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かんとこうブログ

2020.06.24

日本および東京の気温は明治初期から現在までにどのように変化したのか その 2

昨日は、日本の年平均気温の偏差と東京の月平均気温の変化について書きました。都市化の影響は想像よりも大きそうだということがわかりました。今日は東京の「東京」以外の観測地点と日本の主要都市について、明治時代からの変化を見てみようと思います。

気象庁のデータベースに記載のある東京の観測地点はまだたくさんありますが、そのうち、島しょ部を除き、さらに気温の記録が掲載されているのは、練馬、府中、江戸川臨海、青梅の4か所です。ただし、記録は1977年以降ですので、昨日紹介した「東京」(大手町)のデータより期間がかなり短いことになります。

この4地点と昨日ご紹介した「東京」を合わせて、年間平均気温の推移を下に示します。

左が年間平均気温の推移、右がその近似直線の傾きでトータルの43年間と2000年から2019年の20年間の傾きをプロットしてあります。東京の各地点で温度がかなり異なることは想定の範囲内でしたが、「東京」が最も高いというのは驚きでした。もっと驚いたのは練馬、府中、「東京」では、この20年間の年平均気温が上昇していないということです。江戸川臨海や青梅では、直近まで都市化が進んでいるので年間気温が上昇し続けているが、都市化の年代が古い順番にこの20年の上昇が抑制されているという仮説が思いつきますが、その適否はともかく、こうした現象は興味深いことです。ただし、東京の場合には、2016年に観測地点が変更したことも影響していることは間違いありませんので、都市化の年代との関係を議論するにはもう少し詳しい検証が必要だと思います。

東京の各地点における年間平均気温の上昇挙動が興味深かったので、今度は全国の主要都市について同じように調べてみました。選んだ都市は、札幌、石巻、新潟、名古屋、広島、福岡、鹿児島です。選定のポイントは、少なくとも100年以上の観測記録が存在することと地域的な観点です。石巻を除き他はすべて政令指定都市になってしまいました。都市化の時期との関係を考察するにはバランスがとれた選定ではなかったかもしれません。

この推移図だけでは年間平均気温上昇の程度がわかりにくいのですが、全体としては、札幌、大阪、福岡あたりが上昇が大きそうに見えます。正確に比較するため、またそれぞれの近似直線の傾きを計算してみました。その結果を下の図に示します。

参考のため、右端に東京のデータを示してあります。赤線で示した43年間(1977-2019)の変化率と緑線で示した20年間(2000-2019)の変化率の関係において、「東京」的な挙動を示した都市は新潟、大阪、広島、福岡、鹿児島でした。これらすべて都市化の時期との関係で説明できるものではなく、観測地点の位置や環境、観測地点変更など他の要因の影響も精査する必要もあるとは思いますが、少なくとも都市化による気温上昇の増大傾向は間違いなく、青線で示した100年以上の期間における傾きは、石巻を除き0.0150.02(℃/年)の間に分布しており、都市部においては「偏差」を用いた場合の気温の上昇幅(0.0124℃/年)よりもさらに大きな気温上昇が起きていることは理解いただけると思います。

ここまで見てきたことを整理しますと以下のようになります。

①都市部においては、「偏差」を用いて算出された気温の上昇よりも大きな気温上昇が起きている。

②東京の古くからの都市部では、この20年間で気温の上昇は鈍化している。こうした上昇の挙動は、それら地点が都市化されていった時期と関係があると思われる。

③東京の月平均気温、月平均最高気温、月平均最低気温の変化についてみると、最も変化の大きいのは、月平均最低気温であり、月別にみると冬季の上昇が最も大きい。

これらは、都市の気象を専門に研究されている方にとっては、当たり前もしくは根拠のない珍説の類かもしれませんが、これを長々と書いてきたのには理由があります。それは、高日射反射率塗料をもっと普及させるための手がかりを探りたいと思っているからです。

このところ、高日射反射率塗料の使用実績は伸び悩んでいます。期待された新しい性能標準についても、拡販の大きな推進力にはなっていません。こうした状況の最大の原因は、建築・建設業界からの本当の意味での賛同を得られていないことにあるのではないかと想像しています。そしてその根源は、冬季に太陽光を反射することで暖房エネルギーが増大してしまい、日本のかなりの地域において通年で計算した場合には、省エネルギーなっていないという点にあるのではないかと考えています。

今回調べてみて、都市部では農村部に比べて、都市化による年間の気温上昇が大きいこと、そして冬の最低気温の上昇が特に著しいことなどがわかりました。気象データは刻々と変化しています。最新の気象データをうまく活用して、少しでも高日射反射率塗料の課題とされる寒冷地でのエネルギー収支の改善ができないものかと思う次第です。また、気温の上昇には都市化が大きく影響しています。都市化に伴う気温の上昇を抑制するには、路面への高日射反射率塗料の塗装は有効なはずであり、この点を国や自治体などに働きかけることはできないものでしょうか?精神論だけで拡販することは難しいと思われます。今回の記事が議論の端緒にでもなれば幸いです。

なお最後に参考までに書き添えますが、今回降水量や湿度についても明治時代からの変化を調べましたが、100年以上の期間をトータルしてもほぼ横ばいで明らかな変化がないことが確認できました。

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