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かんとこうブログ

2020.11.18

リーマンショック前後の決算状況をレビューしてみました

一昨日、上場塗料会社の20213月期第2四半期決算状況をご紹介しましたが、少し気になって、リーマンショック前後の決算状況を調べてみました。各社ホームページではそこまで遡れるほどには資料を提供してもらえなかったので「株主プロ」というサイトの資料を使って再現してみました。残念なことにロックペイントのデータが不完全で、一部分しか掲載されていなかったため、今回のご紹介からは割愛させていただきました。申し訳ありません。

結果についてはご覧いただくのが一番なのですが、一言で言えば、今回のコロナも厳しい状況ですが、リーマンショックの時も同じように厳しい状況だったことがわかりました。それでは、2007年から2010年までの4年間について、各社の四半期ごとの売上、営業利益、純利益の推移を売上高の多い順に3社ずつご紹介していきます。各社のグラフ上が売上高、下が営業利益と純利益です。

日本ペイントは当時まだNIPSEAとの合弁企業が連結対象ではなく、現在の規模とは比較にはなりませんが、リーマン後の20091-3月期には営業利益が損失になっていました。関西ペイントも同様に20091-3月期は営業利益がほとんどなくなってしまう状態でした。これに比べると中国塗料の影響は軽微であり、売上こそ減少が見られますが、営業利益では影響がほとんど見られませんでした。

(下の図)エスケー化研もほとんどリーマンショックの影響を見ることができません。営業利益もこの期間でも右肩上がりに見えます。一方で大日本塗料と藤倉化成は、影響が深刻であり、大日本塗料はリーマン後の4四半期、藤倉化成は20091-3月期に営業利益が損失になっていました。

日本特殊塗料もリーマン後の3四半期営業利益が損失となりました。神東塗料は少し推移の波形が異なりますが、やはり2四半期、金額はわずかですが営業利益が損失となっています。アサヒペンは少し他の会社と様相が異なっています。売上だけみれば、特に影響を受けているようには見えませんが、2007年の第4四半期の営業利益が損失になっています。おそらく他の要因によるものと考えられます。

(下の図)アトミクスもアサヒペンと同様な推移を示しています。とても興味深いのが、毎年第4四半期に売上が増加していることで、期末における道路工事の増加が理由ではないかと推測しています。それはさておき、売上には影響が認められませんし、営業利益についてもリーマン前に損失の時期がありますが、リーマンショック要因ではないと思われます。イサム塗料も売上げにリーマンショックの影響は認められません。一方で川上塗料は、売上に深刻な影響が認められ、長期間にわたり営業利益が損失となっていました。この川上塗料は12月から翌年11月が決算期ですので、他の会社とは異なっていますのでグラフを見るときには注意をお願いします。

ロックペイントを除き上場各社のリーマンショック前後の決算をざっと見てきました。前年同期比の数字も拾えればよかったのですが、前年同期比は決算短信を一報ずつ見ていかないと拾えないようので、これだけのデータを得るのに四半期決算を192回開けなければならず、その手間を惜しんでしまいました。定性データしか提供できませんが、リーマンショック後1年間の各社の売上高と営業利益について大まかにまとめると以下の表のようになるかと思います。

あくまで結果だけを整理するとこのようになりますが、各社のコメントのところで触れたように、営業利益が損失となった会社のうち、アサヒペンとアトミクスについては、リーマンショック以外の要因が存在しているのではないかと思いますので位置取りを配慮しています。この表をひとまずおいて、一昨日掲載した今回の一覧表を見てみましょう。

今回のコロナ禍の影響がこれまでのところ、リーマンショックのあとの状況に似ているかどうかという観点で比較すると似ているところと似ていないところがあります。

似ているところは、①減収減益となった会社が多く、営業利益段階で損失となった会社も相当数あること ②工業用塗料主体の会社の方が、汎用塗料主体の会社に比べて影響を受けた度合いが大きいこと などです。

似ていないところは、③今回は巣籠り需要で家庭用塗料の売り上げが伸長していること ④コロナ禍では、建築用塗料もある程度影響を受けていること ⑤企業環境の変化によって大きく位置取りが変化した会社があること(例:日本ペイント)などです。

昔の数字を引っ張り出してきたのは、リーマンショックの時の決算状況と比較することでコロナ禍の深刻度が測れるのではないかと考えたのが理由です。全般的には、リーマンショックとコロナ禍の影響は似ているところが多いと言えると思いますが、やはり最大の不安要因は今後の感染拡大です。長期にわたる感染拡大による経済への影響は、これこそまちがいなく、リーマンショックにはなかったことではないかと思います。これ以上の感染拡大を防止することが経済回復のためにも最優先であると思わざるを得ません。

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