にあたりますが、これらはどのように異なっているのでしょうか?調べてみると私が知りたいと思っていたことをすべて網羅して説明しているサイト「新薬情報ライン」(下記URL)がありましたので、今日はそのサイトから引用させていただいて、この新しい薬の紹介をしたいと思います。

https://passmed.co.jp/di/archives/18333

   

アミロイドベータ(Aβ)による認知症の進行過程は以下のように説明されています。(下図参照)

ルツハイマー型認知症は、脳内の神経細胞に「アミロイドβ」や「タウ(tau)」と呼ばれる特殊なタンパク質が溜まって神経細胞が死んでしまうことによって認知障害が起こると考えられています。元々はAPP(アミロイド前駆体タンパク質)と呼ばれるタンパク室からβ/γセクレターゼ(β/γ選択酵素)によって切り出され(Aβ単体)、その後、次第に重合していって毒性の高い凝集体(Aβプロトフィブリル:Aβ繊維前駆体)を形成し、やがては老人斑となってアルツハイマー型認知症を発症します。」以上引用)

近年の報告によると、発症プロセスとしての神経毒性の本体繊維化して不溶性となったアミロイドβ凝集体ではなく、その前段階である可溶性の「Aβプロトフィブリル」ではないかと考えられています。」(以上引用)

つまり、アルツハイマー型による認知症発症において、重要な働きをしているのは不溶体となったAβそのものではなく、むしろその前駆体であり神経毒性の強い可溶性のAβプロトフィブリルではないかということです。そして、今回申請された「レカマネブ」はこのAβプロトフィブリルに直接作用し、これを脳内から排除する効果が期待できるというものです。「レカネマブ」の働き(作用機序)を下図に示します。

「レカネマブ」は、「アミロイドβを標的とする初の抗アミロイドβ抗体薬です。点滴静注によって血管内に投与された後、血液脳関門(BBB)から脳組織内に移行します(移行率は0.5%未満)。ただし、BBBを通過することによってBBBが破壊され、アミロイド関連画像異常(ARIA:Amyloid-related imaging abnormalities)を引き起こす可能性も示唆されているので注意が必要かもしれません。」(以上引用)

この薬は脳の関門である血液脳関門(BBB)を通り、脳内に入りますが、この際に血液脳関門(BBB)が破壊されARIAという異常を起こすことが懸念されると書かれています。脳内ではAβプロトフィブリルに結合し脳外への排除や進行抑制などが期待されるようです。

2021年に申請されて「アデュカマネブ」との違いについては次の図で示されています。

これは明確ですね。「アデュカマネブ」が不溶性のAβ凝集体に作用するのに対し、「レカネマブ」はAβプロトフィブリルに作用する点が本質的に異なっています。

この「レカネマブ」の臨床試験結果も紹介されていました。(下表)

この表でプラセボは比較対象となる偽薬、「レケンビ」は海外における「レカネマブ」の名称です。ここで評価項目が3つ挙げられていますが、一番上のCDR-SBとは臨床認知症評価度のことであり、認知症の進行程度を表す指標です。そしてこの試験の結果では、この進行程度の指標に関して偽薬との間に明らかな差が認められたことを示しています。

下の二つは、さきほど説明のあった血液脳関門(BBB)通過時に懸念される有害事象なのですが、やはりこちらも偽薬に比べて発生率が高いようですので、この点は注意が必要となります。

この「レカネマブ」の化学的な組成ですが、実はこれもウイキペディアに載っていました。分子量14万ほどの巨大分子で化学式は C6544H10088N1744O2032S46 となります。アミノ酸が1000以上集まった高分子体と思われます。

この「レカネマブ」は、2021年に申請された「アデュカマネブ」に比べて認可される可能性が高いそうです。申請が認可されることを期待しつつ注視していきたいと思います。

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