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かんとこうブログ

2024.01.29

短期集中連載 インドネシアという国 その3

先週の続きです。今日ご紹介する項目は下記になります。

インドネシアには赤道が通っています。世界の中でも赤道が通っている国は意外に少なく10か国しかありません。アフリカのガボン、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国、ウガンダ、ケニア、ソマリアの6か国、南アメリカのエクアドル、コロンビア、ブラジルの3か国とインドネシアです。インドネシアはアジアで唯一の赤道が通る国です。(下図)

インドネシアのどこを赤道が通っているか説明するついでに、それ以外の地理的な情報もご紹介したいと思います。その地理的情報とは、面積が192万平方Kmで日本の5倍強もあること、東西の距離が5000Kmもあり、これは赤道の1/8に相当すること、世界で2番目、3番目、4番目に大きな島があることなどです。

通常世界地図は上図のようにメルカトール図法で描かれているため、面積が正しく表示されず、赤道付近では極めて小さく、高緯度地域では極めて大きく描かれてしまいます。インドネシアの国土はすべて赤道付近にありますので、面積が過小に見えています。

面積は実際には192万平方Km、日本の5倍強もあります。上図中赤丸で囲ったのがジャカルタのあるジャワ島ですが、実はこのジャワ島の面積は日本の本州とほぼ同じなのです。世界で2番目に大きな島とはニューギニア島、世界で3番目に大きな島はスマトラ島、そして4番目に大きな島がカリマンタン島です。カリマンタン島は昔ボルネオ島と表記されていましたが、ボルネオ島はマレーシア語の呼び名であるため、インドネシアではカリマンタン島と呼ばれています。

赤道はインドネシアの島のうち、スラウエシ島、カリマンタン島、スマトラ島を通っています。このうちカリマンタン島の赤道は近くにPontianakという比較的大きな都市があり、ジャカルタからの航空便もあるので、比較的容易に行くことができます。Pontianakの市街地から車で15分ほどのところに赤道記念碑があります。(下に写真)

記念碑には最上部に大きな輪があり、この輪の位置と方向が赤道と一致しています。内部にもこの記念碑のレプリカがあり、赤道の位置が表示されています。つまり、この建物内部で赤道を跨いで立つと左足が北半球、右足が南半球という写真が撮れるのです。私も訪問の際にそうして写真を撮ったのですが、いつの間にか行方不明になってしまいお見せできません。残念ですが想像にお任せします。

ガイドさんの説明によれば、この赤道線上では、春分の日と秋分の日のそれぞれ当日を含む前後1日ずつ、合計年間の6日間、午前11時59分から午後0時1分までの3分間、全く影が消失するとのことでした。もし当地を訪問するのであればその時間を狙って写真を撮ることをお勧めします。

さてここからは駆け足で説明していきます。日本人より手先が器用なインドネシア人というと日本人の多くは、そんなことはない、日本人が世界一であると反論するかもしれません。しかし、インドネシア人も日本人に負けず劣らず手先が器用であり、かつ集中力があります。ある時オートバイのヘルメット工場を見学に行って驚きました。そこでは、紙に印刷されている非常に細かい模様をカッターナイフで切り出しヘルメットに貼り付ける作業をしていたのですが、実に細かい模様であり、1個分を切り出すのに熟練作業者でも2時間かかるそうです。その作業を朝から夕方まで昼休み以外の休憩なしに行うとのことでした。この作業を見て、今の日本人ではできないのではないかと思いました。人件費の安い(正確には安かった)インドネシアでは、手間のかかる作業を機械化せずに人力でやっていました。これを見て日本人よりも器用と書いたのですが、正しくは手作業を厭わないというべきかもしれません。

良好な対日感情・・インドネシアで日本人であることを理由に不愉快な扱いを受けることはまずありません。それでどころか、ある意味日本に対するあこがれをもっているとさえ感じました。インドネシアには日本料理屋が600軒あると言われていました。そのうち半分はなんちゃって日本料理で、外見ばかりで正式な日本料理とは似て非なるものですが、それでも在留邦人の数に比べると随分多くの店があります。私の住居に隣接するショッピングモールにも合計4軒の日本レストランがあり、そのうちの1軒は日本の有名ラーメン店でした。そこのラーメンの値段は1杯1500円ほどでインドネシアにしては随分高い値段でしたが、休日ともなると若いカップルで満席状態になっていました。つまりデートで食事をする場所として人気があるのです。有名な日本のラーメン店での食事をおしゃれであるとインドネシアの若い人が感じてくれているわけで大変嬉しく感じました。

