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かんとこうブログ

2020.10.02

日銀短観の続き リーマン時の経済回復までの期間はどのくらいだったか?

昨日日銀短観の内容をご紹介しましたが、書き終わってリーマンショック時のDIのデータを整理していて考えたことがありましたので、今日をそれを紹介します。それはリーマンショック時における経済回復にはどのくらいの期間が必要だったのかということです。コロナ禍における経済回復に要する期間を推定する参考にならないかと考えたからです。

まずDIを使ってリーマンショックの時の回復にはどのくらいの期間がかかったのかを調べてみました。上の図は、リーマンショック時のDIの推移をリーマンブラザース破綻の2008年9月を起点としてその前6か月、その後36か月の中小企業のDIの推移を表しています。リーマンブラザースが破綻した2008年9月には経済はすでに下降傾向にあり、さらにリーマンショックが追い打ちをかけた格好ですが、とりあえずそうした事情は置いておいて、単純に2008年9月時点のDIを基準にし、その数値に戻るまでに要した期間を確認することにしました。

ざっと見て青線の全産業の2008年9月時点のDIは-20弱でした。そしてこの値まで戻るには21-24か月かかっています。製造業と非製造業のDI推移を比較すると製造業の方が落ち込みが深く、しかしそのあとの回復も大きめになっています。「DIが2009年9月時点の値に戻るのに要するのか」については、ほぼ同じで21-24か月ほどかかっていました。

次に日銀短観の業種別DIがどのくらいで回復していたのかを見てみました。参考までに、今回のコロナ禍でのDI推移も併記しています。回復期間の確認は上と同じ方法です。

2008年9月時点のDIの値に戻るまでの期間は、グラフから読み取ると以下のようになりました。中小企業全体21か月、鉄鋼36か月以上戻らず(30か月後はほぼ戻った)、電気機械21か月、自動車21か月、造船・重機36か月戻らず、建設業15か月でした。鉄鋼や造船重機のように36か月でも戻っていない業種もありましたが、全体としてはやはり21か月程度であったようです。併記したコロナ禍時のDI推移は、ほぼリーマン時に追随しているようにも見えます。もし仮に同様に推移するとすれば、やはり2年近くかかるという予測になります。

ここまでが日銀短観から推測できることです。今度はもっと直接的な塗料需要の過去データから推測してみたいと思います。日本塗料工業会の業況観測アンケートの業種別前年同月比の数値から推測してみました。上と同様に2008年9月の前年同期比の数値に戻るまでの期間を調べてみると以下のようになりました。全体14-16か月、船舶・構造物22か月、自動車14か月、電機・機械・金属14か月、木工14か月でした。

これは、日銀短観のDIの回復期間に比べるとかなり短い数値になります。前年同月比というのは、あくまで前年同月との比較ですので、前年同月の数値が低ければおのずと高い数値になるという問題があります。例えば2010年1月は、自動車や電機・機械・金属分野で高い前年同月比を示していますが、これはその前年の2009年1月の需要が大きく落ち込んでいたためです。この時点では、以前の需要には戻っていなかったにも拘らず、こうした現象が起きてしまいます。前年同期比を長期的推移の指標とするには注意しなければならない点です。

そこで同じデータについて、今度は2007年の同じ月を基準とした同月比で推移を表してみました。結果は先ほどと様変わりしました。好況だった2007年同月比では、多くの分野で36か月以上元の値まで回復していないのです。実際のところ、リーマンショック時には現地生産・国内空洞化がより進み、産業構造の変化が起こり塗料の需要が減少したという要素もあり、なかなか簡単に経済回復に要した期間を推定することはできません。それでも自動車、電機・機械・金属、木工の推移をみますと、ある程度の水準までに回復するにはやはり1年半から2年程度はかかるように思われます。

リーマンショック時において経済回復にどの程度の期間を要したかについて調べてみましたが、日銀短観のDI値からは21-24か月程度、日塗工の業況観測アンケートからは、朧げながら1年半から2年という数字が出てきました。もちろん、この数字がそのままコロナ禍にもあてはまるなどというつもりはありませんが、一つの参考指標にはなると思っています。コロナ禍においては、感染の終息が、経済完全回復のための条件となるのでしょうが、いまだ終息の目途は立ちません。今後もこうした経済指標の推移を追い続けますが、経済回復が2年かそれ以上の長期戦になるということは確実であるように思われます。

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