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かんとこうブログ

2023.08.07

陸上世界選手権男子リレーのメダル可能性について

ブダペスト世界選手権の出場選手については、すでに最終のランキング順位の詳細をご紹介しました。が、思いもかけず日本陸連からの公式発表がありません。いくら何でも週明けの今日には発表があると思います。

そうした状況の中で一般の方々の関心が最も高いものの一つである男子リレーのメダル可能性についてデータをもとに私の予想をご紹介したいと思います。リレーは4X100Mと4x400Mの2種類です。それぞれ男女があり、さらに4X400Mについては男女混合がありますが、このうち出場権を獲得しているのは、男子の2種目だけとなっています。

この2種目のうち4X400Mリレーから見ていきましょう。

男子の4X400Mは昨年の世界選手権で一躍4位に入り、アジア新記録、日本新記録を樹立したことで注目されており、今回の世界選手権では昨年の入賞によって自動的に出場資格を与えられています。今年の男子400Mは大変な活況を呈しており、好記録が続出しました。最も古い日本記録のひとつである高野進選手の44秒78にこそ及びませんが、佐藤拳太郎選手の45秒00、中島佑気ジョセフ選手の45秒12、佐藤風雅選手の45秒13、岩崎立来選手の45秒19と45秒台前半の記録が続出しました。この4人の合計タイムは、昨年を1秒4ほど上回り、日本陸上史上最強のメンバーとなるであろうことは間違いありません。

しかしだからと言って簡単に昨年の4位から3位以上に上がれるかというとそうは簡単に行かないと考えています。最新のランキングで400Mにおける出場各国の上位4人の選手の記録を抜き出しで合計タイムを比較した一覧表を示します。

字が細かくて恐縮ですが、選手の名前まで入れてしまったので横に長い表になってしまいました。見てもらいたいのは右端の4人の合計タイムです。4X100Mリレーとは異なり、大きなバトンミスが起きにくい4x400Mリレーでは、メンバーの持ちタイムの合計でほぼ推測が可能です。日本は全体の5番目であり、アメリカ、ジャマイカ、南アフリカ、ボツワナが日本よりも上位にいます。昨年のオレゴンの順位は、上からアメリカ、ジャマイカ、ベルギーが金、銀、銅、ついで日本、トリニダードトバゴ、ボツワナ、フランス、チェコの順番でした。南アフリカは決勝に残れませんでした。

以上を勘案すると、アメリカとジャマイカのワン、ツーは動かないにしても、3位になれる可能性はかなりあるのではないかと思われます。しかし一方で、合計タイムで言えば8位くらいまでは僅差であるので、8位になっても不思議ではないとも思われます。

昨年は不動のエースだったウオルシュ・ジュリアン選手を第3走者に使い成功しました。ことしはそのウオルシュ選手はいませんが、全員がエースとも言えるだけの記録を出しています。穴のない布陣で臨むことができるはずです。ますは決勝に進み、その上で前半から上位でレースを進めることで活路が開かれるのではないかと思います。

次4X100メートルリレーについても同様に各国の上位4選手の有効期間内ベストタイムの一覧表を作ってみました。

実のところ、日本の上位4選手タイムの合計は出場国中で7番目になっています。ただし、この4X100Mリレーの場合には、4X400Mリレーと異なり、個々の走力以外にバトンパスと言うゴールタイムに大きな影響を与える要因がありますので、単純に4人の合計タイムできまるものではありません。直近の15年間で見ても日本は世界選手権で5回、オリンピックで3回入賞しており、そのうち世界選手権で2回、オリンピックでも2回メダルを取っています。これらの輝かしい記録を残したときも、それぞれの走者の合計タイムでは、今回を同じように決して3位以内という状況ではありませんでした。にも拘わらず個々のタイムのハンディを跳ね返すバトンパスがあったから好成績を収めることができたと考えられています。ではどのくらいバトンパスでタイムを短縮できるのでしょう。

過去の入賞したケースの各走者のベストタイム(有効期間内ベストタイムではなくその時点での生涯ベストタイム)の合計と実際のゴールタイムとの比較を下に示します。

結論は、実績としてバトンパスにより個々のタイムの合計から2秒3から2秒7は短縮できるということになります。どうしてそれほど短縮できるかというと、バトンパスにおいては、受け取る走者は受け取る以前に走り始めており、受け取った時点ですでにかなりのスピードに達していることが最も大きいと言えます。さらに受け渡しの時点で受けとる走者は渡す走者の1Mほど前にいますので、3回のバトンパスで3Mは走らずにすませらられる距離ができます。こうしたことでタイムが短縮できるのですが、今回選出されるであろうメンバーの持ちタイム(生涯ベストタイム)から計算してみました。ベストタイムの合計は39秒99と堂々の39秒台です。2秒3短縮で37秒69、2秒7短縮で37秒29になります。実はこれ大変なタイムです。

下図は、全ての世界選手権の優勝タイムを示しています。色の濃いゾーンが37秒29~37秒69の範囲を示しています。実は、最もバトンがうまくいったときの予想タイム37秒29は、過去の優勝タイムのほとんどを上回るタイムなのです。可能性としてはバトンがうまくいけば優勝も狙えるということになるのですが、実際問題としてアメリカとジャマイカについてはバトンを失敗し大きくタイムをロスすること以外にこの両国に勝つことは難しいと思います。但し、それ以外のイギリス、南アフリカ、ブラジル、カナダにはバトン次第で勝つことができると思います。

昨年の世界選手権の優勝タイムはカナダの37秒48でした。2位はアメリカの37秒55,3位イギリス37秒83,4位ジャマイカ38秒06でした。全般に低調なタイムに終わっていますので、上の日本チームの予想タイムなら優勝~銅メダルに相当ということになります。しかし一方で、日本チームは、2021年の東京オリンピック、2022年の世界選手権では、バトンが渡らず入賞を逸しています。

まだ陸連からの正式発表がありませんので誰が走るのか確定していませんが、私の予想では、坂井、柳田、小池まではこの走順で確定、サニブラウンは調子次第、もし使わない時はロンドンで好走した上山か今シーズン好調の鵜沢をアンカーに使うのではないかと思います。先月ロンドンで37秒80という今季世界最高タイムを出しましたが、この時は失敗できない一発勝負でしたので、安全第一でバトンパスを行い、受け渡しが詰まり気味でした。まだまだタイムを短縮できる可能性があります。

以上総合的に見て、現実的な予想としては、まずは決勝に残ること、残れば銅メダルは充分期待できるというところになるのではないでしょうか?

両リレーともメダルの可能性はあります。しかしそれと同じくらいの可能性で下位入賞あるいは予選敗退もあるというところが私の予想となります。

追記:本日日本陸連から正式に世界選手権代表が発表になりました。8月4日に世界陸連のランキングをもとにこちらで推測した選手達と以下の点で差異がありました。理由は陸連の代表基準において日本選手権の成績が重視されていることを考慮していなかったためなどです。お詫びして訂正いたします。なおリレーメンバーの選手については8月4日の紹介で省いておりました。

男子10000メートル 代表なし➡ 田澤簾 ランキングは34位ながら、アジア選手権の優勝が評価

男子110MH 村竹ラシッド ➡ 横地大雅 ランキング順位、標準記録の面で劣るが日本選手権の成績重視

男子4X100MR 追加招集 小池祐貴、水久保漱至

男子4X400MR 追加招集 今泉堅貴、地主直央、岩崎立来

女子100MH 福部真子 ➡ 田中佑美 ランキング順位、標準記録の面で劣るが日本選手権の成績重視

女子20KM競歩 追加派遣 柳井彩音 

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