中国人が経済の実験を握る・・これは人の口にのぼるうわさであり、目に見えるわけではありません。しかし、大きな会社組織のトップは、実は中国人というケースが非常に多いと思いました。私のいた会社も、もともと中国人経営の会社でしたので、社員にも取引先にも中国系の人が多くいました。有力中国人子弟の結婚式に参列したこともありましたが、そこに大勢の中国人が参列しており中国社会のつながりの深さと大きさに驚きました。それ以降、どこでどんなつながりがあるかわかりませんので、社内の中国系の従業員に対しても扱いには気を使いました。

完全男女同一賃金・・これも驚きました。本当に全く差はありませんでした。日本人駐在員の間では、いざというときに頼りになるのは「中国系と女性」というのが共通認識になっていました。工場の方は男女比率が著しく男性側に偏っていましたし、やはり力を要する作業への配置はされていなかったと思いますが、それ以外の職種における男女格差というのは全くないと感じました。

初等学校教育普及率・・義務教育の就学率は高く、識字率は高いと思います。しかし中等以上教育となるとの話は別でとたんに低くなるようです。企業の中には、入社後に専門的な知識を学ぶ私的教育機関を設営しているところもあり、私のいた会社でも経理の社員はそうした教育履歴を持つ人がかなりいました。

最後の断食ですが、これは是非断食を正しく理解してあげてもらいたいと思っています。断食(ラマダン)はイスラム教において最重要な行事の一つであり、断食が終わる断食あけ(ハリ・ラヤ)はまさに日本の正月にあたります。断食の意義とは「食べたくとも食べられない、飲みたくても飲めない人の気持ちを理解し、改めて平安のありがたさに感謝し、より自身を清めようとする心を養うもの」とされています。誰かの為ではなく、自分と神様との約束だからこの厳しい苦行を行っているのだと言います。インドネシアの人に「断食は大変だね」というと、必ず「これは神様との約束だから」と答えます。本当にそう考えていると思われます。

インドネシア・バリ島のデンパサルで、イスラム教のラマダン(断食月)明けの大祭「イード・アル・フィトル」の礼拝に参加した…

インドネシア・バリ島のデンパサルで、イスラム教の…:断食月ラマダン 写真特集:時事ドットコム (jiji.com)

断食の期間は30日間で、この間は日の出から日没までの時間中、一切の飲食はもちろん、喫煙も唾をのむこともしてはなりません。したがって人々は夜明け前に朝食を済ませる必要があります。次の食事は日没後になりますが、外食する人は早めにレストランで席を確保し、料理を注文し、注文した料理が机の上に並べられます。ここで人々は一心に日没を待つのですが、人々が注目するのは携帯電話やテレビです。日没の時刻(カウントダウン)はテレビやラジオ、インターネット等あらゆる情報伝達手段で伝えられます。一度レストラン街でこのタイミングに遭遇したことがありますが、静まり返ったレストラン街に時刻を伝えるカウントダウンが始まり、やがて日没が告げられると、レストランを埋め尽くした人たちが、一斉に無言で食事を始めました。その光景は神との約束を果たした人の誇りと荘厳さにあふれ感動的ですらありました。

この断食、実は塗料の商売にとってかき入れ時でもあります。断食期間中、平日の仕事をしている時間は気がまぎれますが、休日は昼間がとても長く感じるそうです。そうした時に多くの人が家の中を自分で塗装するからです。断食明けは日本の正月と同じと上述しましたが、日本でも正月前に家の中をきれいにするように、インドネシアでも家の中を塗り替える人が多いのです。塗装は断食期間中に、眠気を紛らす格好の作業になります。おかげで断食期間中とその前は塗料の売上が急増します。反面、断食明けはガタっと売上が落ちてしまいます。インドネシアの塗料商売は、毎年これを繰り返しています。書き忘れましたが、断食がいつ行われるかは、太陰暦に依っているので、毎年同じ季節ではなく、1年に約11日ずつ早い方へ移動します。2024年は3月10日過ぎに断食月が始まります。おおよそ33年ほどで元の季節に戻る計算になります。

次回はインドネシアの塗料事情をご紹介します。

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