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かんとこうブログ

2026.06.29

ステロイドについてのあれこれ その2

先週金曜日の続きです。今日は各種ステロイドの構造と効き目の強さの関係について、詳しく見ていきたいと思います。

まず、昨日ご紹介した各種ステロイドの強度に影響を与える構造的要因の一覧表を再掲します。

この表だけでは個々の構造的要因の影響が分かりにくいと思いますので、類似構造でありながら強度が異なるものを少しずつ選んで見ていくことにします。

最初は基本構造がベタメタゾンの3種類です。この3種はD環の17炭素にある二つのOHのエステル化だけが異なっています。①と②は強度がⅡ群、③が強度がⅢ群です。OHが炭素数の多いアルキル基でエステル化されているほど強度が強いとされていますので、①②と③の差はエステル化の際のアルキル基の炭素数の差である(鎖が長いほど強い)と考えられます。

次はデキサメタゾン構造の3種類です。この3種類もD環の17炭素にある二つのOHのエステル化だけが異なっています。⑦と⑧がⅢ群で、⑨はⅣ群になります。⑨はOHがいずれもエステル化されていませんので、⑦⑧よりも弱いと理解されます。また⑦と⑧の比較では、⑦はOHが一つエステル化されていませんが、その代わりにエステル化されたものは吉草酸エステルで、アルキル炭素の数が酪酸、プロピオン酸よりも長いため、⑧と同じ強度であると考えられます。

同様な例がヒドロコルチゾン構造のステロイドでも見られます。このヒドロコルチゾン構造はこれまでのベタメタゾン、デキサメタゾンとは異なり、A環の二重構造が一つしかなく、二重構造二つのものに比べて強度が弱いと言われています。また、B環の9の炭素、6の炭素ともフッ素がありませんので、さらに弱い構造と考えられますが、にも拘らずプロピオン酸エステル酪酸エステルは強度がⅡ群です。これは両方のエステル化の炭素数が比較的多いためと推定されます。D環の17炭素のOHが一つ残ったままのものはもう片方が酪酸エステルと比較的長いアルキル鎖のエステルであるにも拘らず、強度がⅣ群ですので、やはり基本構造自体の強度が弱いことがわかります。

今度はB環のフッ素の存在による差異を見てみたいと思います。構造の似たフルオシノニドとトリアムシノロンの差異を見てみます。ここでは強度がⅡ群、Ⅲ群、Ⅳ群に分かれています。⑫と⑬の違いはD環の17炭素のOHのエステル化の差異であることは今まで見てきた通りですが、⑬と⑰の差異はD環の6炭素のフッ素の有無によります。フッ素ひとつあるかないかでⅢ群とⅣ群に分かれています。

次はC環の11炭素に結合しているO酸素がOHなのかカルボニルなのかの差異です。D環の17炭素のOHのエステル化についてはむしろ⑮の方⑭よりもアルキル基の炭素数が多いのですが、C環の11炭素にOHがついているかカルボニルかでⅠ群とⅣ群という大きな差がついています。いかにこのC環の11炭素のOHがステロイド効能に重要なのかを想像できる差異だと思います。

次はD環の17炭素のOHのエステル化が全く同じ3種の比較です。構造が異なっているのは、D環の9炭素のフッ素が塩素に置き換わっているもの(⑯)、D環の16炭素のメチル基が接続している方向(⑧)です。①と⑯、①と⑧については、たったこれだけの違いで強度が変わるのかというのが正直な印象です。

ここまで色々見てきましたが、それぞれの構造的要因によって強度が変わることを理解していただいたと思います。そして構造的要因の中でもD環の17炭素のOHのエステル化が大きな影響を及ぼしていると感じていただいたかと思います。しかし最後にこのD環の17炭素のOHのエステル化では強度が説明できない例をご紹介しなくてはいけません。

④と⑤を比較してください。④はOHが一つ残ったままです。⑤はOHではなくHが結合している特殊例ですが、もう一つのOHは吉草酸エステルという最強エステルです。しかし強度は④がⅠ群、⑤がⅡ群でした。また少し構造は違いますが、⑥も二つのOHが二つともエステル化されているのにⅡ群です。どうにも④がⅠ群である理由が理解できません。

   

こうした強度については、実際は生理活性的な観察から決められているのではないかと思います。ステロイドの抗炎症作用機序については、①細胞内のグルココルチコイド需要体(GR)と結合し、GRを化成化させ細胞核内に侵入する ②核内に入ったGRは特定のDNAに結合し遺伝子の転写を開始 ③この転写において、遺伝子発現を促進、または抑制することで細胞反応をコントロールし、炎症応答の抑制、代謝プロセスの調整、免疫系の調節など、多岐にわたる生理的プロセスが制御する と説明されています。(ミネルバクリニックのサイト(下記TRL)より引用) 

https://minerva-clinic.or.jp/academic/terminololgyofmedicalgenetics/n/nuclear-receptor-subfamily-3-group-c/

WikipediaにはGRと結合したデキサメタゾンが、DNAと結合している図が載っていました。(下図)これによれば、GRと結合するのは、D環の17炭素のOH部分が復活したものであり、エステルが外れた姿に戻っていました。たんぱく質の複雑な高次構造との結合は、やはりこうした極性原子の水素結合でないと説明がつきません。

  

  

となるとエステルのアルキル差の長さによってステロイドとしての強度が異なるというのは、細胞内でGRと結合するまでの体内での安定性に関わっているのではないかと思います。ステロイドを必要としている細胞までたどり着けるかどうかという点でエステル化が貢献しているのではないかと考えました。あくまで素人の当て推量であり、間違っていればご教示いただけますと幸いです。

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