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かんとこうブログ

2020.12.08

Go To トラベルは本当に「感染が少ない」のか?

12月5日の朝のテレビ番組に国交大臣が出演し、キャスターの質問に対してGo To トラベルと感染症の関係について、次のように説明していました。

「これまで延べで約5000万人の人が利用したが、感染した人は244人しかいなかった。」こう聞くといかにも感染者が少なそうに聞こえますが、この説明は科学的見地からは、正しい説明とは言えないのです。


この説明を聞いた人は、日本の人口の約半数の人が利用してもたった200人あまりしか感染しなかったと感じてしまうかもしれませんが、それは違います。なぜなら、この「約5000万人」というのは不正確で、正しくは「約5000万人・日」と言わなければならないからです。延べ5000万人というのは、利用者がすべて1日しか利用しなければ利用者は5000万人ですが、すべて2日利用すれば2500万人というようにあくまで、人数を日数を掛け合わせて合計した数字なのです。

従って、比べるべき相手は、日本の人口ではなく日本の人口に日数をかけたものでなければなりません。以下に正しい比較のための計算をしてみます。


Go To トラベル中の感染確率は、とても簡単に計算できて 4.88*10^-6(単位/日)となります。つまり1日100万人あたり4.88人ということです。

一方でこの期間内の国民全体の感染確率は次のようにして計算できます。Go To トラベルの利用が始まったのは7月22日でした。12月5日のテレビ番組までの日数は137日です。日本の人口は今年の11月現在1億2577万人です。Go Toと同様に延べ人数(国民全体の人口*日数)を計算するとすると、これらの数字を掛け合わせて172億3049万人・日となります。 

この間の感染者は、12月5日時点の全国の累計感染者数160,917人から7月22日の時点の25,629人を差し引いて135,288人となります。ただしこの中には感染経路不明者が約6割いますのでそれを除かないと公平な比較にはなりませんので、これを差し引くと推定経路判明感染者は54,115人となります。

この感染者数と人口・日数から感染確率を計算すると感染確率は3.14*10^-6となります。つまり1日100万人あたり3.14人となります。

つまりほとんど同じレベルです。Go To トラベル利用者の感染率が特に高いということもありませんが、有意に低いということでもないのです。上の計算で感染経路不明者を除くことに議論があるでしょうが、感染者数そのもので計算しても1日100万人あたり7.85人とさほど変わりません。一方で、これまでの政府の説明ではいかにも感染率が低いような誤解を招く恐れがあったのではないかということはお判りいただけたと思います。

今日の朝のニュースで、東大の研究グループが、Go Toトラベル利用者とそうでない人の感染症状の頻度を調べたところ、Go To利用者の方が2倍ほど高かったというデータを発表していました。

さらに言えば、北海道と沖縄の感染について、Go Toが関わっていないと説明するのは難しいのではないでしょうか?都道府県別に見た現在までの人口100万人あたりの累積感染者数は東京(3161人)沖縄(3158人)がほぼ同じで全国トップ、3番目が大阪(2581人)で、4番目が北海道(1936人)です。一方で2019年の都道府県別宿泊者数では、1位から順に東京、大阪、北海道、沖縄です。北海道や沖縄は京都よりも宿泊者が多いのです。これを見ただけでも北海道、沖縄の感染とGO To、いや旅行者の関係が疑われます。

また、さらに深刻なGo Toキャンペーンの影響は国民の心理面への影響です。国がやっているのであれば大丈夫だろうと安易な考えを醸成し、感染拡大防止への行動変容を妨げている可能性さえあるのではと考えています。

最初の話「Go To トラベルは本当に感染が少ないのか?」に戻りますが、今はどうやって感染拡大を食い止めるかを議論すべき時です。ミスリードをするような説明はもうやめてほしいと思います。

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