かんとこうブログ
2021.02.08
オゾン水手洗い装置
先日テレビで、医療従事者の間で広く使用されつつあるオゾン水手洗い装置が取り上げられ、その販売元である日機装株式会社が紹介されていました。オゾンによる殺菌というのは水道水の浄水にも用いられており、かつて私が勤めていた会社で、将来有望な市場としてオゾン水関連施設用塗料というのが研究テーマとして取り上げられたように記憶しています。なぜ今オゾン水の手洗い浄装置なのか調べてみました。
まず日機装のホームページにアクセスしてみましたが、あまり情報がありませんでした。この会社は製品・サービス分野としてポンプシステム、産業用機器、航空宇宙、メディカル、深紫外線LEDを挙げており、最後の深紫外線LEDが今回のオゾン水殺菌装置と関係しているようです。
https://www.nikkiso.co.jp/products/medical/handlex.html
以下、日機装のホームページから引用します。(「 」は引用です。)「深紫外線LEDは、従来のLED光源では得られない波長の短い光を作り出すことで、殺菌や空気浄化などの効果が得られます。従来、そうした用途には水銀ランプが用いられてきましたが、水銀ランプは消費電力も大きく、人体や環境にも有害なことが問題となっています。それに対し、深紫外線LEDは、消費電力が少なく、長寿命、人体への影響もないといった特長があります。日機装の開発スタッフは、この技術の製品化に挑戦しました。」
少しややこしいのですが、日機装が販売している「ハンドレックス」というオゾン水手洗い装置は、この深紫外線LEDから発生する短波長UVによる殺菌ではありません。ホームページによれば、「ハンドレックスは水道水を電極で直接電気分解し、オゾン水を生成する手洗い装置です。」となっており、殺菌の主役は、あくまで水の電気分解によって生成したオゾンなのです。では深紫外線LEDは何に利用されているのでしょうか?答えは・・・「オゾン水は非常に不安定であり濃度のモニタリングも難しいのですが、日機装の深紫外線LEDで濃度を分析することにより、安定した濃度のオゾン水の供給が可能となりました。」ということのようです。要はオゾン水は不安定で濃度の測定も難しく、それゆえ実際に殺菌手洗いに利用するのは難しかったが、深紫外線LEDを使って正確に分析できるようになったので、オゾン濃度のコントロールができるようになり、手洗い装置が実用化された、ということです。
読者の中には、そもそもオゾンとは一体どんなものでその殺菌作用があるのはどうして?と思われている方もいらっしゃると思います。日機装のサイトにはそうした説明が見当たりませんでしたが、この装置の製造元である日科ミクロン株式会社のサイトに詳しい説明がありましたので、それを紹介させてもらいます。
とてもわかりやすい説明なので、補足しませんが、この殺菌作用の作用原理としては、①細胞壁や細胞膜の破壊・分解により、細胞内の成分が漏出する溶菌を起こす ②細胞内の酵素や核酸の失活 ③細胞透過率に変化を生じさせることにより、細胞を分解 ④脂質やタンパク質の酸化による変性 を挙げています。
さらに、特徴としては、①細菌・ウイルス等の微生物への高い除菌効果と即効性 ②幅広い殺菌スペクトルを持っている ③薬剤を使用しないため、皮膚への刺激性が少ない ④耐性菌ができにくい ⑤酸化作用後は水と酸素に戻るため、残留性がなく環境に優しい と良いところだらけの優れものです。
https://www.nikkamicron-kansenboushi.com/ozonewater/
新型コロナウイルスに対する不活性化効果も宮崎大学との共同研究で確認され、論文も発表されています。加えて、実際にこの装置で手洗いをした医療従事者のモニタリングでも、アルコール製剤を用いた洗浄と同等の殺菌作用が確認され、手にやさしいと評価されました。
どうして殺菌はできるのに、人間の皮膚には無害なのか?と疑問を持たれる方もいらっしゃるかと思います。答えは先日のUV-Cの殺菌と同じです。つまり、ウイルスや殺菌の細胞壁は、人間の細胞壁に比べると極めて薄いため、オゾン水によって簡単に破壊されてしまうためです。人間の細胞壁は、こうした殺菌に用いられている濃度では、破壊されることがありません。
この装置はコンパクトなタンク式で配管も不要なため、頻繁に手洗いを行う人たちにとっても簡単に導入できメリットが大きい装置となっているようです。