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かんとこうブログ

2023.03.30

2023遮熱塗料・断熱材特集・・塗料報知新聞2023年3月27日号の各社製品紹介について

塗料報知新聞2023年3月27日号には「2023年遮熱塗料・断熱材特集」が組まれており、塗料メーカー、供給者計13社の製品が紹介されています。これから暑くなり遮熱塗料(高日射反射率塗料)の需要が伸びると見込まれることから、毎年この時期に特集が組まれているのではなかったかと思います。こうした特集があるといつも気になるのは、「消費者を惑わすような表現がされていないか?」ということです。日本塗料工業会在職時代にJIS K 5603(塗膜の熱性能ー熱流計測法による日射吸収率の求め方)の制定に関わった人間の一人としては、日射反射以外の機能による遮熱効果を訴求する場合の表現方法がとても気になります。今日は13社の製品紹介の内容の中で気になった部分をご紹介し、今後の消費者に対する訴求の仕方について考えてみたいと思います。

今回製品紹介を載せているのは13社です。このうち下表のように10社の紹介内容については特に気になる表現はありませんでした。以前に比べると「断熱」を冠した商品名も少なくなっていると感じました。

上表のうち気になった記述、表現について順次説明いたします。

C社 「熱放射機能を付与」という表現自体は表現として間違いではないのですが、よほど顔料濃度が高い塗料以外は塗膜の表面が樹脂で覆われており、表面が樹脂で覆われている限りにおいて熱放射機能には大きな差がないというのが通常の高日射反射率塗料の性状と認識しています。そうではなく、特別に技術的な工夫をして放射率を高めているのであれば、それを説明してほしいと思います。紙面の制約がありますので意図的に言わなかったとは思いませんが、日射反射以外の機能を訴求する場合には消費者の納得性を高める努力をしていただけないかと思う次第です。

「断熱」を商品名に使用している場合にも同じことが言えます。「断熱」という表現が間違いであるとは申しませんが、「断熱塗料」の場合には、建築資材として用いられる「断熱材」と比較すると、その熱伝導率の小ささと施工される厚さがけた違いであり、断熱効果では著しく劣ることは明白です。中空微粒子を用い、多少厚めに塗装する程度で建築資材の断熱材の域には到底到達しません。従って「断熱塗料」という商品名を使用する場合には、消費者が誤解しないように、できるだけその断熱性能、具体的には塗膜の熱伝導率と厚さを示してほしいと思うのです。このことは、単にその会社の問題だけではなく、塗料業界全体が建築業界からどう見られているかという重要な問題でもあります。

次にJ社です。ここは非常に問題です。まず「夏の電力使用量を40%削減」というひと昔前にはやった宣伝文句をまだ懲りずに使用していることです。ある特別なケースの事例をあたかもすべてのケースに適用できるかのように訴えるのは到底感心できません。翻って冬の電気代はどうなるのかを説明しないのも片手落ちです。日本の国土の多くで高日射反射率塗料を塗装した場合に、エネルギー(消費電力)的には夏のメリットよりも冬のデメリットが上回るという試算結果が出されています。

さらに「侵入した熱は遠赤外線として放散」とありますが、これも先ほど同様、こうした効果はどの日射反射率塗料にもあります。どうも文面からは特殊セラミックを使用することで塗膜の放射率が際立って高いと主張したいようですが、塗膜の放射率は一般の塗膜でも0.9以上はありますので、どんなに放射率が高い場合でも1.0にしかならず、従って一般塗膜とさほど差がないものと考えられます。商品名の「断熱」については上で述べた通りです。

K社の「熱伝導制御」と「中空バルーン効果」も最初に指摘したことと同様です。その「熱伝導制御」のポテンシャルがどのくらいなのかを示していただけれるとよいと思います。

塗料報知新聞の3月27日号では、日塗工の高日射反射室塗料の出荷数量の推移も掲載されていますが、はっきり言ってこの数年は伸び悩みです。ここからの拡販には何が必要なのかを再考する時期にきているものと思います。消費者に誤解を与えかねない表現は厳に慎み姿勢を正して、建築、建設業界からの支援を受けられるようになることを祈ります。

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