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かんとこうブログ

2023.12.01

日本ペイントホールディングスのScope3について

先日日本ペイントホールディングスが気候変動に対する方針をホームページ上で公開しました(下記URL)。その中でScope3の数値が掲載されていましたので、これをご紹介します。まだ日本の企業でScope3を公表しているところは少なく、塗料メーカーではまだScope3を公開しているところはなかったのではないかと思います。(もし、すでに発表しているところがあれば是非教えてください)

https://www.nipponpaint-holdings.com/sustainability/environment/climatechange/#contents_01

   

Scope3の数値をご紹介する前にScope1および2の数値についてもご紹介します。Scope1が自社における化石燃料、Scope2が電力に由来するCO2発生量です。下図の左がScope1,2の排出量でグループのほとんどが対象となっています。右が再生可能電力消費量で、再生可能電力消費量が著しく増加していることが示されています。

ここで注目はScope1+Scope2の排出量のレベルです。この4年間ではおおよそ50Kg-CO2/塗料1トンという値になっており、単位をそろえると0.05Kg-CO2/塗料1Kgとなります。これが多いのか少ないのかは他社と比較しないとわかりませんが、PPGは2022年のESGレポートの中で、グループ全体で排出されるScope1+Scope2の合計は87万トン発表しています。生産数量がわかりませんので、比較できませんがScope3に比べて小さな数字であることは想像がつきます。日本ペイントホールディングスの場合もScope3に比べれば小さな数値です。

Scope3については下図が掲載されていました。さすがにグループ全体でのScope3は計算できておらず、日本とDuluxグループ(太平洋)のみについての数値となっています。この両者が全体に占める割合ですが、2023年の1-3四半期の通期売上金額から計算すると、グループ全体の36.5%にあたります。

計算されているCO2排出量の中ではCategory1が最も多く78.1%にもなっています。これはいうまでもなく塗料の原材料由来のCO2が大半を占めていると思われます。Scope3全体では約223万トンという数値でした。少し乱暴ですが、さきほとの売上比率からこの数値からグループ全体を推定してみると、約610万トンという数字がでてきます。この数値が多いのか少ないのかも気になるところですが、こちらは比較する対象があります。

弊ブログ2023年6月16日の「AkzoNobelのScope3CO2排出量」の中で以下のような記述があります。

AkzoNobelの場合Scope3全体は1320万トンであるとしています。PPGもSherwin-WilliamsもScope3を発表していませんのでAkzoNobelが唯一比較可能な対象となります。日本ペイントホールディングスとAkzoNobelは売上金額についてはそれほど変わりませんので、おそらく全体としてもさほど変わらないCO2排出量だと思っていましたがどうもそうではないようです。それではどこに大きな相違があるのでしょうか?

AkzoNobelの場合、Scope3全体の数値は開示していますが各Categoryの内訳は不明です。ですが、手掛かりとして「この数値はCategory1「購入製品やサービス」、Category10「製品の加工」、Category11「製品の使用」、ategory12「製品の廃棄」でScope3の95%になる」との記述があります。

一方で日本ペイントホールディングスのScope3の内訳を改めてみてみるとCategory11の製品の使用の数値が非常に小さいように思われます。塗料の場合に、製品の使用は通常塗装工程を指していると考えられます。この塗装工程におけるCO2排出量は、乾燥過程まで含めた塗装方法によって大きく変動します。極端な例で言えば建築用塗料などのように人間が刷毛やローラーを用いて塗装する場合には、CO2排出はほぼゼロになります。しかし、自動車用塗装に代表される工業用塗装において、大規模なスプレーブースを使用し、長い乾燥炉で乾燥(焼きつけ)させる場合には多くのCO2を排出します。今回のScope3計算では日本も対象となっていますので、相当な量の工業用塗料も対象に含まれているはずです。

一方でCategory11の製品の使用における排出量はCategory12の製品の廃棄における排出量よりも一桁小さい数値になっていますので、ここから推測すると、今回のScope3計算においては塗装におけるCO2排出は計算対象から外れているのではないかと想像しています。

とは言え、現時点でScope3を計算しそれを公開していることは大いに評価できることだと思います。上で触れたように世界の1番2番もまだScope3を公開していません。さらに付け加えるのであれば、日本ペイントホールディングスは、再生可能電力の採用についても積極的に推進しており、2050年までの目標値もしっかりと見据えた気候変動対策を実施しようとしています。それだけに、今回発表のあったScope3のCategory11の数値が気になってしまうということなのです。いずれにせよ今後も注目していきたいと思っています。

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