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かんとこうブログ

2020.05.14

コロナショックの経済影響 リーマンショックの塗料分野別影響

 

昨日、今日はバブル期の塗料需要動向について紹介すると書きましたが、もっと面白いデータが見つかったので、こちらを先に書きます。(一社)日本塗料工業会から、リーマンショック前後における分野別売上金額(前月比、前年度同月比)のデータを提供していただきました。いただいた業況観測アンケートのデータでは、①建築外装、②自動車、③船舶・構造、④電機・機械・金属、⑤木工の5分野について、前月の実績と当月の予想を集計し、加重平均が報告されています。この分野別変動は、実に驚きの内容でした。

 まずは、リーマンショック前後における各分野の前年同月比の推移です。

リーマンショック前後の分野別前年同月比の推移

 一番下の段の右側が全体の売上金額の同年前月比のデータで、昨日もご紹介したように2009年に大きく落ちこみ、2010年には回復したように見えるが実は2009年に落ち込みを挽回できていないというデータです。ところがこうした推移は、分野ごとに大きく異なっていました。自動車や電機・機械・金属の変動が全体よりも大きいのに比べ、建築外装、船舶・構造は、さほど影響を受けていなかったのです。ある程度はそのような傾向にあることは認識していましたが、ここまでとは思いませんでした。

 前年同月比の数値だけですと長期変動を理解するのに不便な点があるので、今度は2007年を100とした場合の指数で表してみました。それが下のグラフです。

   2007年を100とした時の指数の推移

 2007年を100とした場合の指数でみると、2010年以降も回復していない状況がよくわかると思います。前年同月比の時と同じく、一番下の段の右のグラフが全体の推移です

 分野別にみると建築外装と船舶・構造物といったいわゆる汎用分野では、あまり大きな影響がみられません。建築外装は、2011年後半は東日本大震災の復興需要のためか、明らかに売上が上昇しています。また船舶は、発注契約から建造まで2-3年のタイムラグがあり塗景気の動向とはずれがあると言われています。また構造は基本的に公共工事の影響が大きく好不況に左右されにくいと言われています。一方で、工業用途では、自動車、電機・機械・金属、木工ともリーマン-ショックの影響が大きく、かつ落ち込みを回復できていません。国内生産の海外移転の影響が大きいものと思われます。このようにみると、リーマンショックの塗料製造業への影響は、そのほとんどが工業用途であったことがわかりました。

 今回のコロナショックの経済影響が、リーマンショックと場合と同様であるかどうかを明確に予測することはできませんが、それぞれの分野の特質は大きく変化していないと思われるので、今回も同様な様相を示すのではないかと考えています。

 リーマンショック前後について、世界の塗料動向はどうだったのでしょうか?残念ながら、日本の国内のような詳細な統計データは存在しません。唯一手元にあるCoatings World紙の世界のトップメーカーランキングのデータから類推することにします。このCoatings World紙は1998年以降、毎年7月に世界のトップメーカーランキングを発表しています。このランキングはUS$換算しているため、為替の影響を受けますので複数年の傾向を見るにはあまり適していないことに加え、活発化しているM&Aの影響も受けてしまいます。本来であれば、あまり使いたくはないのですが、他に選択肢がありません。

2007年から2011年までのトップ14社のUS$換算の売上金額の推移をグラフに示します。

リーマンショック前後の世界のトップメーカーの売り上げ推移

BIG3(AkzoNobel, PPG, Sherwin Williams)は、同様に2009年に売上金額が落ちこんでいます。気のせいかもしれませんが、建築用主体のSherwin Williamsの落ち込みが小さいように思います。第2集団(Dupont、BASF、RPM、Valsper、Kansai、Nippon)ではBASFとValsper以外は、2009年の落ち込みは明確ではありません。Dupontは途中でAxaltaに買収されたことが影響しているのではないかと思われます。第3集団(Jotun、DAW、Hempel、Asian P、BECKERS)においてもDAW、HEMPEL、BECKERSは2009年に落ち込みを見せています。こうしてみると14社中半分くらいは、2009年に落ちこんでいました。トップ14社の合計では、明らかに2009年は落ち込んでおり、前年比で12.5%のマイナスとなっています。もう少し調べないと分野別ではどうだったのかはわかりませんが、リーマンショックは、世界的な塗料需要に少なからぬ影響があったことは間違いないと言えます。

明日は、バブル期前後の塗料需要変動について調べたことをご紹介します。

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