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かんとこうブログ

2020.09.14

法人企業景気予測調査(令和2年 7~9 月期調査)について

9月11日に財務省から、掲題の調査結果が発表されました。新聞等で報道されましたので、ご覧になった方も多かったと思われますが、この調査は、四半期毎に全国の14000社ほどの会社に調査票を送り、11000社を超える会社から得た回答を集計しているもので、経営者が自社および国内の景況をどのように見ているかを示す指標として有用なものと考えられます。今回調査は、8月15日を調査時点として、7-9月(当期)および10-12月(次期)、来年1-3月(次次期)の景況を対前期比での「上昇」、「不変」、「下降」、「不明」の四択で回答したものを集計しています。

報道された主な内容は、「前回の4-6月期では、企業規模を問わず最大級の「下降超」の状態であったのが、今回の調査では、大企業においてわずか0.1%ではあるが「上昇超」となった。」というような内容だったかと思います。しかし、この調査結果には前回の結果をご紹介した6月18日のブログでも書きましたように、この調査では業種別の景況判断が掲載されていますので、時系列データとともにご紹介したいと思います。データはすべて財務省ホームページ「法人企業景気予測調査」から引用してグラフ化しています。

https://www.mof.go.jp/pri/reference/bos/results/data.htm

まず、前回6月11日の調査結果と今回の9月11日の調査結果を対比してご覧ください。


前回調査では、調査対象期間を通じて通常最多を占める「不変」は1/4程度にすぎず、「下降」や「不明」の回答が「不変」を上回る結果になっていました。それに比べれば全期間を通じて、「下降」は減少し、「上昇」が微増、「不変」が増加しています。これらの回答は、あくまで「前期に比べて」の回答ですので、4-6月に比べれば、上向きの傾向を感じている経営者が増えてきたといえそうです。

この調査で発表されるBSI(Business Survey Index)とは、「上昇」の回答%から「下降」の回答%を引いたものです。上の図を例にとれば、今回結果で当期(4-6月)の指数は、「上昇」の14.6から「下降」の40.4を引いた▲25.8が、中小企業製造業の経営者が判断した自社の景況指数となります。前回はこのBSIが▲60.6ですから大幅に改善されています。この数値はあくまで中小企業の全業種の数値であり、BSIは企業規模や業種ごとに大きく異なっています。

この調査結果には、2004年以降のBSIデータが添付されています。リーマンショックの時期も含まれていますので、当時と比較できるのでBSIの推移について調べてみました。驚くことに、大企業と中小企業では、あまりに景況指数が違っていましたので、両者を比較し、さらに「自社に対する景況判断」と「国内に対する景況判断」についても比較してみました。

上段が「自社」に対する景気判断、下段が「国内」に対する景気判断です。さらに左列が大企業、右列が中小企業です。いずれも製造業の数値をグラフ化しています。

左右を比較してもらうと、大企業と中小企業の景況判断の差がわかります。「自社」に対する判断、「国内」に対する判断のいずれの場合も、かなりの差があります。中小企業の場合景況判断がプラスになることはほとんどありませんでした。2004年以降の16年間を見ても大企業と中小企業では景況判断に大きな差があることがわかります。

しかし、それにも拘らず、今回のコロナショックがもたらした景況感の深刻さは、各図の右端部分にある深い谷となって表れており、企業規模にかかわらずリーマンショックと少なくとも同等程度のインパクトを及ぼしていること、さらには、7-9月期は4-6月期に比べBSIが大幅に改善されていることが理解されると思います。

また上段と下段の比較により、「自社の景況判断」と「国内景況判断」の差が確認できますが、両者の回答に大きな差は認められませんでしたので、以降はどちらかを用いて説明することにします。次に業種別のBSIをみてみます。紙面の都合上、塗料と関係が深そうな業種に限定してグラフ化してみました。

この業種別指数は企業規模別で集計されていますが、中小企業の数値をグラフ化しました。上段が製造業、下段が非製造業です。平均的な指数は▲25.8ですので、▲50以上の業種が、コロナショックにより大きな影響を受けていると考えられます。製造業で言えば、鉄鋼業、非鉄金属、金属製品、電気機械などが該当します。4-6月期に最も深刻な影響を受けていた自動車関連は大きく回復しています。また非製造業でも、小売業、宿泊・飲食、娯楽業など影響が深刻だった業種も大きく回復しており、▲50を下回る業種はありませんでした。それでは最後に、前回同様リーマンショック時と時間的なタイミングをあわせてコロナショックの影響を比較してみます。この調査は3か月ごとですので、タイミングをぴったりとあわせることができません。起点をリーマンは2008年9月、コロナは2019年12月としました。大企業および中小企業の製造業の景況指数の推移を比較しました。

リーマンショックの時にはリーマンブラザースの破綻から一挙に悪化したような印象がありましたが、これをみるとリーマンショック以前から、大企業、中小企業とも景況感は悪化していたことがわかります。

両方のグラフとも同じように起点から6か月で、しかもほぼ同じBSIで底をうったかのように見えます。ここまでのBSIの推移は、リーマンショック時と類似していると言ってよいと思います。

しかし、今後の予定については、まだ多くの経営者が、「不明」と答えています。それはとりもなおさず、感染の拡大によっては再び経済活動が停滞する恐れが否定できないからです。この調査は、日本の多くの経営者が、この先の景況感をどう感じているかを表す貴重な調査であり、今後とも注視していきたいと思います。

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