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かんとこうブログ

2021.07.13

速乾タイプの食器用洗剤について

今日はコロナも日常業務のことも忘れて純粋に科学的に考えてください。最近テレビのコマーシャルでよく見る速乾タイプの洗剤について書きます。この洗剤はライオンのチャーミー・マジかと言います。速乾タイプなので布巾で拭き取らなくてもすぐに乾いてくれるというキャッチフレーズを聞き、一体どんなメカニズムで速乾性を得ているのか知りたいと思って調べてみました。ひょっとしたら塗料の水切れ性などに応用できるかもしれないとも考えました。

結論から先に言うと、本当のところはよくわかりません。おそらくこの物質が関与してしているであろうとはわかりましたが、メカニズムまで完全に解き明かせていません。もしお分かりの方がおられましたらメールで教えてください。それでは調べたことをご紹介します。

ライオンのホームページで調べましたが、効能についてはいろいろ説明がありました。

上の説明はライオンのサイトの引用ですが、要は速乾というのは、水切れがよいということのようです。

この水切れの良さについては、ほとんど情報がありませんでした。わずかに、植物繊維由来成分としかありませんでした。植物繊維由来成分と言えば、セルロースが思い浮かびますが、セルロースと速乾・・・結びつきません。

そこでライオンの特許に検索をかけて調べてみましたが、業務用食洗器のすすぎ剤についての速乾性向上という特許はありましたが、家庭用の食器用洗剤での特許は全くもって見当たりませんでした。そこでもしやと思い、成分表を調べてみました。下の表は、3種類あるチャーミー・マジカの組成表です。

3種類あるチャーミー・マジカの中で速乾を謳っているのは1種類だけでした。組成表を横に並べてみると、なんとそれらしいものが見つかりました。表面改質剤のカチオン化セルロース・・確かに植物繊維由来に間違いありません。しかし、もう少し具体的な組成が知りたくなりましたので、カチオン化セルロースで調べてみるとすぐにそれらしいものが見つかりました。しかし、このあたりからは確証がありません。想像の世界になりますのでそのつもりでお読みください。

すぐに引っかかった物質は下のような物資でした。

この物質は非常に一般的なもので、いろいろなところから販売されており、ライオンはもちろん、競争相手の花王からも販売されています。用途はたくさんあるのでしょうが、目についたのは髪の毛のコンディショナー用途です。

このカチオン化セルロースの毛髪コンディショナー用途への説明については、良い文献がありました。(油化学 第44巻第4号(1995)P.45 「毛髪用コンディショナー剤用ポリマー」別府耕次、小宮薫 旭電化工業株式会社) この中でカチオン化セルロースの効用については以下のように書かれています。

「毛髪をしっとりとなめらかにし、まとめやすくするコンディショニング効果、くしの通りがよくなり、ブラッシングによる毛髪表層の損傷を防止する毛髪表面の保護効果、ブラッシングによる静電気の発生を減少させる帯電を防止する帯電防止効果のほかに、シャンプーの泡立ちを良くする効果等がある。

ん? 速乾に関しては一言も書いてありません。この物質はカチオン化されていますので、毛髪表面のマイナスイオンと強固に結合するという説明もわかりますが、速乾とはどんな関係があるのでしょうか?

検索を続けるうちに良い情報がみつかりました。なんと競争相手の花王が出願した特許(出願番号 特開 2007-45991)です。用途は家の水まわりや食器の水切れ性付与ですので当てはまります。比較材料(既存材料)としてはアミンオキシド基含有ポリマー、水溶性オキサゾリンポリマー、ポリ(ジメチルアクリルアミド)など親水性ポリマーが挙げられていました。要は、水切れ性を良くするには表面を親水化すればよいということです。これは実はカチオン化セルロースと聞いた時から予想していました。

このカチオン性セルロースのメリットの一つが、アニオン系界面活性剤の洗浄作用を妨げないという性質が挙げられており、ガラス表面への付着を高めるためには、窒素含有量を高めるとよいが多すぎると界面活性剤と塩を形成し沈殿するので,好適な範囲が存在すると書かれていました。カチオン化セルロースの好適範囲とは、分子量250万以上、窒素含有量0.1%~2%、洗剤中の含有量0.01-0.03%とされている。

と調べられたのはここまでです。わかった重要な点を整理すると以下のようになります。

チャーミーマジカの速乾性を付与しているのはカチオン化セルロースであると思われる
硬質物質の水切れ性を改良するには、表面に親水性を付与すればよい
カチオン化セルロースは、毛髪のコンディショニング成分として広く使用されている

以上はあくまで、状況証拠であり推測の域をでません。しかし、もし当たっているとすれば、疑問は尽きません。表面に吸着した(であろう)カチオン化セルロースに安全性の問題はないのか? (比較的安全だとは思いますが、食器に使うとなると気になります) カチオン化セルロースの水切り性付与は古くから知られているらしいが、なぜ最近ライオンは製品化して大々的にコマーシャルを行っているのか? なぜ花王は特許まで出していながら製品化しなかったのか?(あるは単に私が知らないだけかもしれませんが・・)などなど・・

水切れ性を付与するというのは、塗料にとっても好ましいのではないかと思います。ただし塗料の場合に水切れ性が要求される期間を考えると生半可なものでは耐久性が足りないのかもしれませんが・・ それはそれとして、これを読んだ方になにがしかのインスピレーションを与えられたら幸いです。

 

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