かんとこうブログ
2020.04.11
実はすごかった! 名前を呼ばれなかった治験薬
新型コロナウイルス感染症はますます拡大の一途を辿っており、本日夕方には、安倍首相から、都内の事業者に対し、出勤者を7割減にするようにとの要請が出されたとの報道がありました。不安な情報が多い中、今日は希望の星ともいえる感染症の治験薬について書きます。
3月28日の安倍首相の会見時に、4種の薬の治験が始まっているとの報告があり、ファビピラビル(商品名:アビガン)と開発中の新薬レムデシベルの名前があげられました。また字幕ではナファモスタット(商品名フサン)が表示されていましたが、残りの一つは情報がなく、喘息薬のシレクソニド(商品名:オルベスコ、以下オルベスコ)か「ロビナピル・リトナピル(商品名カレトラ)ではないかと書きました。これらの中で、名前を呼んでもらえなかったオルベスコですが、実は見事な治療効果をあげていたようです。
文藝春秋五月号に掲載された、神奈川県立足柄上病院の医師 岩渕敬介氏の記事の中で、「同病院に入院したダイヤモンド・プリンセス号の重症者を含む感染者6名に、オルベスコを使用したところ、いずれも退院か回復傾向に向かわせることができた。」と紹介されています。
このオルベスコは、喘息薬で2007年から発売されています。喘息の炎症や痛みは、リン脂質から遊離されるアラキドン酸によって引き起こされますが、この過程は、酵素ホスホリパーゼA2の働きによって行われます。オルベスコはこの酵素ホスホリパーゼA2の阻害物質を誘導することで、炎症や痛みを和らげるといわれています。
もちろん、オルベスコの新型コロナウイルス感染症に対する作用機序は現時点では不明ですが、中国でも治療に効果があったと報告されていますし、副作用が少ないことでも定評があります。また、すでに市販されている薬ですので、「医薬品の適応外使用」にあたり、病院の倫理委員会の承認があれば、今すぐにでも使用できる薬であるというのも有用性の高い点です。
安倍首相に名前を呼んでもらえなかったオルベスコです