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かんとこうブログ

2021.04.07

変異ウイルスとは何がどう変化しているのか?

昨日、一昨日と令和3年度新入社員研修が行われ、そちらの方にずっと出ておりましたのでブログ更新ができませんでした。昨日覗いていただいた方には、新しい情報がなかったので申し訳ありませんでした。

いよいと第4波が現実化してきています。この第4波については、いわゆる「変異ウイルス」の影響が明らかなようです。今日はこの変異ウイルスで起きている変異とはどのようなものなのかをご紹介したいと思います。ネットで調べるとNHK42日の記事が良くまとまっていましたので、今日ご紹介する内容はこのNHKのサイトからの引用が多くを占めています。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210402/k10012953591000.html
まずは変異種の種類と地域、それぞれの特徴の紹介です。

ニュース等で関西ではイギリス型が多くなっている、関東では海外とは別な変異種が増えてきていると報道されています。また変異種にはイギリス型、南アフリカ型、ブラジル型ばどがあることもよく報じられており、皆さんも記憶にあると思います。変異種の種類とその名称を右の一覧表に示してありますが、スパイクタンパクで起きた変異が重要なので、スパイクタンパクで起きた重要な変異をその変異種の名称にしています。ウイルスの変異はスパイクタンパクだけで起きるのではありませんが、スパイクタンパクの変異が特に感染防止上重要なため、スパイクタンパクのうち、人間の細胞の受容体と接する部分の変異を使って、その変異ウイルの名称としているようです。

上表から明らかなように、主な変異種は二つでE484KN501Yです。この名前の意味するところは意外にシンプルです。

アミノ酸の構造は右のサイトから引用しました。https://clinical-engineers.com/amino-acid-structural-formula/

数字は変異の起きた場所を示しており、E484Kであればスパイクタンパクの484番目のアミノ酸が入れ替わりましたということを示しています。タンパク質はすべてアミノ酸で構成されています。アミノ酸は文字通りその構造の中に、アミノ基(NH2)とカルボキシル(カルボン酸:COOH)基をそれぞれ1個以上有するもので、タンパク質は、アミノ酸のアミノ基とカルボキシル基がアミド結合と呼ばれる結合形式でいくつもつながった構造になっています。

E484Kの場合には、スパイクタンパクの484番目のアミノ酸がグルタミン酸からリシンに変化したことを示しており、イギリス型のN501Y501番目のアミノ酸がアスパラギンからチロシンに変化したことを意味しています。

それぞれのアミノ酸の構造をあわせて示しておりますが、E484Kではアミノ酸の置換によりカルボキシル基を余分に持ったアミノ酸からアミノ基を余分にもったアミノ酸に変化しており、N501Yでは、アミド基をもったアミノ酸からフェノール性OHを持ったアミノ酸に変化しています。と、これが判ってもすぐにどのような影響がでるのかわからないのが、高分子なのです。

というのは、アミノ酸を何百も持っているタンパク質は、実際には複雑に折り重なった立体構造(高次構造)をとっており、高次構造の中で、アミノ基やカルボキシル基などが絶妙な位置に配置された活性中心を形成して、さまざまな生化学的機能を行っているケースがとても多いからです。おそらく、今回の変異で起きたアミノ酸の置換によって、高次構造も変化し、そのために懸念されている感染力が強いという性質を獲得したのではないかと想像されます。

今回のスパイクタンパクに起きた変異を、感染という観点からもう少し詳しく見てみます。こんどはYahooニュースのサイトから引用します。

https://news.yahoo.co.jp/byline/minesotaro/20201224-00213969/

先ほど変異はスパイクタンパクの484番目や501番目で起きていると書きましたが、この起きている場所が実は問題だと思われます。上の図はコロナウイルスの生体細胞への侵入過程を示したものです。よく知られているように、コロナウイルス外側に突き出たスパイクタンパクが、ACE2と呼ばれる受容体に結合し、この受容体に先導されるようにして細胞の中に取り込まれていきます。

スパイクタンパクと受容体であるACE2ががっちりと結合するかどうかが感染力の目安と考えられており、さらに重要なことは、ワクチンによって形成される抗体は、このスパイクタンパクと受容体の結合をブロックすることで感染を防止するように作られていることです。

E484KN501Yで起きたアミノ酸の置換は、まさにスパイクの先端にあるRBDと呼ばれる受容体との結合部分で起きているため、結合力すなわち感染力に直接の影響を及ぼし、さらにはワクチンの効果にも影響を与えるのではないかと心配されています。

ところでこの受容体であるACE2と一体どんなものなのでしょうか?有害性のあるコロナウイルスを自ら進んで迎えに行って引き入れてしまう、まさに潜入スパイのような働きをしているのです。こんなものがなぜ生体細胞に存在しているのか不思議です。そこでこのACE2についても調べてみました。

ACE2の前にACEを説明する必要があります。ACEとは(angiotensin-converting enzyme:アンジオテンシン変換酵素)という酵素です。その働きは、直接、間接の作用により血圧を上昇させるための物質アンジオテオシンを作ることにあります。そしてACE2は、そのアンジオテオシンをさらに違う物質へ変換することで血圧の上昇を緩和することにあります。というわけで、ACE2とは、本来の働きだけみればコロナウイルスとは何の関係もない血圧の制御のために存在する物質のようです。たまたまコロナウイルスのスパイクタンパクが、ACE2とぴったりとくっついてしまうものだったということなのではないでしょうか?

https://www.cyagen.jp/community/newsletters/issue-20200323.html
新型コロナウイルスで話題となった『ACE2』について | 福郎先生の無料講義 (fukurouschool.com)
ウイルスの変異はスパイクタンパクにとどまらず、ウイルス全体で起きています。ワクチンの効能への影響が最も心配されることではありますが、それ以外の影響についてもウオッチしていきたいと思います。

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