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かんとこうブログ

2020.05.01

スウエーデンの集団免疫獲得作戦

ヨーロッパの新型コロナウイルス感染症もようやくピークを越えつつあるような印象を受けますが、そうしたヨーロッパの中で、スウエーデンだけが、他の国のように厳しい外出制限をせずに、独自路線で新型コロナウイルスと対峙しています。4月末には、疫学者から国民のほぼ28%が免疫を獲得したとの発言もあり、集団免疫獲得への自信を深めているという報道がありました。これはいったいどういうことなのでしょうか?今日はスウエーデンの集団免疫獲得作戦について書きます。

「集団免疫」ということばは最初、ドイツのメルケル首相から発せられたと記憶しています。「最終的に国民の60-70%が免疫をもつようにならないとこの感染症は終息しない」との発言でした。しかし、当初集団免疫獲得を目指すかと思われたドイツやイギリスは、途中で方針転換し厳しいロックダウンを実施することで、この感染症を抑え込もうとしています。スウエーデンだけが未だに、集団免疫獲得作戦を継続しているというわけです。

そもそも「国民の60-70%が感染しないと終息しない」とはどういうことなのでしょうか? 「感染が拡大しなくなるためには、国民の何%に免疫ができることは必要か」ということは次の式から計算されます。(1-1/R0*100(%)です。ここで、R0は「実効再生産数」で、一人の患者が何人の患者を再生産するか(つまり感染させるか)という数値で、実際の感染状況から計算されます。このR01以下であれば感染は広がりません。R0が1の時、一人の感染者が一人の感染者を再生産するだけだからです。またおそろしく感染力強く、R010であれば、全体の90%が免疫を持つまで感染は拡大し続けます。

ヨーロッパではこの新型コロナウイルスのR02.5であると言われています。このR0=2.5を先ほどの式に当てはめると(1-1/2.5*10060となります。つまり国民の60%が感染すればそれ以上感染は広がらなくなります。これは、感染者が2.5人ずつ感染者を再生産していったとしても、そのうちの60%はすでに免疫を持っている人なので感染しないと考えられるからです。そうなると残りの40%の人、すなわち一人だけが新たな感染者となるので、もう感染は拡大しなくなるということになります。

でも、本当にそのようになるのでしょうか?この論理は、「一度感染すると免疫ができて再感染しない」ということが前提になっています。しかし、「感染者でも十分な量の抗体がつくられない場合がある」とか、「一度陰性になっても再陽性化した」とかということが報じられています。まだ新型コロナウイルスについては、わからないことも多く、こうした集団感染の考え方がそのまま適用できるかどうかわからない可能性も十分にあります。

このスウエーデンのやり方には、「とんでもないギャンブル」という批判も出ていますが、今のところ方針は揺るがないようです。「市中感染がひろがり免疫獲得者が増えており、今月中にも集団免疫が獲得できそう」との声明も出されているようですが、その根拠となっているのは、医療従事者に対する抗体検査の結果のようですが詳しい情報は不明です。

でも待って下さい。アメリカのジョンズ・ホプキンス大学の集計によれば、スウエーデンの感染者は今日現在で21,092名です。スウエーデンの人口は997万人ですから、感染率は0.2%ほどになります。一方で、疫学者は28%が免疫獲得と者がいると言っており、この差は100倍以上もあります。仮にこれらすべて正しいとすれば、夥しい数の無症状感染者がいることになり、上述のR02.5どころではなく、一桁は大きな数字になるのでないでしょうか?仮にR025だとすれば、国民の96%が免疫を獲得するまで感染は拡大することになります。

また、スウエーデンのこうした集団免疫獲得作戦の続行については、例えば私権に制限を加えることをよしとしない国民性が背景にあるのかもしれず、医学的な側面以外の要因も考えられます。いずれにしても大変興味深いことであり、今後も注視していきたいと思います。

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